水曜日のカンパネラ、「エジソン」の大ヒットは予想外だった? ユニットの過渡期から飛躍を遂げた“上”を目指すマインド
軽い感じでみんなに好かれていたい(詩羽)
ーー個人的な感覚としては、やはり〈発明してえ〉というフレーズの破壊力は無視できない気がします。実際『TikTok流行語大賞2022』ミュージック部門を受賞しましたが、この曲が登場するまでこのフレーズを口に出して言ったことのある人はあまりいないと思いますし……。
ケンモチ:僕も言ったことはなかったです(笑)。
詩羽:んふふふ(笑)。
ーーそれが言葉として発せられることの意外性が快感につながっている部分は間違いなくありますよね。
ケンモチ:たしかに、それはあったかもしれないですね。
ーーこのフレーズは、「エジソンをテーマに曲を作ろう」というところから膨らませていって出てきたものなんですよね?
ケンモチ:そうです。だいたいお題ありきで作り始めるので……そのお題はDir.Fや詩羽からもらったり、自分で「このネタで書きたい」と思いついたりさまざまではあるんですが、「エジソン」というタイトルをもらって、「みんなの知ってるエジソンのストーリーに、カンパネラ流に新しく付け加えたストーリーを混ぜ合わせよう」というふうに作っていったら、ああいう歌詞になったみたいなところですね。
ーーそれを歌う詩羽さんとしては、どういう感覚なんでしょうか。描かれている人物の気持ちになって歌うのか、ストーリーテラーのように語るのかみたいなことで言うと。
詩羽:その人自身の気持ちにはなれない人物ばかりがテーマになってはいるので……。
ケンモチ:(笑)。
詩羽:自分の中の解釈と想像力で、「なりきる」という感じですかね。
ーーなるほど。ケンモチさんの独特な歌詞の世界をあれだけの説得力をもって歌える人というのは、世界広しと言えどなかなかいないと思うんですよ。
詩羽:私は歌うときにあんまり考えないタイプなので、その場の雰囲気や空気を感じつつ、自分の感覚を信じてやっているだけ、という感じなんですけど……。
ケンモチ:ライブを重ねてきたことで、だんだん表現力が上がってきている気はしますね。ライブごとに新しいニュアンスを加えたりしていってるので、リリース時よりも今のほうが感情表現とかのレベルは上がっていて。だからリアリティ……まあ「エジソン」の歌詞に関してリアリティというのもよくわからないですけど(笑)、そういうものが少しずつ身についてきている感じはします。
ーーそれで言うと、10月に公開された『THE FIRST TAKE』でのパフォーマンスも話題になりました。アレンジも含めて音源とはまた違う表現をされていましたが、詩羽さんとしてはそのときも特別な意識などはなく?
詩羽:ないですね。わりと「いつものライブの感覚でやろう」という気持ちで。まあ動きだったりは多少打ち合わせをしていた部分もあるんですけど、歌い方だったり表情とかに関しては指示も何もなかったので、やりたいようにやった感じです。
ーー手ごたえとしてはどうでした?
詩羽:手ごたえ……? 普通です。
ケンモチ:(笑)。
ーー「エジソン」のヒットによって、生活は変わりました?
詩羽:知名度がすごく上がったのは感じます。わりとTikTokでバズる曲って本当に楽曲の一部分がバズるだけで、オリジナルが知られていないパターンが多いなと客観的に見ていて思うんですけど、ちゃんと私自身のことを認識してくれる人が増えたなっていう。街で見つけられることも増えたし。
ーーすごく見つけやすそうですしね。
詩羽:そうですね、普段もわりとこのままなので。
ーーその状況は、ストレスなのか快感なのかで言うと?
詩羽:快感ではないですね(笑)。もちろんすごくうれしいことではあるんですけど、同時に悪いことも増えてくるんだなって自分がこの立場になって初めてわかったので。勝手に写真を撮られちゃったりとか、本当にプライベートのときにグイグイ来る人がいたりとかも実際にあったし……でも、「応援してます」とか温かい言葉をかけてもらうことも増えたんで、うれしいことと大変なことが同時に上がってる感じですかね。「芸能人って、大変なんだなあ」っていう。
ーー他人事みたいに(笑)。そういう状況はある種有名人の宿命でもあると思いますが、必ずしもそうした大スターみたいな状態に憧れがあるわけでもない?
詩羽:「仕事をがんばって有名になるぞ!」という気持ちはずっと持ってはいたんですけど、なんていうか……崇められるほうにはなりたくないなってずっと思ってて。どっちかというとマスコットキャラクターみたいなイメージのほうが理想に近いんですよ。ちっちゃい子が好いてくれるというのもすごくうれしいですし、大スターになりたいというよりはもっとポップな、軽い感じでみんなに好かれているほうがいいなと思いますね。
ーー人気者にはなりたいけど、偉くなりたいわけではないと。
詩羽:そうですね、対等でありたい。有名になったとしても同じ人間であることには変わりないので、「嫌なことは嫌だし、うれしいことはうれしいよ」っていうのを、ちゃんと伝えていかないといけないんだろうなと。それはこの1年ですごく思いました。