2022年のバイラルヒットを振り返る Klang Ruler、THE SUPER FRUIT、NiziU……TikTokでの拡散方法の多様化が鍵に

 2022年、あなたの心に残ったのはどんな楽曲だっただろうか。

 去年の楽曲セールス動向を振り返ってみると、King & Prince『ツキヨミ/彩り』が年間オリコンシングルランキング唯一のミリオンセールスを記録し1位。アルバムランキングでは、Snow Man『Snow Labo. S2』が首位、なにわ男子『1st Love』が2位を獲得するなど、ジャニーズ事務所所属アーティストによる作品が圧倒的な売上を誇っていたことがわかる。そして、年間デジタルアルバムランキングに目を向けると、首位にAdo『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』、2位にAdoのオリジナルアルバム『狂言』がチャートイン。デジタル配信部門では、Adoの存在感が大きい1年であった。

 一方で、音楽との接点が多様化するなか、CDの購入や楽曲配信のダウンロードだけでなく、サブスクでの音楽配信やTikTokのような動画投稿サイトで新しい音楽に触れた方も多いのではないだろうか。さまざまな音楽チャートのなかでも、純粋にファンが聴いて共感、共有した音楽のデータを示す指標を元に作られた「Spotifyバイラルチャート」やTikTokでの人気楽曲を集計した「Billboard JAPAN TikTokチャート」を参照しながら、楽曲セールスとは違った「口コミの広がり」や「拡散投稿の多さ」の切り口で2022年の音楽シーンを振り返っていこう。

 1年を通じて印象に残っているのは、TikTok発のバズ楽曲の増加だ。たとえば、去年1月のSpotifyバイラルチャートを賑わせたimaseの「Have a nice day」。TikTokで人気に火がつき、気づいた頃にはSpotifyバイラルチャートにまでその人気が飛び火する格好となった。まるで路上ライブからメジャーデビューを果たすようなミュージシャンの典型的な成功ストーリーをTikTok発で成し遂げる姿は、令和の現代らしい痛快さだ。TikTokが音楽発信のプラットフォームとして、力強く機能し始めていることを実感させられた楽曲である。

【imase】Have a nice day(MV)

 そして、春にヒットしたKlang Rulerによる「タイミング ~Timing~」のカバーも忘れてはいけない。この楽曲のヒットが、昨年末の本家ブラックビスケッツ再結成の呼び水になったのではないだろうか。Z世代に新鮮さをもって受け入れられている90年代J-POP。Klang Rulerの「タイミング ~Timing~」は、原曲の持つ90年代っぽさを残しつつ、現代らしいローファイ風味に仕上げた絶妙なバランスの1曲で、この楽曲もTikTokでの拡散がSpotifyなどサブスクでの人気にも伝播することになった。他にTani Yuuki「もう一度」や、ねぐせ。「グッドな音楽を」など、楽曲の魅力が真っ先にTikTokユーザーに発見され、そして拡散されることで、サブスクやYouTubeなどさまざまなプラットフォームで雪だるま式に人気が出るケースも多く見受けられたのが2022年の傾向だろう。

Klang Ruler - タイミング 〜Timing〜 (Cover)

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