miwa、青春時代やフィクションを描くことの面白さ 『MIX』EDテーマ「ハルノオト」で目指したリスナーからの共感
miwaのニューシングル表題曲「ハルノオト」は、TVアニメ『MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~』(読売テレビ・日本テレビ系)エンディングテーマ。“青春時代の思い出の音”をテーマにして制作されたこの曲は、ノスタルジックな雰囲気のサウンドのなかで、切なくも愛らしい思春期の情景を描いた楽曲に仕上がっている。4月から5月にかけて弾き語りライブツアー『miwa acoustic live tour 2023 “acoguissimo 5”』を開催するなど精力的な活動を継続している彼女に、「ハルノオト」の制作や“フィクション”を描くことへの興味、ライブに対するモチベーションなどについて聞いた。(森朋之)
「ハルノオト」は“みんなが思い出す青春の音”を考えた
——新曲「ハルノオト」はTVアニメ『MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~』エンディングテーマ。どんなイメージで制作されたのでしょうか?
miwa:『MIX』は(同じくあだち充先生による)『タッチ』の26年後を描いた作品なんです。野球を通したライバル同士の関係だったり、恋愛模様が描かれているんですが、私自身も以前から『タッチ』を読ませてもらっていたし、お話をいただけたことがすごく光栄で。「ハルノオト」を制作するときも、『MIX』に少しでも寄り添える情景を描きたいなと思っていました。『MIX』には“思わせぶり”という裏テーマがあるとお聞きして。それがすごく腑に落ちたので、そういう要素も楽曲のなかで描きたかったんですよね。
——「ハルノオト」の歌詞は、青春時代を懐かしく振り返る視点と、今まさに青春真っただ中の姿が描かれていて。二つの時間軸が交差するような感覚もありました。
miwa:歌詞を書いているなかで、「みんなが思い出す青春の音って何だろう?」と考えていたんです。その頃に耳にしていた音もそうだし、過去を振り返ったときに思い浮かぶ音もあるだろうなって。そういう音や光景を通して、聴いてくださる方に共感してもらえたらいいな、と。私自身のことでいうと、学生時代、いちばん楽しかったのは昼休みにみんなでお弁当を食べていた時間ですね(笑)。毎日一緒にお昼ごはんを食べて、くだらない話で笑ったり。懐かしいです。
——生音の響きを活かしたアレンジも、楽曲の世界観にピッタリですね。ピアノはsumikaの小川貴之さん(Key/Cho)。
miwa:アレンジはNAOKI-Tさんなんですが、小川さんに弾いてもらうことで、同じフレーズでも違って聴こえてきて。ピアノは最後にレコーディングしたんですが、さらに素敵になったし、彩りもより鮮やかになりました。ミックスの段階でも、ピアノの音を大きめにしてもらいました。
——なるほど。ボーカル録りのときは、どんなことを意識していました?
miwa:「ハルノオト」に関しては、淡さが出るといいなと思っていました。熱すぎず、弱すぎず、可愛らしくなりすぎず、切なくなりすぎず。歌のニュアンスにはすごく気を使っていたし、針の穴に糸を通すような感じでした。
——繊細な表現を模索していたんですね。アニメのエンディング映像についてはどんな印象を持っていますか?
miwa:登場人物(立花投馬・立花走一郎・立花音美)のミニチュアが並んで歩いている映像なんですけど、部活帰りの雰囲気と重なって、すごく素敵だなって思います。CDの期間生産限定盤のジャケットも描き下ろしていただいたんですが、桜が満開のシーンとキャラクターたちの姿がすごく合っていて。ぜひ手に取ってみてほしいです。
——「ハルノオト」はYouTubeチャンネル「With ensemble」でも披露されました。オーケストラアレンジで歌う「ハルノオト」、いかがでした?
miwa:収録の時点ではライブでも演奏したことがなかったんですよ。レコーディングでしか歌っていなかったのですごく緊張しましたが、素敵なアレンジにしていただいたので、しっかり思いを込めて歌うことができました。演奏によって引き出された部分もあったと思いますね。しかもやり直しナシの一発撮りですから。ライブ感というか、生演奏ならではの歌というか。
——集中している表情も印象的でした。
miwa:集中してましたね(笑)。一発で決めなきゃという気合いも入っていたので。
——カップリング曲「未送信」についても聞かせてください。〈授業ではだいたい寝てる/グラウンドでは輝いて見える〉という歌詞もそうですが、この楽曲も『MIX』の世界観に近いですよね。
miwa:そうですね。「ハルノオト」を作ったときに、「まだ書き足りないな」と思って。「続きを書いてみよう」みたいな気持ちで制作したのが「未送信」です。さっきお話した“思わせぶり”にもつながると思うんですけど、まだ実っていない恋というか、付き合うまでの道のりが読者としてはいちばん楽しくて。「これって片想いじゃないよね? 両想いだよね。でも付き合わないんだ……」っていう(笑)。そこを描いてみたいなという気持ちもありましたね。
——教室のなかのディテールもそうですけど、映像が浮かんでくる歌詞も素晴らしいなと。
miwa:ありがとうございます。『MIX』の主人公たちが教室にいるイメージです。そのなかで生まれる恋愛模様だったり、部活に行くときの様子とか。そのテーマはブレないようにしていました。アレンジに関しては「ハルノオト」とテイストが違っていて。久しぶりにDaichiさん(鈴木“Daichi”秀行)にお願いしたんですけど、かなり意外なサウンドになったんですよ。壮大だし、低音が効いていて、「こうなったんだ!」という驚きがあって。歌もサウンドのイメージに合わせて、力強さを意識していました。男性目線の「ハルノオト」は淡くて、女性目線の「未送信」は力強いっていう(笑)。
——確かに「未送信」のボーカルは“強い”というイメージがありました。特に中音域がしっかり出ていて。
miwa:それはたぶん、マイクの影響もあると思います。Daichiさんのスタジオにあったマイクなんですけど、声の立ち上がりがすごくよくて、中音域をしっかり拾ってくれて。マイクのセレクトは大事なので。