『音楽的同位体』シリーズが拡張するクリエイティブの可能性 DJ Batsu&ど~ぱみん登場した『超音楽的同位体 MUSIC VOX』レポ

 4月29日と30日の2日間にわたり、幕張メッセで開催されたイベント『ニコニコ超会議2023』。その出展ブースの一つであるKAMITSUBAKI STUDIOブースでは、『超音楽的同位体 MUSIC VOX』と題したDJイベントが開催された。

 KAMITSUBAKI STUDIOとは、ネット発のクリエイティブレーベルであり、2019年10月、バーチャルシンガー・花譜が活動1周年を迎えたタイミングで発足されて以降、次々と新たなバーチャルシンガーやコンポーザーを含むリアルアーティストが同レーベルを拠点として活動を開始し始めている。昨年には、花譜がバーチャルシンガー初の日本武道館公演の実現という大きな快挙を成し遂げ、また今年3月には初のレーベル主催フェス『KAMITSUBAKI FES ’23』が開催された。このようにして、ネット発クリエイターの表現の可能性を果敢に押し広げ続けているKAMITSUBAKI STUDIOの新たな試みが、音楽的同位体の楽曲のみをプレイするDJイベント『超音楽的同位体 MUSIC VOX』であった。

 音楽的同位体とは、バーチャルシンガーの花譜、ヰ世界情緒、理芽、幸祜、春猿火の歌声をもとにしたCeVIO AIによる音声合成ソフトであり、それぞれ可不、星界、裏命、狐子、羽累(近日リリース予定)と名付けられている。この数年、名だたるボカロPが音楽的同位体シリーズを用いて楽曲を制作しており、その中から続々と新たなヒット曲が生まれている。また3月には、音楽的同位体5体による合成音声ソフトユニットV.I.P(=Virtual Isotope Phenomenon)が結成された。すでにV.I.Pのオリジナル楽曲「Penumbra」のMVも発表され、今や音楽的同位体シリーズは、各バーチャルシンガーに比類する存在感とボカロ界隈における影響力を獲得しつつあると言える。

 以下、4月29日の2つのDJアクトの模様を振り返っていく。

DJ Batsu

 まずはDJ Batsuが登場し、可不の楽曲2曲を立て続けてドロップすることでフロアの温度を少しずつ高める。そこから「こんな感じで曲を流し続けるので、よかったら皆さん楽しんでください」と挨拶し、その後にプレイした「フォニイ」(ツミキ feat. 可不)では、さっそくフロアから大きな歓声が上がった。続く「ひみつのユーフォー」(ナユタン星人 feat. 可不)で一気に音圧を上げ、その後も「えすけーぷ」(MIMI feat. 星界)や「Hello World ! 」(r-906 feat.狐子)をはじめとした様々な曲をシームレスに繋ぎながら、観客と共に熾烈なダンス空間を作り上げていく。中盤では、観客の一人をDJブースに招き入れて「せっかくなので、お兄さんのDJデビューを」と一緒に「マーシャル・マキシマイザー」(柊マグネタイト feat. 可不)をプレイする一幕も。そうした親密なコミュニケーションと粋な計らいを受けて会場の一体感はさらに高まり、ラストはビジョンにKAMITSUBAKI STUDIOロゴを映し出しながら「花となれ」(雄之助 feat. 可不)で熱狂の大団円を迎えた。

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