BMSGは“事務所推し”される存在に? ジャニーズ、WACK、ハロプロとの共通点を考える

 1組のアーティストやバンド、アイドルなどのファンになると、それをきっかけに好きな音楽が広がっていくことがある。例えば好きなバンドと交流がある他のアーティストの音楽を聴くようになったり、好きなアイドルと共演した別のアイドルを追いかけるようになったり。そんな中で最も「好き」の範囲が広がりやすく深みにハマりやすいのが、好きなアーティストと所属事務所が同じアーティストに興味を持つパターンだ。ひとつの事務所に所属するアーティストを丸ごと好きになる“事務所推し”の人も少なくない。

Smile Up ! Project [Johnny's Festival ~Thank you 2021 Hello 2022~]Digest

 ジャニーズの“事務所推し”になるのは、所属タレント同士の交流がきっかけになることが多いだろう。しかし一番のきっかけは、音楽やライブパフォーマンスが理由ではないだろうか。ジャニーズのコンサートは徹底的に作り込まれた、エンターテインメント性の高いステージになっている。音楽についても同様だ。一流のクリエイターを集め、上質な環境で制作が行われている。グループごとに方向性は違うものの、クオリティへのこだわりは事務所全体で共通している。これにはジャニーズ事務所の設立者であるジャニー喜多川の手腕が影響している。かつて堂本剛(KinKi Kids)はAERAのインタビューで「ジャニーさんは、クリエイターなんです」と語っていたが(※1)、それはジャニー喜多川がコンサートや舞台などで、企画、構成、演出、製作総指揮までを担当し、ジャニーズのエンタメの核となる部分を作ってきたからだ。つまり彼が作り上げたエンタメに無意識に惹かれて事務所推しになった人も実は多いのではないだろうか。

BiSH / プロミスザスター[OFFICIAL VIDEO]

 BiSHが所属することで知られるWACKも、事務所社長の渡辺淳之介の影響が強い。彼は女性アイドルとしては前代未聞のプロモーションを続けてきた。例えば彼が<つばさレコーズ>の社員だった頃にマネジメントしていたBiSの「My Ixxx」のMVは、メンバーが野外で全裸になるという内容で、賛否が分かれたものの大きな話題になり、当時無名だったBiSはこの楽曲をきっかけにアイドルシーンで頭角を現し人気を獲得した。その破天荒さは彼が後に設立したWACKのグループにも引き継がれており、BiSHも24時間連続ライブ「24 Hour Party BiSH」や、馬糞を全身に浴びる「星が瞬く夜に」MVなど、斬新なプロモーションや企画で話題をかっさらっている。2017年からは新たな合宿型の『WACK合同オーディション』が始まり、その様子はニコニコ生放送で連日中継される。このようにWACKを追っていれば、次々と面白いコンテンツが提供される。そして気づけば“事務所推し”になってしまうのだろう。しかしWACKが飛躍した一番の理由は音楽であることは忘れてはならない。WACKの所属グループの楽曲は、松隈ケンタ率いる音楽クリエイターチーム・SCRAMBLESが基本的に担当している。エモーショナルなロックサウンドとキャッチーで耳に残るメロディを作ることが得意なチームで、彼らの音楽がWACKのアーティストとしての核となっている。WACKのグループが破天荒なプロモーションをしつつもイロモノ扱いされないのは、音楽が個性的でクオリティが高いからだ。このような音楽に惹かれ、“事務所推し”になった人も多いだろう。

モーニング娘。 『恋愛レボリューション21』 (MV)

 ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)もそういった一面がある。かつてのハロプロはつんく♂が総合プロデュースをしており、ほとんどの楽曲で彼が作詞作曲をしていた。メンバーの歌唱ディレクションも担当することが多く、歌唱にもつんく♂のエッセンスが組み込まれており、それがハロプロの音楽性として確立された。今はつんく♂以外のクリエイター作詞作曲をすることも多いが、彼の音楽や存在の影響は大きく「ハロプロの楽曲」とすぐにわかる個性が生まれた。そのため“事務所推し”が多いのだろう。

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