スピッツ、BUMP OF CHICKEN、椎名林檎.....なぜアーティストは”生き物”に歌を託すのか? 猫ソングが人気の理由も分析
とりわけ、よく楽曲のモチーフになる生き物と言えば猫だ。スピッツも「猫になりたい」「猫ちぐら」と歌っているし、たとえば椎名林檎は、東京事変「黒猫道」「猫の手は借りて」、石川さゆりへ楽曲提供をし、のちにセルフカバーした「名うての泥棒猫」など、数多くの楽曲で猫のしなやかな姿やさらりと世を渡り歩く堂々とした佇まいを描いてきた。5月24日にリリースした最新曲も「私は猫の目」というタイトルであり、歌詞には鋭く世界を睨むような目線が光る。歌には知性や勇敢さが漲り、猫の姿を借りたエンパワーメントとも呼ぶべき力強い楽曲だ。椎名林檎が猫を楽曲に登場させる時、そこには彼女の理想が投影されているように思えるのだ。
BUMP OF CHICKENは、初期の楽曲「ガラスのブルース」や「K」で猫を登場させてきた。これらの曲で描かれる猫たちは、運命に逆らう物語のなかで自分の命を決死の覚悟で生き、存在証明を歌にしてきたBUMP OF CHICKENの楽曲の根源にあるものだと思う。藤原基央(Vo/Gt)は愛猫家でもあり、身近な場所から物語を紡ぎ出す彼にとって猫をモチーフにした楽曲は、日常風景の延長にあるのかもしれない。
近年、最も有名になった猫ソングと言えば、あいみょんがDISH//に提供した「猫」だろう。もう会えなくなった相手を思い焦がれるバラードであり、サビで歌い上げられる〈猫になったんだよな君は〉という諦めに似た思いには、愛おしさが強く募っていく。身近な存在でありつつ、自由で掴みどころのない佇まいそのものが、あらゆるアーティストが猫に歌を託してきたひとつの理由なのだろう。
“生き物”は時に、人よりも雄弁にその感情を伝える。言語を持たないからこそ、その表情、その咆哮、その佇まいすべてで、こちらに何かを伝えてくる。アーティストにとって音楽を届けるうえで“生き物”だからこそ託せる物語やメッセージがあるのだろう。その役割が多彩だからこそ、これからもアーティストは“生き物”を愛し、歌にし続けるはずだ。
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