Mrs. GREEN APPLE、温かい空気の中で見せた伸びやかな姿 10周年への期待高まる『ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~』

ミセス『ゼンジン未到』ツアーファイナル

 そしてこの幸福な時間は、Mrs. GREEN APPLEが歩んできた人生、そして観客一人ひとりが歩んできた人生の上に成り立っているものだ。最後に届けられたのは、最新シングル表題曲の「Soranji」。その壮大な音像は人生の伏線回収を思わせる佇まいで、それまでに演奏された全ての楽曲が「Soranji」に繋がっていたかのようにさえ感じられた。真心の歌によって届けられる〈有り得ない程に/キリがない本当に/無駄がない程に/我らは尊い。〉といった言葉、熱量の高いバンドの演奏が観る人の心に刻まれたことだろう。大森が指揮者のような動きでバンドの音を止め、静寂に包まれるラストにみんなが息を呑む。その後、拍手とともに温かい余韻が広がった。

 いいライブだったなと感慨に耽っていると、2つのことが不意に脳裏をよぎった。一つは「初のZeppツアーを開催します!」という発表に居合わせた瞬間のことで、アリーナツアーを成功させているのにZeppツアーは未経験という特殊なバイオグラフィが、フェーズ1のスピード感を物語っているように感じられた記憶。もう一つは『Utopia』での大森のMCで、「フェーズ1大好きだし、すごく楽しかった。青春でした。でも青春は終わったわけではなくて、また新しい出会いや別れを繰り返していくことが生きていくことだと思っています」という言葉。今笑い合っているこの時間も何度目かの青春で、楽しい時間はいつか終わる。そう思うと寂しくなってしまうこともあるだろう。しかし、出会いと別れが繰り返されるならば、別れのあとにはもう一度出会いがやってくる。途方もない事実も逆から見れば希望に変わる。憂いは消えずとも、“だけど大丈夫”と笑顔で日々を受け入れるひとさじの強さ。『Unity』、そして『Soranji』を経て彼らが手に入れたのはそういったものではないだろうか。4年ぶり5枚目のオリジナルアルバムのリリースや、7年ぶりの対バンライブ、3年半ぶりのアリーナツアーも控えるなど、嬉しいニュースもいくつか発表されているように、Mrs. GREEN APPLEは2023年に結成10周年を迎える。その先でも、こうしてみんなで笑っていられる予感がした。

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