湊あくあ×Junky、創作活動において大事にしているもの 「#あくあ色ぱれっと」ヒットで考えた“バズる”ことへの向き合い方

湊あくあ×Junky対談

 TikTokが流行の発信源として定着して久しい昨今、VTuberの楽曲の中にも、TikTok経由で人気が広がっていく楽曲が年々増えはじめている。その代表曲のひとつと言えるのが、ホロライブ2期生の湊あくあが2020年にリリースした楽曲「#あくあ色ぱれっと」だ。

 2020年8月に開催された彼女の初のワンマンライブ『湊あくあ アニバーサリーライブ 2020 「あくあ色すーぱー☆どり~む♪」』でお披露目されたこの楽曲は、2021年の年末にTikTok経由でさらに人気に火がつき、現在までにTikTokの曲名のタグだけで1億2000万回再生以上、YouTubeのMVも1200万回再生を超えるヒット曲となっている。

 カラーコードをイメージしたタイトルや「ねぇもっと!好きになってもらいたいの!」という歌詞が印象的なこの楽曲の制作過程、それぞれが考える「バズる」ことへの向き合い方などについて、彼女と作詞作曲を担当したJunkyの2人にリモートでインタビューを行った。(杉山仁)

Junkyさんの曲に出てくるわがまま可愛い女の子が好き(湊あくあ)

【original】#あくあ色ぱれっと【ホロライブ/湊あくあ】

ーー「#あくあ色ぱれっと」は、湊あくあさんの初のオリジナル曲として、2020年8月に開催された1st ワンマンライブの最後にお披露目されました。あのタイミングでオリジナル曲をつくろうと思ったのはなぜだったんでしょう?

湊あくあ(以下、あくあ):『あくあ色すーぱー☆どり~む♪』は私にとって初めてのソロライブだったので、それに合わせて「ソロのオリジナル曲もつくりたい!」と思ったのが最初のきっかけでした。それで、「どんな曲がいいんだろう?」と考えはじめたんですけど、初めてということもあって、最初はなかなか上手く進みませんでした。でも、「活動を通して、爽やかで可愛らしいアイドルソングを歌いたい」ということは決めていたので、色々と考えていく中で「Junkyさんなら、そういう曲をつくってくださるんじゃないか」と思ったんです。それでオファーをさせていただいたのが「#あくあ色ぱれっと」のはじまりでした。

ーー理想のアイドル曲のイメージとして、Junkyさんの楽曲が浮かんできたのですね。

あくあ:そうなんです。私はJunkyさんの「メランコリック」や「ラブチーノ」が大好きでしたし、Junkyさんなら、可愛らしくて爽やかな、それでいて青春っぽい曲をつくってくれそうだと思いました。それに、初めてのオリジナル曲なので「みんなが知っている方に書いてもらいたい」とも思っていました。Junkyさんは「メランコリック」や「スイートマジック」「トゥインクル」など人気曲をたくさん書いてきた方なので、みんなも曲を聴いて「Junkyさんだ!!」と喜んでくれると思ったんです。

Junky:オファーをいただいたときはとても嬉しかったですし、すごく気合いを入れたのを覚えています。あくあさんは「青春」とおっしゃられましたけど、オファーをいただいた時点で、「爽やかで、でもちょっとエモい楽曲」であることを重視していましたよね。

あくあ:それこそ、リファレンスとして、Junkyさんがつくられた「キミペディア」のような、爽やかで、でもちょっとわがまま可愛いイメージの歌詞がいいです、とリクエストした気がします。結構前の話なので、私が今付け足しているかもしれないですけど……(笑)。

ーーとにかく、あくあさんの方から楽曲についての具体的なリクエストがあった、と。

Junky:はい。まず、サウンド面の大きな方向性として「アイドルの可愛い楽曲」というテーマがあって、僕自身も「この曲をVTuber界トップのアイドル曲にしたい!」と気合いを入れました。また、僕はアイドル曲としての可愛さと、かっこいいギターサウンドの対比で生まれる温度差が好きなので、そういう要素も入れつつ、エモさを出すためにアコギやピアノを使ってまとめていきました。

 あくあさんはとても可愛い声をしてらっしゃるので、その声を全力で活かして、「絶対にいい曲に仕上げたい!」と思っていましたね。その気合いの表われとして、「#あくあ色ぱれっと」では生音をたくさん使っています。冒頭からピアノの裏で生で録ったアコギが鳴っていますし、自分の曲では初めてベースも生で録音しました。生音は後から調整しにくいので、音選びも事前にかなり準備しました。

あくあ:まさかそんなに気合いを入れてくださっていたなんて、ビックリです……! でも、私の記憶が正しければ、「#あくあ色ぱれっと」は途中でキーを上げてもらったはずなんですよ。今楽器を生で録っていたというお話を聞いて、「やっべ」と思ってしまいました。

Junky:いえいえ、全然大丈夫です。あくあさんの歌声に合うキーになりました。

あくあ:そういえば、去年から今年にかけてのホロライブの年末番組であった「hololive shuffle medley」で、星街すいせいちゃんが私の衣装を着て「#あくあ色ぱれっと」をカバーしてくれていましたけど、確かあれが原曲の-2か-3辺りのキーだったんです。実はあそこで歌ってくれていたものが、私がもともと歌うはずのキーだったりします(笑)。

ーーそうだったんですか……! 歌詞の面で工夫したことはありますか?

Junky:歌詞はオーダーをいただいた通りに僕の中でストーリーをつくって、一度出来たものをお送りしたんですが、あくあさんはそれをちゃんと見てくださって、「ここはもっとこうしたいです」と自分の意見を返してくださったのが印象的でした。普段から色んな方に楽曲提供をしていると、僕がつくったものをそのまま歌ってくださる方も沢山いらっしゃいますけど、あくあさんのように「こういう考えなので、ここはもっとこうしてほしいです」と伝えてもらえると、僕がひとりでつくったわけではない、ちゃんと歌う方の色が加わった楽曲になると思うんです。僕自身そういう方法が好きですし、そういうレスポンスをくれる方ってなかなかいらっしゃらないので、すごくいい経験になりました。

あくあ:今考えるとすごく失礼な話ですよね……! でもJunkyさんは私のリクエストを快く受け入れてくださって、その上で歌詞を色々と考えてくださったのですごく嬉しかったです。

ーーあくあさんのリクエストで大きく変わったのはどの部分だったんでしょう?

あくあ:一番覚えているのは、最初の方の〈私を見つけてね〉という歌詞ですね。実はここは最初、Junkyさんが「再生ボタンを押して」という歌詞を用意してくださっていて、それもすごく素敵な歌詞だなぁと思ったんですけど、私は当時から「YouTubeだけではなくて、色んな場所でアイドル活動をしていきたい!」という思いが強かったので、「何か別の言い回しはできないかな?」と思ったんです。そこでたくさん考えた結果、「インターネットの海から私を見つけてほしい!」という意味を込めて、この歌詞を提案しました。

ーー「色んな場所でリスナーさんに会いに行きたい」という思いが込められた歌詞なのですね。逆にJunkyさんが考えた部分で、あくあさんが気に入っている歌詞はありますか?

あくあ:「#あくあ色ぱれっと」の歌詞は全部好きなんですけど、やっぱり、TikTokでも人気が出た、サビの「ねぇもっと!」の部分がすごく好きです。私はJunkyさんの曲に出てくるわがまま可愛い女の子が好きで、私自身も「もっと好きになってもらいたい!」という気持ちを持っていたので、Junkyさんがそういう部分をしっかり引き出してくれました。Junkyさんの曲に出てくる女の子って、ちょっとわがままでも、嫌な感じがしないのが不思議だと思うんです。この曲も「頭の中は君ばっか!」の部分とかも含めて、むしろ「えっ、かわいい!」という気持ちになるので、「やっぱり天才なんだなぁ」と思いました。

ーーこのサビの部分は、どんなふうにつくっていったんでしょうか。

Junky:サビのメロディはオーダーをいただいてそのままとりかかった部分で、実はその10分後には出来ていました。「こういう曲をつくってほしいです」という気持ちを受け取った瞬間の熱量はそのときだけのもので、時間が経つと戻ってこないので、それをできるだけメロディに落とし込みたいと思っていたんです。最初にいただいたオーダーから、まっすぐ何かに向かっていくようなイメージが浮かんだので、そのままの雰囲気でつくっていきました。そしてそこから、「あなたしか見えてない」「あなたがいるから私がここにいる」というビジョンが見えてきて、それが歌詞になっていきました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる