DUSTCELL、過去と向き合うことで芽生えた心境の変化 バンドサウンドへの接近で拡張した音楽表現

 EMA(Vo)とMisumi(Comp)による音楽ユニットDUSTCELLが3月29日、2ndミニアルバム『ROUND TRIP』をリリースした。

 今作は、強烈なビートとメロディアスなラインの融合が見事なリードトラック「TULPA」をはじめ、気鋭の漫画家とアーティストがコラボレーションする企画「PROJECT COMUC」の第2弾として制作された楽曲「ANTIHERO」や、昨年のワンマンライブ『PREPARATION』にて初披露され話題となった「過去の蜃気楼」など、計7曲を収録。過去を振り返り現在へと戻ってくるというコンセプトのもと、セルフオマージュやセルフカバーが盛り込まれた充実のミニアルバムとなっている。

 制作期間中、EMAは「作詞と向き合うのが重たい状態」に陥ったこともあったという。しかし、昨年より口にしている「外と繋がっていきたい」というDUSTCELLのモードはより色濃くなり、取材を通して2人からオープンなマインドを感じ取ることができた。4月には全国ツアーも控えており、今後の飛躍が期待される中、現在の2人の心境に迫る。(荻原梓)

ーー「ROUND TRIP」というタイトルにはどんな意味があるのでしょうか?

Misumi:意味としては“往復旅行”で、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のように、過去に一度行って帰ってくるということをテーマにしたアルバムになってます。例えば、1曲目の「TULPA」は僕らが一番最初に出した「CULT」(1stアルバム『SUMMIT』収録)の地続き的な曲として作りました。あと「Kick It Down」は「DERO」(2ndアルバム『自白』収録)の続編だったり、DUSTCELLを結成する直前に僕がソロ名義で発表した「オルターエゴ」のカバーを入れてみたり。でも、ただ過去に行って帰ってくるだけじゃなくて、『千と千尋の神隠し』で主人公の千尋がトンネルの中の世界に入っていっていろんなことを経験してひと回り成長して元の世界に戻ってくるように、過去に行って何かが変わって帰ってくるアルバムだと思ってます。

「外の世界と繋がっていくのが今はものすごく楽しい」(Misumi)

DUSTCELL - 2nd Mini Album「ROUND TRIP」XFD

ーーなぜそうしたテーマに至ったのでしょうか?

Misumi:今まで2枚のフルアルバムと1枚のミニアルバムを出してきて、まだ3rdフルアルバムを制作するモードになれなかったんです。こうやって過去を振り返るようなことをできるのは、今しかないかなと思って。

EMA:ミニアルバムって遊び要素があると思うんです。それでDUSTCELLとして新しいことをやってみたり、原点回帰しても面白いかもねという話が上がって、セルフオマージュみたいな作品をアルバムに詰めてみようかということになりました。

ーー今のうちにできることをしておこうと。

EMA:はい。逆に最後のトラックの「過去の蜃気楼」は、今までのDUSTCELLらしさというよりは、バンドサウンドという新しい一面を見せて、今後も進化できるような終わり方で締めてます。

ーーなるほど。それでは1曲ずつ掘り下げていきたいと思います。まずはリードトラックの「TULPA」ですが、これはどういった曲でしょうか?

Misumi:これは先ほども言った通り「CULT」という曲の地続き的なストーリーを描いた曲で、サビのリズムはまさに「CULT」を意識してます。他にもEMAのアイデアでラスサビに「CULT」のメロと歌詞を重ねていたり、「CULT」に出てくるセリフ的な掛け合いを入れたりしてます。元々「CULT」は『ファイト・クラブ』という映画から影響されて作った曲なので、歌詞は改めて映画を観直して作詞しました。あの映画ってすごく破壊的で暴力的なんですけど、そういう面が「CULT」よりも強く濃く出たんじゃないかなと。でも最後は希望のある終わり方にできて、自分的には満足してる楽曲です。

ーーEMAさんは「CULT」の頃と今とで自分自身に変化は感じましたか?

EMA:感じましたね。「CULT」を聴き返しながらレコーディングしたんですけど、やっぱり技術面で言うと発声が「CULT」の頃は幼くて。あと私は歌う時にあれこれ考えずに直感で歌うことが多いので、当時の私にとってはこれがベストで、素直に歌ったんだなというのを改めて感じました。

ーーそれを踏まえて「TULPA」ではどんなことを意識して歌いましたか?

EMA:DUSTCELLの曲って最後にはちゃんと前を向くんですよね。どんな嫌なことがあっても、どんなにどん底であっても、最後はちゃんと頑張って生きてみるかみたいな。なので悲しく歌うよりかは、力強くパワフルに、聴いてくれた皆さんが前を向けるように意識して歌いました。

DUSTCELL - ANTIHERO (Official Music Video)

ーーそして2曲目の「ANTIHERO」は漫画と音楽のコラボ企画「PROJECT COMUC」で”共創”というテーマで生まれた楽曲となってます。

Misumi:『ジャンプ+』の読み切り漫画『ハッピーハッピーエンドルフィン』とのコラボ楽曲です。集英社の編集部にお伺いして、漫画家の揚 茄子央先生と一時間くらい対談させていただいて。そこでお互いに共通するものとかが見つかり、徐々に作品のテーマが決まっていきました。基本的には漫画と並行して作っていった曲で、最初にオケができてそれを聴いていただき、その後にネームが上がってきて、それを見て歌詞を書き出していくという流れでした。

EMA:先生自身も優しい方ですごく話しやすかったですし、先生の描く絵柄や話の構成もすごく良くて。Misumiさんがメロも歌詞も両方作ってくれたんですけど、漫画と音楽の相乗効果がちゃんと生まれた気がしています。漫画も音楽もどちらから見ても良さがあると思うし、一連の流れそのものが全部楽しくて、良い企画だったなあと思ってます。

ーー漫画と音楽を並行して作っていくというのは面白いですよね。

Misumi:はじめてやりました。でもやってみてよかったと思いますし、改めて自分は何かテーマが先にあった方が作りやすいと思いましたね。自由に作るんじゃなくて、今回のようにネームをベースにして作るとか、ある種の制約がある中で曲作りする方がやりやすいんです。

ーー前回『Hypnotize』で取材させていただいた際に「半歩だけ外に足を出した」とか「外と繋がっていきたい」といった発言がありました。DUSTCELLとしては外に意識が向いているということが確認できたのですが、この「ANTIHERO」は音楽以外のカルチャーとのコラボで、まさに外と繋がったことで生まれた楽曲ですよね。

Misumi:そうですね。外の世界と繋がっていくのが今はものすごく楽しくて、その気持ちは前作『Hypnotize』の頃より強くなってます。それとお互いにジャンプ漫画が好きなので、今回『ジャンプ+』さんからお声がかかったことが嬉しかったですし、この曲もサビのメロディにジャンプ感というか、主人公感のあるメロディラインを意識した面もあって。こういうお題がある上での物作りは、自分でも思わぬものが出てくる感覚があって楽しいですね。

関連記事