古内東子×相沢友子が語り合う、作品創作における言葉へのこだわり 年齢や時代と共に変化する“恋心”の描き方

「思ったよりもだいぶくねくねした道を歩いてきた」(古内)

ーーお互いの活動はどう見えていますか? スタート地点は似ていますよね。

相沢:最初は音楽がやりたくて憧れの世界に入れたのだけど、いろんなことがあって違う道に進みました。歌を30年間ずっと歌い続けることが、簡単なことではないことを身を持って知っているので、一つのことを貫いて30周年を迎えた古内さんを本当に尊敬します。そうやって同世代のアーティストが活動を続けていることを知ると、私もすごく励みになります。

古内:ありがとうございます。言葉という意味では、作詞と脚本は少なからず似ているところがあるのかもしれないけど、取り組み方としては全然違うだろうなと思うんです。脚本家は、いろんな人のニーズに応えながら物語を考える必要がある。アーティストでやっていたときとは全然違うと思うので、例え書く才能があったとしても、みんなができる仕事ではないのだろうなと。まず、(脚本家は)わがままが言えなさそうですし(笑)。

相沢:(笑)。そうですね。やっぱりチームプレイというか、総合芸術なので、アーティストをやっていた頃とは違うし、チームの一員という感覚が強いです。でも、逆にそれが性に合っていたというか、チームで動くことが好きなところもあって。歌詞の場合、自分なりの答えをそこに明示しなければいけないと私は思っていて。私が音楽活動をしていた頃は、言いたいことと言葉数が多すぎて、メロディに乗らないタイプだったんです。でも、ドラマの中にはいろんな人が出てきて、それぞれの正解や正論がある。悪者の意見さえも提示できるのが楽しいなと。そういう意味では、連続ドラマが好きで、長尺のなかにたくさん情報を詰め込める方が向いていたのかなって。歌詞に自分の考えを凝縮することは、本当に難しいなと思います。

古内:やっぱりドラマと映画は全然違いますか?

相沢:違います。ドラマは時間との勝負が一番大きくて。物語がどうこうではなく、天気が崩れたからこのシーンは撮れないとか、今回はロケが多すぎるから、次の話はほぼワンシチュエーションで部屋の中の話にしてくれとか。とんでもないところから制約がくることもあります。そういう意味では結構大変ですけど、それがスリリングで楽しい。「じゃあ、こうしてやろう」とか、制約があるからこそ生まれてくるものもある。「何でも好きなことを書いていいよ」と言われると、逆にどうしようかなと考えてしまうところもあります。

古内:ドラマの仕事がすごく合っていたんですね。

相沢:確かに向いているのかもしれないです。私には全部を背負ってフロントに立つというプレッシャーが重すぎたというか。チームだからこその働きやすさも感じています。成功も失敗もみんなで分かち合える、それが心強いのかもしれないです。古内さんは自分の体験で歌詞を書くことが多いんですか?

古内:そうですね。友達の話から、というのは全然ないです。さすがに全てが実体験ということではないですが、自分では言い得ないことや考え得ないことは書かないです。

相沢:古内さんの曲は本当に切ないですよね。「逢いたいから」が大好きで、お風呂で歌ったりしますし、結婚式で友達と一緒に「ウィークエンド」を歌ったこともあります。

古内:嬉しい!

相沢:今回のアルバム『果てしないこと』も聴かせていただきました。

古内:ありがとうございます。

相沢:やっぱり胸にくる歌詞と声がいいなと思って。私は「素肌」と「果てしないこと」がすごく好きです。

ーー「果てしないこと」は〈果てしないことのように思ってた夢も今じゃ/日常になって生活で〉というフレーズからはじまります。

古内:昨年からデビュー30周年イヤーに入って、インタビューしていただく機会がたくさんあったんですけど、そこで「30年を振り返ってどうですか?」という質問をたくさん受けたんです。それに答えているうちに、自問自答をするようになって。この歌詞には、そこで感じたことの全てが入っています。かつては夢だったことも、今はそこまでいいものではないし、頭を悩ますものでもある。でも、やっぱり夢が叶ったということでもあるし、これからもっと膨らませていかなければいけないものだなと。今の自分を俯瞰で見るようなイメージで、「30周年とは?」の答えを書きました。

相沢:まっすぐ歩いてきたつもりが、振り返ってみると曲がりくねっていたというのがいいですよね。すごく共感します。

古内:自分では真っ直ぐに立っているつもりなのに、側から見ると曲がっていることもあると思うんです。真っ直ぐ歩くのはなかなか難しいし、誰もできないのかなって。自分では意識していなかったけど、思ったよりもだいぶくねくねした道を歩いてきたなと思います。

ーー2番は夢ではなく、恋愛に落とし込んでます。

古内:恋愛観についても聞かれることがあって、当然若い頃とは考え方が変わっていて。今は「恋」というよりは、「恋心」に焦点を当てる曲が多くなっています。自分の中で広がった恋心は、そんなに簡単にたためないみたいな曲もあるし、今だからこそ感じる気持ちもある。若いときからずっと書き続けてきたラブソングを、今の気持ちで書きたいし、これからも書いていきたいという歌詞ですね。

相沢:恋心はやっぱり持ち続けたいですよね。私もそういう気持ちを忘れてはいけないなと思います。

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