桜田通、いまメジャーデビューを選んだ理由 分かち合いながら進むことの大切さも語る
俳優の桜田通が、5月12日、ポニーキャニオンの新レーベル「Pandrec」からアーティストデビューを果たした。デジタルマーケットの発展により、国境を越えて様々なエンターテインメントコンテンツにアクセスしやすくなっている昨今、グローバルを視野に入れ、積極的に活動を行なってきた桜田。デビュー曲「MIRAI」は、どんな未来も受け入れて歩んでいくという、桜田の決意を反映した1曲に仕上がっている。
10代半ばから芸能活動を始め、着々とキャリアを築いてきた桜田が、このタイミングでメジャーデビューを選んだ理由とは? これまでの音楽活動の振り返りから、5月26日から始まるツアーへの意気込み、絶賛放送中のドラマ『クールドジ男子』(テレビ東京系)の裏話まで、深く思考しながら丁寧に語ってくれた桜田の言葉をたっぷりお届けしたい。(東谷好依)
デビュー曲「MIRAI」に込めた決意表明
――デビュー曲「MIRAI」の配信が始まりましたね。桜田さんのパーソナルを感じさせつつ、多くの人に届く曲だと思いました。
桜田通(以下、桜田):ありがとうございます。今まで作った曲も、もちろん大好きで気に入っているんですけど、どこか内向きというか、普段から僕を見てくれている人たちに届くものを作っているイメージがあったんです。今回は、外にも届けていきたいという思いを持ちながら、曲づくりを進めていきました。
――〈刺激的檸檬〉などキャッチーなフレーズが盛り込まれていて、耳に残りやすいです。デビュー曲に「MIRAI」というタイトルをつけたのはなぜでしょうか?
桜田:未来をどうしたいかによって、目の前で起きていることへの捉え方や考え方は変わります。どんなことが起きても、それを受け止めて前に進んでいこうというメッセージを込めて、「MIRAI」というタイトルをつけました。……なんてあっさり話していますが、実はかなり悩んだんです(笑)。いつもそうですが、作ったものを通して思いを最大限伝えたいって考えると、なかなかタイトルがつけられなくて……。この曲も、全部の作業が終わった後にタイトルを決めました。
――今回、音楽的に挑戦した部分はありますか?
桜田:表現が難しいんですけど、日本語っぽく歌わないようにすること。これって、英語で歌うとかそういう意味ではないんです。僕は、物事をしっかり伝えたいという思いが先行するせいか、1音1音、強めに発してしまうクセがあるんですよね。それが音楽にいい影響を与えるときと、ノイズになってしまうときがある。そのクセを自覚していれば、活かすこともできるし、抑えることもできます。今回はクセを抑える方向で、歌い方や声の出し方、歌詞の置き方なども含めて、プロデューサーの(板井)直樹さんと細かく相談しながらレコーディングをしました。
――桜田さんがファンイベントとして『Sakura da Festa(通称:サクフェス)』をスタートしたのが2016年。そこからライブイベントを継続的に開催するようになりました。これまでの音楽活動を振り返って、どんなことを思いますか?
桜田:これまでは「ありがたいことに音楽活動ができている」っていう状況だったと思っているんです。僕の音楽に期待している人たちが身近にいたわけではなく、やりたいことを応援してくれるファンの皆のやさしさがあったからこそ成り立っていたというか。そうした活動の中で実感したのは、音楽の楽しさや、ライブだからこそ表現できるものがあるということ。役者というのは、恋に浮かれる気持ちや、人に対する憎しみなど、自分の人生以外の感情を知る機会に恵まれた仕事です。そうやって手に入れたプラスやマイナスの感情を音楽に活かして、また役者の仕事で補充して……と交互にやってきたのが、20代での音楽活動だったのかなと思います。
――2022年には新曲「Brand New World」を携えて、全国4都市をまわるZeppツアーを成功させました。いま、このタイミングでメジャーデビューを選択したのはなぜでしょうか?
桜田:僕は基本的に、自分がフロントに立つことをおこがましいと思ってしまうタイプの人間なんです。憧れている人の言葉に助けてもらったり、誰かの生き方を見てポジティブな気持ちになったりした経験はあるけれど、自分がその“誰か”になるなんて、難しいと思っていました。ただ、ここ数年、僕の言葉や考え方に触れて「前向きになれた」って言ってくれる人が少なからずいて。SNSでのコメントや、オンラインでのお話会、ライブも含めて、感情を共有することで与えられる何かがあるんだと知りました。そういう経緯があり、自分の深い部分や、感情や言葉を、たくさんの人に届けられるチャンスがあるなら、挑戦してみようと思ったんです。
――全世界デビューということで、音楽だけでなく、アートワークなどの面でも挑戦しがいがあるのでは?
桜田:いままで、自分の曲ではミュージックビデオを撮ったことがなかったんです。今回、初めてミュージックビデオを撮って、それは環境が変わったからこそ挑戦できたことかなと思いますね。伝えたい思いを届けるには、視覚的な要素も大事なので、新しい武器を手に入れられたような気がしています。
――フィジカル盤をリリースしたり、メタバース空間でライブをしたりするなど、環境が変わったことで選べる手法も増えたのではと思います。今後、やってみたいことはありますか?
桜田:色々な選択ができるようになったのは、これまでの音楽活動が土台にあるからだと思うんです。なので、それを支えてくれた皆と喜びを分かち合えるものも作りたい気持ちがありますね。デジタルに特化しながら、物理的に残るものも用意していきたいと思っています。
――メジャーデビューによって、音楽への想いは増しましたか?
桜田:音楽への想いとはちょっと違うかもしれませんが、人を信じて委ねることが増えました。それは、新しいレーベルの方や、プロデューサーの方も含めて、ある程度しっかり信頼して任せられる方と出会えたから。メジャーという環境で、そういう方々に出会えたのはラッキーだと思っています。これまでは、僕の価値観や、やりたいことを芯にして音楽を作っていくことが多かったんですが、いまは、たくさんのプロの方の意見を取り入れて「共作」ができています。そういった意味では、新しい感覚で音楽と向き合えているなと思いますね。ツアーに関しても「この曲がより届くステージ構成って?」とか「照明の表現は?」とか、色々ミーティングを重ねています。いままでよりも、より鋭くなっている。攻撃的な鋭さではなく、届けたい人にちゃんと届くという意味で、鋭く作っていけていると思います。