日本から世界へ広がるアニメソングの傾向は? Spotifyランキング&リスニングデータより考察
アニメの主題歌やテーマソングが国内のヒットチャート上位を席巻するようになって久しいが、昨年と今年のチャートアクションを見ると、そうしたアニメソングの存在感がさらに一段と高まった印象を受ける。特筆すべきは、今まさに“異次元のヒット”を記録しているYOASOBIの新曲「アイドル」だ。リリースから約2週間で、全世界動画・ストリーミング再生計1億回を突破したのだ。現在、爆発的な人気を博しているアニメ『【推しの子】』の主題歌に起用された同曲が、2023年の日本のポップミュージックシーンを象徴する一曲になることは間違いないと言えるだろう。
また、アーティストの観点から言えば、人気アニメとのタイアップは海外進出の大きな足掛かりになり得る。実際に、Spotifyが発表した2022年「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」を見ると、長年にわたり根強い人気を誇る『東京喰種トーキョーグール』オープニングテーマの「unravel」(TK from 凛として時雨)を含めた計7曲のアニソンがランクインしている。
海外で最も再生された国内アーティストの楽曲
1. 藤井 風「死ぬのがいいわ」
2. YOASOBI「夜に駆ける」
3. SiM「The Rumbling」(『進撃の巨人 The Final Season Part2』OPテーマ)
4. Eve「廻廻奇譚」(『呪術廻戦』第1クールOP主題歌)
5. LiSA「紅蓮華」(『鬼滅の刃』OPテーマ)
6. Aimer「残響散歌」(『「鬼滅の刃」遊郭編』OPテーマ)
7. Teriyaki Boyz「Tokyo Drift (Fast & Furious) - From "The Fast And The Furious: Tokyo Drift" Soundtrack」
8. ヒグチアイ「悪魔の子」(『進撃の巨人 The Final Season Part 2』EDテーマ)
9. ビッケブランカ「Black Catcher」(『ブラッククローバー』第10クールOPテーマ)
10. TK from 凛として時雨「unravel」(『東京喰種トーキョーグール』OPテーマ)
(Spotify調べ)
例年、この「海外で最も再生された国内アーティストの楽曲」の上位はアニメソングが占める傾向がある。今年は、「死ぬのがいいわ」(藤井 風)の現象とも呼ぶべき突発的な特大ヒットという例外もあったが、アニメソングの海外への波及力は不変であると言える。その背景にあるのが、日本のアニメ作品の海外配信を展開するストリーミングサービス「クランチロール」のユーザー数増加などにも見られる広がりである。ハイクオリティ、かつ、子供だけでなく大人が鑑賞することも想定した日本のアニメ作品の海外ヒットに伴い、その関連楽曲が海外に広まっていくという構図は、これから先もしばらく崩れることはなさそうだ。
特筆すべきは、国内のヒットチャートを賑わし続けている令和のアニメソングの代表格「廻廻奇譚」(Eve)、「紅蓮華」(LiSA)を抑えて、『進撃の巨人 The Final Season Part 2』オープニングテーマの「The Rumbling」(SiM)が3位に輝いていることだ。同曲は、2022年1月29日付の米ビルボード・ホットハードロックソングチャートにて1位に輝くという快挙を成し遂げており、その勢いを受けて、「海外で最も再生された国内アーティスト」の10位にSiMがランクインする運びとなった。その大ブレイクの要因の一つとして、この楽曲が全編英語詞であることも挙げられるかもしれないが、アメリカをはじめとした各国で大ヒットを記録している『進撃の巨人』がSiMともたらした相乗効果は、あまりにもインパクトが大きなものであったと言える。
次に紹介するのは、2022年、Spotify上で、最も再生されたアニメソングランキングのトップ10である。
Spotify上で最も再生されたアニメソング
1. SiM「The Rumbling」
2. Eve「廻廻奇譚」
3. LiSA「紅蓮華」
4. Aimer「残響散歌」
5. ヒグチアイ「悪魔の子」
6. ビッケブランカ「Black Catcher 」
7. TK from 凛として時雨「unravel」8. 星野源「喜劇」
9. YOASOBI「怪物」
10. Official髭男dism「Cry Baby」
(Spotify調べ)
上位7曲は、一つ上のランキングの中からアニメ関連楽曲をそのまま抽出したもので、8〜10位には、『SPY×FAMILY』エンディング主題歌の「喜劇」(星野源)、『BEASTARS』第2期オープニングテーマの「怪物」(YOASOBI)、『東京リベンジャーズ』オープニング主題歌の「Cry Baby」(Official髭男dism)がランクインしている。星野源、YOASOBI、Official髭男dismという並びが示しているのは、「アニメソングだからヒットする」というシンプルなロジックだけではなく、「良質なヒット曲を生み出し続けている国民的アーティストがアニメソングを手掛けている」という近年における明確な潮流である。かつ、それぞれの楽曲は、各アニメ作品への深いリスペクトと理解に基づいて書き下ろされているものであり、アーティストのファンだけでなく、アニメファンからもしっかりと愛される楽曲に仕上がっているから凄い。