ZIPANG OPERA、声や言葉の得意分野を活かした“4人の真骨頂” 本格的な船出となるライブへの意気込みも明かす
ZIPANG OPERAが3月29日、待望の2ndアルバム『風林火山』をリリースした。2021年6月、東京国際フォーラムにおける『ZIPANG OPERA ACT ZERO ~暁の海~』での華々しいデビューから、前作『ZERO』の発売で大きなインパクトを残した彼らだが、2022年上半期は俳優などの活動でも人気のメンバー一人ひとりが多忙を極め、ステージ上でZIPANG OPERAを観られる日が滅多になかったため、ファンにとってはやや物足りない日々だったかもしれない。
転じて2022年下半期は「STEER THE SHIP」でまさに“出航”し、全員がカッコよさに“痺れた”という『KAMINARI FLAVOR / Like a Wolf』を経て本作へ到達。急ピッチで進められた2作とは対照的に、新作は時間をかけてメンバーそれぞれがアーティストとして何を表現したいかを吟味しながら制作されたという。spiはそれを「表現のための戦い」と表現した。
4月には、お披露目以来となる全4公演の単独ライブ『ZIPANG OPERA 有観客&配信ライブ 〜風林火山〜』も控え、いよいよ全世界に向けて船首を向けるZIPANG OPERA。その胸中はいかに。(小池直也)
「ストロングポイントを理解しつつ全員で作れた」(福澤)
――約1年4カ月ぶりとなる2ndアルバム『風林火山』の完成おめでとうございます。出来栄えはいかがでしょう?
佐藤流司(以下、佐藤):自分たちのやりたい方向性で仕上げられました。
福澤 侑(以下、福澤):前作『ZERO』とは違うテイストの僕たちを見せられる内容になりましたね。
心之介:「出航します!」と言っていた船がようやく海へ繰り出したような感覚ですよ。
spi:ベストなタイミングでした。新しすぎるとリスナーにはわからなかったりすることがあると思いますが、今作では流行っているものの真似ではない「少し先」のサウンドを打ち出せた気がします。
――タイトルは武田信玄の有名な言葉からの引用となっていますが、どのように決まったのでしょう?
心之介:もともと公演のタイトルとして決まったものでした。
佐藤:プロデューサーさんがミーティング時に「みんなにぴったりの言葉を見つけた」と提案してくれたんです。「侑が風、俺が火、心(之介)が林、spiくんが山っぽい」と。
spi:「確かに」と思いましたね。自分も「山」っぽいと思いますし。
福澤:僕も「風」だという自覚がありました。
spi:そんな流れから、公演とアルバムのタイトルを一緒にしようという話にまとまったんです。
――前作『ZERO』は急ピッチで制作されたと以前の取材で話されていましたが、新作の制作はいかがでした?
福澤:お披露目に向けてガンガン曲作りをしていましたからね。
佐藤:『ZERO』はとにかく時間がなかったですね。どんなスタイルで歌ったらいいかわからず、探りながらやっていました。本作では自分のクセを入れられたと思います。spiくんらしい力強い歌、俺はシャウト、侑のラップはますます流暢に、そして心の儚い声。それぞれの特徴がはっきり分かれていくと、ユニゾンした瞬間のインパクトが際立つんですよ。
spi:チームで制作する性格上、色々な人の意見が飛び交うんですよ。でも事前に4人で「アーティストとして自分の表現をするために戦おう」と話をしていて、それがよかったんですね。だから自分たちも自信を持って届けられる作品ができました。
福澤:だんだんグループとして固まってきて、そして全員のレベルが上がっているなと肌で感じる制作期間でした。前作はメンバー同士のコミュニケーションがまだ少なかったですし、今回はそれぞれのストロングポイントを理解しつつ全員で作れたなと。
心之介:制作自体は主題歌「KAMINARI FLAVOR」をはじめ、映画『ゲネプロ★7』の劇中歌「Lights on Me」「Breaking Down」「Pieces of a Dream」を先にレコーディングしてから、デュエット曲「天照」(spi & 心之介)や「ツギハギ」(佐藤流司 & 福澤侑)などに取りかかりました。
「1曲ごとにテーマがあることも大事」(spi)
――「天照」はspiさんと心之介さんの声のブレンド具合が、全体を通して移ろう感じが素晴らしかったです。
spi:曲の世界観は心を中心に僕も関わって作りました。よかったのは彼の書いた歌詞に自分が歌い手として共感して表現できたことと、それに対して心自身が共感してくれたこと。自分たちの人生の断片を込めることができたと思っています。グループ名が“OPERA”ですからサウンドや音楽だけでなく、1曲ごとにテーマがあることも大事なんですよ。
心之介:spiくんとのデュエットと聞いて、何を表現するか考えたときに「大切な人との別れ」というテーマが浮かびました。前々から音楽としてアウトプットしなければと考えていたことで……。でも、これは否定的なことではなく優しいものなんです。spiくんとなら表現できそうだなと思えましたね。ZIPANG OPERAのなかでも特に私情が詰まった曲です。
佐藤:心にしてはまっすぐな言葉を選んでいて、それが曲調とふたりの歌声が混ざって直接心に刺さる感じですよね。シンプルにいい曲。
心之介:あとspiくんの歌録りで現場にいたチームの皆さんが「これでいいね」というテイクができたとき、僕は「いいけど、spiくんならもっとできる」と思ったんですよ。だから「もう1回できる?」と提案して、それによって我を出してよかったと思えるくらいの仕上がりになりました。
spi:心にその言葉をかけてもらったのは、だんだん喉も調整できてきて「次、いいの録れるかも」と思っていた矢先でしたね。みんながOKと言ってくれて「いいなら、これでいいのかな」と考えていたから、「やっぱりそうか」と。やってみたらいい意味で感情の揺らぎのある不安定なテイクが録れて、それを音源に採用しています。
心之介:表現には完璧に歌う、ということ以上のものがあるんですよね。今後はレコーディングの場にいよう、とより強く感じました。
spi:メンバーにしかわからないことがあるな、とも思いました。
――佐藤さんと福澤さんの「ツギハギ」はいかがでしょう。
佐藤:侑がエンジニアの方々と打ち合わせながら、制作の段取りをしてくれて助かりました。タイトルも彼にお願いしています。
福澤:「ツギハギ」という言葉が僕たちっぽいなと。ひとつのものにとらわれずに色々なものを取り入れていく感じですね。歌の世界観にも共鳴して尖りに尖ろうと燃えました。
佐藤:侑は速いラップが得意なので、ふたりで勝負するような曲にしたかったんですよ。とんでもない量の言葉を詰め込んでしまい、作詞に時間がかかりました。いいワードが浮かばなかったのでMV撮影の合間も考えたりして。
福澤:特に2コーラス目のBメロのところは速い……。流司くんが考えてくれたフロウと歌詞がとにかくカッコいいので、早く本番のテンションでやってみたいですね。あと難しくても自分がいいと思えるものは自然と体に入るんですよ。レコーディングもスムーズでした。
佐藤:凸凹コンビというか(笑)、お互いに遺伝子がかけ離れているから面白いのかも。でも感覚的な好みは似ているんですよ。だからDメロの歌詞も「俺はこう思っているけど、侑もそう思っているよね?」という内容にしています。あと侑のニュートラルな声と、俺の人を選ぶがなり声の対比も鮮やかに出たかな。