ケツメイシの音楽はなぜ普遍的であり続けるのか リスナーと同じ目線で届けるアーティストとしてのスタンス

 昨年、メジャーデビュー20周年を記念して開催された全国アリーナツアー『KTM TOUR 2022 20th Anniversary 「時代は変わるぜよ!!」どんだけ~』を大盛況のうちに終えたケツメイシから、2023年第1弾シングルが届いた。前作『スーパースター / ヨクワラエ』以来、約2年3カ月ぶり、34枚目のシングルとなる本作は、ドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』(テレビ朝日系)の主題歌「夜空を翔ける」と、NHK『みんなのうた』2022年12月~2023年1月放送の「自分が思っていたよりも」、そして『Oha!4 NEWS LIVE』(日本テレビ系)のテーマソングとしてオンエア中の「One step」の3曲をトリプルA面でリリース。また特典映像として、「自分が思っていたよりも」のMVや写真撮影時の映像、メンバーのRYOがドバイとカタールを訪れた際に撮影した『RYO散歩 in ドバイ・カタール』も収録される。ドラマ、教育、報道と、まったくジャンルの異なる番組に起用されながら、違和感なく聴かれるのは、ケツメイシの音楽が老若男女問わず誰の心にも寄り添う普遍性をもっているから。ではなぜ、彼らの音楽は普遍的であり続けるのだろうか。

 2001年にメジャーデビューして以来、音楽シーンの第一線を駆け抜けてきたケツメイシ。耳馴染みのよいトラックやメロディアスなサビ、情感豊かなラップというスタイルで、「さくら」「夏の思い出」「友よ 〜 この先もずっと…」など数々のヒット曲を世に送り出してきた。どの楽曲にも通じるのは、ヒップホップでありながらJPOPの王道とも言える歌モノの系譜をしっかりと受け継いでいること。ラップパートとボーカルパートが交互にやってくる展開の小気味良さと、全体をまとめるメロウで叙情的な音作りは、いわゆる「ヒップホップ好き」を超えて幅広いファンを獲得する要因にもなった。一方で、てらいのないストレートな言葉で綴られた歌詞も魅力で、友情や家族、恋愛と、誰にとっても身近なテーマを歌った作品が多いのも彼らならではと言えよう。

 ケツメイシはもともとRYOが中心となり、大学時代の友人らと結成。2002年リリースの『ケツノポリス2』に収録されている「ケツメの作り方」で歌われているように、当初は木造アパートの6畳間で曲作りする日々で、人気者になるまでにはさまざまな苦労もあったという。さらに、RYOにいたっては音楽活動と並行しながら薬剤師として勤務していたエピソードもあり、我々と地続きの場所にいた経験が等身大の歌詞にも生かされているのかもしれない。友だちの大切さ、愛する人への感謝など、当たり前のことを当たり前に主張する素直さや地に足のついた庶民的感覚は、キャッチーな曲にのせて歌うことでたくさんの人の胸に響くこととなった。彼らの普遍性の正体とは、そんなリスナーと同じ目線、同じ立ち位置から音楽を届けるスタンスにあり、それゆえに強い共感を生んでいるのではないだろうか。

 そして、本作『夜空を翔ける / 自分が思っていたよりも / One step』も、まさにケツメイシらしい普遍性、庶民的感覚をまとった楽曲だ。「夜空を翔ける」はこれまでにないロックバラード調が新鮮で、“花火師”親子の不思議な日常を描く高橋一生主演のドラマのストーリーともリンクする歌詞世界に注目。「自分が思っていたよりも」には、自身の弱さを認め、前向きに生きていこう歌うシンプルなメッセージを込めた。また、「One step」は朝を迎えた爽やかな気分をそのまま表現した楽曲となっており、一日のはじまりに聴くのにふさわしい。3曲とも穏やかなミディアムテンポを踏襲し、優しく語りかけるようなラップ&ボーカルが印象的。一方で迷いや不安を抱える人の背中をそっと押してくれるような、応援歌としての側面も感じられる。

ケツメイシ「夜空を翔ける」ミュージックビデオ[ドラマ「6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱」SPECIAL EDIT]

 さらに本作と同日にはLIVE DVD&Blu-ray『ケツの穴...さだまらへん』もリリース。3年ぶり8回目のアリーナツアーとなった『KTM TOUR 2022 20th Anniversary 「時代は変わるぜよ!!」どんだけ~』のさいたまスーパーアリーナ公演を中心に、初めて訪れた福島県南相馬市での公演の模様などもダイジェストで収録する。恒例のメンバーコントやMCも余すところなく詰め込み、ライブの熱気と興奮をそのまま伝えてくれる映像は見応え十分。ライブのステージングに定評のある彼らだけに、ファンならずとも見逃せない作品となっている。

 デビューから20周年をむかえ、ミュージシャンとしても円熟期にあるケツメイシ。これまでに発表した楽曲が世代を超えて愛される一方、自身が年齢を重ねることで見えてくる景色は、今後ますます彼らの音楽世界を豊かなものにしていくにちがいない。

ケツメイシ オフィシャルサイト
https://www.ketsume.com/

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