藤原さくら、アットホームな空間に深く染み渡った歌 弾き語りで47都道府県を巡ったツアー『heartbeat』ファイナル

藤原さくら、弾き語りツアーファイナルレポ

 ここで、メジャーデビュー前の2014年にリリースした『full bloom』から「ラタムニカ」。高校時代、友人とその父親との関係について歌った曲で、〈あなたの全てを悟ったような目が嫌い〉〈誰も気付かず朽ちて死んでいけよ〉など、辛辣な歌詞が哀愁漂うメロディに乗って歌われる。

 続く「いつか見た映画みたいに」は、5月17日にリリースされる最新アルバム『AIRPORT』から。音源ではVaVaのプロデュースでビートの効いた楽曲に仕上がっているが、弾き語りではフォーキーでレイドバック感あふれるメロディが印象的だった。さらに、そのVaVaとコラボした藤原さくら流ヒップホップ曲「生活」を経て「mother」へ。〈溶けたのは 深い赤/私の中を流れる〉と、“愛”をテーマに綴った歌詞が印象的な、優しく雄大な楽曲だ。

「次の曲は、この前にリリースしたEPにも入っている曲です。自分の手の届く範囲というか、近くにいる家族や恋人や友人……なんでも言える関係になればなるほど、つい強い言い方をしてしまったり、素直になれなかったり。きっと同じ経験をした人もいると思うんですけど、みんなが素直になれますように」

 そう言って披露したのは、スカートこと澤部渡をプロデュースに迎えたファンの間でも人気の高い「ゆめのなか」。一番大切な人ほど傷つけてしまう、そんなもどかしい思いと〈いつか見た夢の中の二人みたいに〉笑っていたいという願いが歌われる歌詞が、「ラタムニカ」「mother」と並べて聴くことでより深く心に染み渡る。藤原がこれまでの人生で、他者からの愛をどう受け取ってきたのか、その喜びや葛藤の過程を垣間見るようだ。

 さらに、〈年を取っても/皴になっても/一緒にいて/恋のsoupを/ふたりで味わいつくしましょう〉と、オーディエンスのハンドクラップとともに「Soup」を歌い上げ、16ビートのグルーヴィなカッティングが心踊る「Sunny Day」、そして大滝詠一「君は天然色」のカバーで本編は終了。アンコールでは、本邦初公開となる斉藤和義と共作した新曲「話そうよ」と、「NEW DAY」を演奏し、およそ1年にわたる長いツアーを締めくくった。

 いつものコンサートホールとは一味違うイレギュラーな場所で、アコギだけで「歌」を届けてきた藤原さくら。この貴重な体験が今後のアーティスト活動にどうフィードバックされていくのか、今から楽しみだ。

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