桜田通、いまメジャーデビューを選んだ理由 分かち合いながら進むことの大切さも語る

桜田通、メジャーデビューの選択

孤独な「逆行衛星」にいまの自分が重なった

桜田通(写真=大城為喜)

――5月26日からツアーが始まりますが、サクフェスとの明確な違いはありますか?

桜田:甘えていたわけではないんですけど、サクフェスは、普段から僕を見てくれている人だから楽しめる空間だったと思うんです。今回は、僕のことを知らない人がフラッと来ても楽しんでもらえるようなイメージで、ライブを作り上げていきたいと考えています。僕も経験がありますが、「お気に入りの曲をヘビロテしているけど、アーティストのことは全然知らない」みたいなことって起こり得ると思うんですよ。そういうふうに曲を聴いてもらえるのは、アーティストにとって幸せなことだし、僕という存在を抜きにして「この曲いいな」と思ってもらえるクオリティを目指していきたい。ただ、以前から応援してくれている人が、プラスアルファ楽しめる要素だけは、こっそり用意したいと思っています。

――先日、ファンクラブの配信で「セトリは8割決まっている」とおっしゃっていました。残り2割は、何に悩まれているのでしょうか?

桜田:残りの2割は、果たして曲が完成するかどうかです(笑)。新しい曲の作業をしていますが、間に合うかどうか……。自分の曲以外もセトリに入れたいと思っているけれど、それもギリギリの状態です。どう頑張っても1日は24時間しかないし、限られた時間の中で最大限やるしかない。でもまあ、間に合うと思います。

――ツアー名にもとてもこだわりを感じました。「Retrograde Satellite=逆行衛星」と名づけた理由について教えてください。

桜田:宇宙や天体が好きで、それに関係する言葉を拾っている中で、ピンときたのが「衛星」でした。衛星って、惑星の周りを公転する天然の星もあるし、人工衛星もありますよね。ここ最近だと、実験モジュールの「きぼう」に注目が集まっていて、僕もファンの人たちと一緒に、インスタで実況しながら観測しました。そのとき、宇宙開発への“きぼう”を乗せて、皆の気持ちを背負っているあの衛星が、どこか孤独に見えてしまったんです。衛星には、そういう感傷的な思いを抱かせるところがあるし、インディーズとメジャーの垣根が曖昧になる中で、あえてメジャーを選択したいまの自分にもぴったりはまるなと思いました。ただ、「衛星」だけだとインパクトが足りなくて。それで関連語を調べていたときに見つけたのが、「逆行衛星」だったんです。他にも2、3個候補があったんですが、僕はミーティングの最初の頃から、99%これだなと思っていました。そのくらい気に入っているツアー名です。

――ツアー開幕が楽しみです。ここで、少しネガティブな質問をしますね。『今際の国のアリス』(Netflix)公開以降、インスタライブで海外の方からのコメントが増えるなど、外から見ていても人気が拡大していると感じます。そのような状況に対して、うれしいと感じるファンの方もいれば、これ以上人気になってほしくないという方もいると思うんですよね。後者のようなファン心理とは、どうやって向き合っていこうと思っていますか?

桜田:伝え方が難しいんですけど、応援している人自体を人生の中心に置いてほしくないっていうことは、常々言っていて。あくまでも「ちょっとした楽しいこと」のひとつにしてほしいんです。好きな音楽を聴いて日々が充実するとか、ドラマや映画を観て勇気をもらうとか、そういうエンターテインメントとの向き合い方ならいいけれど、人によっては深くのめりこみすぎてしまう場合がありますよね。最初は、背中を押された喜びや、愛情や思いやりみたいな心から始まったのに、何かをきっかけに気持ちがマイナスに傾きすぎたり、攻撃的になってしまったりするのは良くないと思うんです。僕が遠い存在になったと感じている人もいるかもしれないけど、いつも、できるだけ距離を縮めたいと思いながら行動しています。そういうところを、少しでも感じ取ってもらえたらと願っていますね。

――「私が知っている素敵さ」を共有するために、SNSは最適なツールだと思います。うまく使っていきたいですね。

桜田:僕は、小学生の頃から独り占めは良くないと思っていて。給食のおかわりも、欲しい人皆で分け合えばいいと思っていたんですよね。いきなり何の話かと思われるかもしれないけど(笑)。「この人が好き」っていう、同じ感性を持った人とつながれるって、すごい時代だと思うんですよ。だから独り占めせず、楽しみながら応援してもらえるとうれしいです。

桜田通(写真=大城為喜)

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