ao、深みのある歌唱で築く“普遍的な居場所” RADWIMPS新曲へのフィーチャリング、サマソニ出演……2023年は飛躍の年に
先月リリースされたRADWIMPSの新曲「KANASHIBARI feat.ao」を聴いて、「この女性のシンガーは誰だろう」と驚いた人は多かったはず。もしかしたら、そのアーティスト名を、昨年1月にSpotifyが発表した「RADAR: Early Noise 2022」(Spotifyが選出した2022年に活躍を期待する次世代アーティスト)のラインナップで見た覚えのある人もいるかもしれない。彼女の正体は、現在17歳のシンガーソングライター ao。この記事では、近年、確実に活躍のフィールドを広げながら、次々と新たな支持を獲得しつつあるaoの音楽活動について紹介していく。
まずはじめに、彼女のプロフィールについて。aoは2021年9月、当時15歳、中学3年生のタイミングで「Tag」でメジャーデビューを果たしており、2022年3月には、小学6年生からの4年間で制作した楽曲を収録した1st EP『LOOK』を発表した。多くの人は、そのメジャーデビューの早さに驚いたかもしれないが、2016年、当時12歳でデビューを果たした同い年のグレース・ヴァンダーウォールの活動を追い続けてきたというao本人にとっては、その早さはそこまで特別なものではないのかもしれない。いずれにせよ、学業と並行しながら、楽曲制作をはじめとした音楽活動を積極的に展開し続けてきた彼女のバイタリティには驚かされる。
次に、aoの音楽性について。メジャーデビュー曲「Tag」を聴いてまっ先に驚かされたのは、深淵な響きを帯びたトラックのダークなムードと、軽やかに英語詞を歌いこなす彼女のしなやかな歌唱スキルであった。日本語詞と英語詞の差を意識させないような流麗な歌い方は、上述したトラックのムードとも相まって、当時15歳とは思えないほどの奥深い魅力を放っている。
また、ティーンエイジャーが胸の内に秘めるリアルな心境をトレースした歌詞も素晴らしい。「Tag」では、〈自分らしくいたいの邪魔をしないで/負けはしないよ I win this time, this time〉という切実な一節が耳を惹きつける。また、高校生になり初めて制作したという「リップル」では、晴れやかなメロディに乗せて〈もう自分を信じてみたいんだよ〉という希望に満ちたポジティブなフィーリングを共有する。
特筆すべきは、1st EP『LOOK』の中でも特に大きな反響を得た「you too」だ。彼女は同曲について、辛い気持ちを抱えながらも笑顔で頑張る友達の姿を見て、「みんな頑張っているから自分も頑張ろうと思って書いた曲」(※1)であると明かしている。そうした不安や希望が入り混じる10代特有の心情について、aoは〈分からないものだけ集めて答え合わせして/不規則に揺れる目的地だけ見つめていよう〉といった言葉で輪郭を与えてみせた。一聴して、メロディーメーカー、トラックメイカーとしての才能に惹きつけられるが、こうした繊細にしてアンビバレントな感情を、平易な言葉で的確に表す作詞家としての才能もすでに大きく花開いていると言えるだろう。英語詞のナチュラルな響きに耳を奪われた人も多いかもしれないが、彼女が大切にしている日本語特有の美しい語感にも、ぜひ改めて耳を澄ませてみてほしい。