一二三×ゆよゆっぺ『VOCALOCK MANIA』対談 意外な二人に共通するものからボカロに感じる変化まで

 “VOCAROCK”好きをLOCKするイベント『VOCALOCK MANIA』が、1月22日に大手町三井ホールにてver.0として初開催される。「普段会えないボカロPに会える即売会」「ボカロPによる楽曲解説」「好きなボカロ曲が聞けるDJタイム」の3つの軸で“VOCAROCK”好きがひとつになることのできるイベントだ。

 リアルサウンドでは、当日出演する予定のボカロP・稲葉曇×みきとP、Chinozo×和田たけあき、一二三×ゆよゆっぺの3組にお互いへの印象や楽曲制作に関する話題からイベントへの意気込みなどについて聞く対談を連続して展開。

 第3回目は、「猛独が襲う」がスマッシュヒット、和風清楚ロックを切り拓いてきた一二三と、DJ’TEKINA//SOMETHING a.k.a ゆよゆっぺ名義で『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』、『SUMMER SONIC』などへの出演経験を持ち、バンド・Naked Identity Createdby King、純文学ユニット・KATARIのメンバーでもあるマルチな才能を発揮するゆよゆっぺによる対談をお届け。「いい意味で楽曲に共通点がない」という二人による今回の対談は、初開催となる『VOCALOCK MANIA』への期待を一層膨らませるものとなった。(小町碧音)

一見共通点がない二人に共通するもの

──まずは、お互いに対する印象からうかがいたいです。

一二三:ゆよゆっぺさんとイベントでご一緒することが決まってから、これまでのことを色々と調べさせていただきました。作詞作曲はもちろん、ご自身で歌われたり、DJをされていたり、色々な楽器も弾かれたり、すごく手広く器用なクリエイターの方なのかなと思いました。

ゆよゆっぺ:実は僕もこのイベントが決まるまで一二三さんの楽曲をしっかりお聴きしたことがなくて。ここ数日でニコニコ動画、YouTubeに上がっている楽曲を聴かせていただきました。昔から和楽器を触ってこられた方なのかなと勝手に想像していたんですけど、どうでしょう。

一二三:実は全く和楽器に触れたことがないんです。和楽器を使った楽曲は、「琴の弾き方講座」みたいな動画を観たり調べたりしながら作っていましたね。その講座で覚えた弾き方をパソコンに打ち込んで再現していくんです。

──一二三さんはもともとボーカロイド曲のなかでも和風の楽曲を好んで聴かれてきたんでしょうか?

一二三:意識して和風のボカロ楽曲を吸収していったというよりは、たくさん聴いたボカロ曲のなかに和風楽曲もあったという感覚ですね。例えば、「千本桜」も聴いていたりしました。

「MV」 千本桜 WhiteFlame feat 初音ミク

──なるほど。ゆよゆっぺさんは2008年、一二三さんは2016年とお二人はボーカロイドを始めた時期が異なりますが、それぞれの楽曲に対する共通点は感じますか。

ゆよゆっぺ:いい意味で僕は思い当たらないですね。僕は割と“インターネット老人会”というか(笑)。ボカロシーンが確立されていなかった2008年にボーカロイドを知ってボカロPを始めたんですよ。最初はインターネットで音楽を作るのはどういうことかがわかってなかったですし。みんなが遊びとして楽しむことを優先して曲を作っているような感じがあって。でも、一二三さんの曲は、ちゃんとリスナー層を定めて楽曲を作っていらっしゃるのをすごく感じたので、根本が全く違うと思いましたね。

一二三:同じ“VOCAROCK”という枠で作品を作っているんですけど、いい意味で共通点がないのは、棲み分けができているからだと思います。ゆよゆっぺさんはラウドロック、僕は和風ロックと作風を確立しているので。でも、僕も最初は趣味で始めたので、共通点をあげるとすれば、楽しみながら制作を始めたことかなと感じましたね。僕はゆよゆっぺさんのようなボカロPの先輩が作り上げてきた土壌で活動させてもらっているので、すごく尊敬の気持ちがあります。

ゆよゆっぺ:なんで一二三さんはボカロを始めようと思ったんですか?

一二三:僕は高校生の頃から作詞作曲を始めたんですけど、作品を発表する場があまりなくて。最初は、自分の声を録音した曲を作ってから発表しようと思っていたんです。でも、あまり人に聴かせられる作品ではないなと思ったんですね。もともとボカロ曲が好きだったこともあって、大学生の頃に初音ミクを買ってボカロを始めました。

ゆよゆっぺ:スタートが初音ミクだったんですね。そこから今、自分のスタイルを確立することができているのは、すごく限られた人たちだと思うんですよ。僕も当初は「僕よりボカロに歌わせた方がいい作品に仕上がるんじゃないか」と思っていました。それがきっかけでボーカロイドを始めた人たちがごまんといる中でこうして今インタビューを受けているのも、ものすごい確率なんでしょうね。そうした意味でボカロがすごく尊い存在だなと思います。

一二三:たしかに。僕の場合、ボカロは高校生の頃から聴いていましたね。当時はまだお金もなくて、自分のPCを持っていなかったんですよ。今は高校生ボカロPが増えてきていて、羨ましいなと思います。

ゆよゆっぺ:その理由はテクノロジーの発達と関係しているというか。僕がボーカロイドを始めた時期は、例えば家庭にあるPCのメモリがまだ256MBとかだったんです。今じゃ信じられないじゃないですか。200GBがすごいと思える時代だったし、インターネット回線も全然速くなかった。ソフトウェアの値段も高かった時代だったんですよ。今一般的に使われている「Waves」という音楽の音を整えるソフトも僕は10万円程で買っていました。でも、同じく作家の弟は1万2,000円ぐらいで買っていて。同じものでも今はものすごく安くなっているんですよ。

一二三:Goldバンドルとかですか?

ゆよゆっぺ:まさしくそう(笑)。

一二三:僕は1万円で買ったのでびっくりです。恐らく、DTMを始める人が増えた結果、メーカーがどんどん価格を抑えていく形になっていったと思うので、やっぱり、その恩恵を受けている分、先輩方に感謝しないといけないなと思います。

──今はかかる費用は最小限にボカロPになれる土台ができあがっていますね。

ゆよゆっぺ:「千本桜」以降、DTMを始めようという人たちがめちゃめちゃ増えたと思うんですよ。僕がボカロを始めた頃は分母がすごく少なかったので、倍率で言えば何百倍も違うだろうし。ボカロを始める前は、バンド活動とかはされていたんですか?

一二三:大学時代にサークルの先輩に誘われてほんの一瞬だけバンドを組んだことはあったんです。その後、就職活動でスケジュールが合わず解散しました。

ゆよゆっぺ:僕にとっては根底にあるバンドの存在があまりにも大きかったですね。バンドを続けるのは難しいじゃないですか。せっかくメンバーを集めても、人生の分かれ道はたくさんあるので、自分の意志ではどうにもならないところがある。でも1人で音楽を作っていればそれは関係なくて。DTMでバンドサウンドも作れるのを知った時は感動しました。バンドが動けなくなった時にちょうどボカロに出会ったのは大きかったと思います。そう考えると、意外と一二三さんとの共通点は多いかもしれないですね。

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