chilldspot 比喩根、“大人になること”との向き合い方 2ndフルアルバム『ポートレイト』に至るまでの変化と成長

考え方の「クセ」が少しずつ変わってきている

ーーでは、2ndフルアルバムとなる『ポートレイト』についてお聞きしていきます。作るにあたってサウンドのテーマやコンセプトはありましたか?
比喩根:去年リリースした2枚の作品は、私自身がグランジをはじめとするインディーロックやオルタナロックにハマっていた時期でもあったので、そういう要素がかなり強かったと思うんですけど、今回はレゲエっぽい曲もあったり、ファンクっぽい曲もあったり、全体的にシックな雰囲気になっていると思います。さっきも言ったように、メンバーそれぞれが聴く音楽も変わってきているし、そうやって色々吸収しているものが素直に作品に表れているのではないかと。
ーー曲の作り方そのものも変わってきていますか?
比喩根:結構変わってきていますね。以前はBPMも何も設定せず、なんとなく吹き込んだ弾き語りの曲をみんなに送って、そこから肉付けしていく中でジャンル感やテンポ感を決めていたんですけど、最近はデータでのやりとりが増えてきました。デモの段階でBPMもある程度決めて、簡単なリズムとコードを打ち込んだものに歌を入れ、それをファイル化して送るようになったので、メンバーも各々でアレンジしやすくなったんじゃないかと。そのやり方に関しては、「この曲は自分たちでアレンジまで考えられそうです」「これはちょっと専門的な知識が必要なので、Eathanさんと一緒にアレンジを考えたいです」みたいに、曲ごとにアプローチを変えてはいますが。
ーー歌詞についてはどうでしょうか。例えば「Don't lose sight」の、〈明るくても暗くても/とりあえず前を見て/行くしか残ってないんだよ /歩いても走っても/行く末は同じ〉は、決して楽観的でもないけど悲観的なだけでもない、とても冷ややかな現状認識を持っているのだなと思いました。
比喩根:あははは。なんていうか、世に溢れる「格言」みたいな、いいことを言ってるような言葉があまり響かなくて。「いやいや、そんなの綺麗事でしょ」と思ってしまうんですよね(笑)。できない側の人間なので、継続は苦手だし、頑張れないし努力もしたくない。そういうタイプだったので、ポジティブすぎる言葉に拒否反応があるんですよ。ただ、以前は「無理だよね」で終わっていたのが、今回は「無理だけど、無理なりにどうやって進んでいこうか?」と、一歩踏み出せるようなところまで書けるようにはなってきたのかなと。考え方の「クセ」みたいなものも、少しずつ変わってきているのかもしれないですね。
ーー「supermarket」のように、韻の踏み方が面白い歌詞が多いですよね。結構、ヒップホップからの影響も大きいですか?
比喩根:それはありますね。中学生の頃にCreepy Nutsにどハマりして。『フリースタイルダンジョン』に出ているラッパーの方たちの作品を片っ端から聴くようになり、ラップを覚えて休み時間にクラスメイトと言い合うという、サイファーの真似事みたいなことをやっていたことがありました(笑)。自然とその影響が出ているのかもしれない。韻を踏んだ方が語感も気持ちいいじゃないですか。洋楽も同じように、英語の意味が分からなくても韻を踏んでいるところに惹かれるんです。
個人的な目標は「自分のことを認められるようになる」

ーー比喩根さんの誕生日をタイトルにした「5/7」は、どのように制作したのでしょうか。
比喩根:この曲はアルバムだと最後、レコーディングがスタートしている最中作り始めました。「Anymore」という曲は、アレンジを2回し直したのですが、その原案となったトラックをボツにしてしまうのはもったいなく感じて。「これにメロと歌詞をつけるから」と玲山に話して、新たにトラックから考えたメロディと歌詞が乗っているんです。
ーーなるほど。歌詞にはどのような思いを込めましたか?
比喩根:この曲は、これまでの歌詞に対して「もう少し引き出しを増やそう」と思って取りかかったので、作るのにものすごく悩んだ記憶がありますね。それまで自分の歌詞について、客観的に考えたことがなかったし、まずはいろんな歌詞をきちんと読むことから始めました。とにかく、「心が穏やかになり何も感じない、何も書きたいことがない」と思う自分もいて、なかなか思うようには筆が進まなくて。そんな時に知人に相談したら「そのままの現状を書いてみれば?」という言葉にハッとして、ようやく着想を得ることができました。
ーーそれは、どんな着想だったのでしょうか。
比喩根:「何も感じることがない」から始まり、その考えの根源をたどったときに、大人になることですり減っていく感情の振れ幅が思い浮かんだんです。「世の中の様々なことを受け入れていく」という成長が、良いことのはずなのにすごく怖くなってしまって。でも結局は歳も取るし、大人にならざるを得ない。そういうプロセスだから。だからこそ受け入れていくことを、どう受け止めるかを歌詞の中で考えてみました。
「人に伝わりやすく、曲の意図をはっきりとさせたい」という観点から、歌詞についてメンバーやスタッフさんに感想を聞いたり相談したりしたのも、この曲が初めてのことでした。十人十色、様々な意見をたくさん聞いているうちに、なにが書きたかったのか分からなくなってしまった時もあったのですが、最終的にはみんなが「いい歌詞だね」と言ってくれて、また新たな達成感を味わうこともできました。
ーーこの曲のメロディやボーカルに関してはいかがですか?
比喩根:まずメロディに関しては、歌詞に比べるとすんなり決まりました。サビの上下するメロディとか、キャッチーで個人的にお気に入りです。ただ、全体的には展開があまり多くないので、聴いている人が飽きないように音数やリズムで工夫をしています。
chilldspotの音楽は、ギターがキーになったり主導権を握ったりしていることが多いのですが、この曲は全部の楽器がそれぞれ重要な役割をしていると思います。アレンジがシンプルなぶん、それぞれの楽器がどう動いているのか感じられるのもポイントかなと。ボーカルに関しては、声の素朴な繊細さや地声と裏声の切り替えが耳に残るよう意識したので、そこを聴いてもらえたら嬉しいです。
ーーこのインタビューが公開される5月7日に21歳になるわけですが、今後バンドとして、個人としてどうありたいですか?
比喩根:「こうなりたい」みたいなものを、特に持たず続けてきたバンドなんですよ。といっても、まだ3~4年しかやっていませんが(笑)、もはや目標を持つとか持たないとか、どちらが正しいのかもわかっていなくて。とりあえず今年も楽しくできたらいいな、と。ライブもたくさん経験できそうなので、一つひとつ積み重ねながらchilldspotというバンドを4人でより精度高く形成していきたいと思います。
個人的な目標としては、「自分のことを認められるようになる」というのがあって。以前に比べると性格やらクセやら、自分でもある程度分かってきてはいるのですが、その辺り上手く付き合える自分でいたいですね。

■リリース情報
2nd Full Album『ポートレイト』
発売:2023年5月3日(水)
初回生産限定盤(CD+Blu-ray)4,000円+税(PCCA.06201)
通常盤(CD Only)2,800円+税(PCCA.06202)
※今回のジャケット表面加工が、スクラッチ仕様となっています。仕上がりに個体差がある形状となること及び、非常に傷がつきやすい材質である旨をあらかじめご理解いただきますようお願い致します。
ST & DL:https://lnk.to/portrait_
CDショップ:https://pony-canyon.lnk.to/cilldspot-portrait
特設サイト:https://portrait-chilldspot.jp
CD収録内容
01.crush
02.Heart Jack
03.Girl in the mirror
04.BYE BYE(Honda VEZEL e:HEV CMソング)
05.Don't lose sight
06.Like?(『あざといを知り尽くした私~I like you? like you~』主題歌 / CITEN スペシャルムービータイアップソング)
07.get high(映画『恋のいばら』主題歌)
08.supermarket
09.full count
10.please
11.Anymore
12.5/7
Blu-ray収録内容
2022.10.26 One man tour “Road Movie”
・yours
・hold me
・shower
・flight
・Sailing day
・夜の探検
・Weekender
・夜更かし
・dinner
・Monster
・未定
・Groovynight
・ネオンを消して
・Ivy
・Kiss me before I rise
・your trip
・BYE BYE
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サイン入りチェキプレゼント
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応募方法

※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
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※当該プレゼントは、応募者が第三者へ譲渡しないことが応募・当選の条件となります(転売、オークション・フリマアプリ出品含む)。譲渡が明らかになった場合、当選は取り消され賞品をお返しいただく場合がございます。
<締切:2023年5月21日(日)>