連載「lit!」第32回:2022年にロックの有効性を高めた新たな動き The 1975、米津玄師……国内外の象徴的な作品を辿る
最後に、2022年の日本のロックシーンを象徴するアルバムとして、ONE OK ROCKの『Luxury Disease』、そして、ELLEGARDENの約16年ぶりの新作『The End of Yesterday』の2作品について触れておきたい。
まず、ONE OK ROCKの新作『Luxury Disease』について。ONE OK ROCKは2014年以降、明確に海外進出を見据えながら、その目標に向けてストイックに、かつ大胆に自分たちのサウンドフォルムを変化させ続けてきたバンドである。そして、その長きにわたる旅路の先についに辿り着いたのが今回の新作だった。『Ambitions』(2017年)や『Eye of the Storm』(2019年)の制作を通して一度ロックを対象化することができたからこそ、今作は改めてロックの核心を豪快に射抜くことに成功した作品であり、これまでの絶え間ない試行錯誤や挑戦が美しく結実している。上述したように全世界的にロック復権の動きが加速し始めているタイミングを見据えて、同作をリリースした批評性も見事だ。
また、ELLEGARDENの新作『The End of Yesterday』は、私たちリスナーの約16年分の期待を、そして希望を真正面から引き受けながら、あの2006年の最高傑作『ELEVEN FIRE CRACKERS』を超越するための壮絶な闘いの果てに生み出された作品だった。そして言うまでもなく、ELLEGARDENの4人は、その闘いに見事に勝った。2020年代を生きる“現役のバンド”としての姿が、とても眩しい。ここではONE OK ROCKとELLEGARDENの新作にフォーカスしたが、このように、2022年、それぞれの世代のロックヒーローが決定的な大傑作を打ち出してくれたことは、この国を生きるロックリスナーにとって大きな希望となったはずだ。
今回は音源作品を軸に2022年を振り返ったが、言うまでもなく、ロック復権のムーブメントを最も豊かな実感をもって体感できるのは、ライブやフェスの場である。パンデミックにより数々のライブやフェスが中止/延期となってしまった2020年、2021年を経て、2022年はライブシーンの本格的な復活を象徴する1年になった。そして、この流れは間違いなく2023年に向けてさらに加速していくはずだ。本連載では、これからもロックシーンの最前線を追いかけ続けていく。
※1:https://realsound.jp/2022/11/post-1187705.html
連載「lit!」第26回:米津玄師、Vaundy、Måneskin、The 1975……再燃するロックシーンの最前線を象徴する5作
週替わり形式で様々なジャンルの作品をレコメンドしていく連載「lit!」。第26回となるこの記事では、「2022年、ロックの現在地…
連載「lit!」第20回:RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION……アニメ×ロックの新たな化学反応
週替わり形式で様々なジャンルの作品をレコメンドしていく連載「lit!」。第20回となるこの記事では、「2022年秋のアニメ作品を…