Aimer、「あてもなく」で目指したシンプルな言葉が心に響く歌 『王様ランキング』とも重なるイメージ

Aimer、「あてもなく」で目指した歌

 Aimerが22枚目のシングル『あてもなく』をリリースした。表題曲はアニメ『王様ランキング 勇気の宝箱』エンディング・テーマで、〈笑っていて〉と繰り返す歌詞が印象的なナンバー。また、カップリングには、〈憂鬱は逆手に 番狂わせて〉など力強い歌詞表現と歌唱が耳を打つ「空噪wired」、タイトル通り生活/人生の何気ない幸せを歌う「Life is a song」が収録されている。低音のボーカルでクールな一面を覗かせる「空噪wired」、優しく温かい「Life is a song」と対照的とも言えるカップリングも含め、Aimerの様々な表現が楽しめる一枚だ。今回の取材では2022年の活動や、『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』とのタイアップを通じて得たものも振り返りながら、「あてもなく」で描いたことをじっくりと語ってもらった。(編集部)

Aimer

ライブの大切さを再確認した2022年、「残響散歌」の広がりを実感した瞬間

――まず、近年の活動やAimerさん自身の思考について聞かせてください。2021年の6thアルバム『Walpurgis』、2022年に行われたアリーナツアー『Aimer 10th Anniversary Final "Cycle de 10 ans"』など、最近は“円”のモチーフや、物事が巡っているようなイメージを掲げる機会が増えてきていますね。

Aimer:言われてみればそうですね。確かに『Walpurgis』というアルバムは四季を巡るようなイメージで作ったアルバムですし、『Cycle de 10 ans』というアリーナツアーも、これまでの10年、これからの10年、さらにその先の10年というサイクルが見えるようなツアーにしたいと思って、このタイトルをつけたので。2020年の春ごろから情勢としてライブがなかなかできなくなって、ちょっと立ち止まらなくちゃいけなくなったことが影響しているのかもしれません。

――というと?

Aimer:このご時世をどう捉えるかはもちろん人それぞれだし、私自身も、時間ができて自宅の制作環境を整えられるようになったりと、プラスの出来事もあったんです。だけど音楽をやっている身としては、他のミュージシャンの方と同じように、ライブの開催が難しくなったことで無力感を感じ、もどかしい気持ちになっていました。

――Aimerさんはライブに重きを置いて活動してきたので、なおさらですよね。

Aimer:はい。そうしてもどかしさを感じていた時に、『Walpurgis』の大元にある、闇と光は循環していくというケルトの思想に感化されたところもあったんです。光と闇は対立していて、遠いところにあるものだけど、相容れないわけではなくて、ずっと巡っている。だから、今は暗い夜の中にいたとしても、季節が巡ってくるように、また光が射してくる。今自分はどんな状況にあって、人生はどのように巡っていくのだろうと大きな規模で捉えられるようになったのかと思います。

――なるほど。

Aimer:あと、メジャーデビューから10年以上経ったということも大きいと思います。10周年を迎えるまでは目の前のことに一生懸命で、正直先を見る余裕もなかったんです。だから“今ここ”だけに全力投球していこうという考え方だったんですけど、今は自分の活動を俯瞰できるようになってきているので。今考えると、10周年を前に、予期せぬ出来事が起きて立ち止まらざるを得なくなったことはすごく大きかったですね。『Walpurgis』というアルバムを作れて、ライブは中止や延期になってしまったけど、その後再開してからの全国ツアー、アリーナツアーでは、「やっぱりライブって自分にとって大切なんだな」という気持ちが湧き上がる中で一つひとつのステージを迎えられました。

――10周年の全国ツアー、アリーナツアーがあったのは2022年ですが、シングル『残響散歌 / 朝が来る』のリリースが2022年1月だったと考えると、2022年はAimerさんにとってあっという間の1年だったんじゃないかと思います。改めて、どんな1年でしたか?

Aimer:いろいろなものがすごいスピードで動いていた1年でした。年が明けてすぐに『残響散歌 / 朝が来る』をリリースして、そのあとはずっと中止や延期になっていたライブを久しぶりに再開できたんですよ。リリースして、ツアーが始まって、ツアーを回りながら制作して、リリースしたらまた次のツアーが始まって……と、いろいろな場所でずっと歌っているような状況で。デビューしてもう10年以上経ちますが、こんなに濃密な1年は初めてだったんじゃないかと思います。いろいろなことが一挙に動いていったので、いつも以上に精一杯でしたね。同時に、「残響散歌」という楽曲が目まぐるしいスピードでいろいろなところで響いていって。世代を問わず楽曲が届いていることを実感しながら、自分も忙しくしているという感じでした。

――例えばどんな時に曲が広まっていることを実感しましたか?

Aimer:ミュージックビデオやストリーミングでの再生数や「こういうランキングに載りました」という報せをスタッフさんから受ける度に、たくさんの方が聴いてくれているんだなと感じていました。でも、正直なところ、そこまでリアリティを感じられなくて。例えば1億という数字を目にしても、1億人が一堂に会するところを目にしたこともなければ、想像もできなかったので、もちろん嬉しかったけど実感は湧きづらかったですね。それ以上に、知人や友人から「近所の幼稚園の運動会で『残響散歌』が流れていたよ」「水族館に遊びに行ったらイルカのショーで『残響散歌』が使われていた」というエピソードを聞いて、日常の中に自分の楽曲が入り込んでいるんだと感じられた時の方が、実感は大きかったかもしれないです。あと、ツアーをまわった時に、今まで以上に親子連れのお客さんがいらっしゃったんですよ。

――ライブ会場に来るお客さんの層も広がったんですね。

Aimer:はい。「Aimerと書いてエメって読むんだ」というふうに、このタイミングでまた自分を新しく知ってくれた方がたくさんいることはとてもありがたく嬉しいことだなと思いましたし、10周年を越えた向こう側のちょっと新しい自分で、また新しい楽曲を制作していきたいという想いが強まりましたね。

――Aimerさんが『テレビアニメ「鬼滅の刃」遊郭編』(フジテレビ系)の主題歌を担当すると知った時、個人的には少し意外性を感じたんです。そして実際に制作された「残響散歌」もそれまでのディスコグラフィにはない楽曲に思えたのですが、Aimerさん自身は当時どんな心持ちで制作に臨んだのでしょうか?

Aimer:『鬼滅の刃』という作品が世代を超えてたくさんの人に愛されるようになっている真っ只中にタイアップのお話をいただいたので、その時点では驚きや光栄に思う気持ち、プレッシャーがすごくありました。だけどデビュー当時から一緒に制作しているagehaspringsの玉井(健二)さん、飛内(将大)さんと一緒に制作できるということで、安心感というか、手応えがありましたね。いつもと同じように、チームとしては「作品に寄り添えるような楽曲にしよう」「『遊郭編』の空気や色味、肌感のようなものをしっかり落とし込もう」という方向性だったので、「ここで挑戦するんだ」というような気概があったわけではなくて。いつも通り、自然に、作品にまた新しい自分を引っ張り出してもらえた感覚です。新しい自分を音楽として表現したいと思うタイミングでは、「こういう音楽をやりたいな」「こういう曲があったら、聴いてくれる方が喜んでくれるかもしれない」と発信していくこともあれば、タイアップの作品に導いてもらえることもあるんですけど、「残響散歌」の時は後者でした。

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