Benlou、“J-POP全盛期の歌謡曲”から受けた影響 衒いないメロディ&オルタナティブなセンスから見える新たな方向性
今年8月に「Ripple Mark」で配信デビューしたBenlouの3rdシングル「路地裏」が、12月21日に配信リリースされた。
Benlouは、ロッキング・オン主催のバンドオーディション『RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 20/21』にて優勝を果たしたアオノオトシゴのフロントマン 仙田和輝と、元The Cigavettesのリーダー&ギタリストであり、現在はギタリストやプロデューサーとして様々な現場で活躍している山本幹宗による新たなロックユニット。3作目となる今作もソングライティングを仙田、アレンジを山本が担当している。
デビュー曲「Ripple Mark」は、仙田によれば「Original Loveの『接吻』のようなメロウなイメージをもとに、海辺の情景や恋心を描いた」楽曲。そこに山本がトッド・ラングレンやポール・マッカートニーといったポップマエストロからの影響を散りばめ、シティポップやドリームポップ、ベイパーウェーブにも通じる白昼夢的なサウンドスケープに仕上げることで、Benlouならではのオリジナリティを獲得していた。
それから2カ月後の10月にリリースされた2ndシングル「ミラージュ」は、仙田曰く「カントリー調の開放的な情景をイメージしながら、遠く離れた人を想う気持ちを描いた」楽曲。前作のドリーミーかつアーバンな音像から一転、土埃の匂いを感じさせるサウンドが特徴だ。控えめだったギターオーケストレーションも、この曲では大々的にフィーチャーされており、エンディングに向かって徐々にリバーブを深くしていくなど遊び心あふれるスタジオワークからは、二人が楽しみながら音楽を作っている様子が伝わってきた。
「Ripple Mark」そして「ミラージュ」と、全く異なるタイプの楽曲をリリースし我々を煙に巻いてきたBenlou。このたびリリースされる「路地裏」も、前作、前々作のどちらとも路線が違う。言うならば、「J-POP全盛期の歌謡曲」にも通じるメロディが最大の特徴だ。
「この曲を思いついたきっかけには、やはり『J-POP全盛期の歌謡曲』の影響があります」ーーそう話すのは、作詞作曲を務めた仙田(以下、仙田と山本による括弧内の発言は、すべて筆者のメールインタビューを再構成したもの)。1996年生まれで、スピッツとQueenとZARDをフェイバリットアーティストに挙げる彼にとって、「J-POP全盛期の歌謡曲」は生まれる前か、物心がつく前から流れていた音楽である。
「もともと1980〜1990年代の邦楽をよく聴いていたのですが、近年のヒットチャートの傾向や昭和歌謡の再流行など、日常生活の中で『歌謡曲的な要素を含んだ楽曲』を耳にする機会が増えたことも、きっかけの一つだったと思います。『路地裏』は、路地というクローズドな場所にやるせなさや心のすれ違いを描いた、これまでの2曲とはいずれとも異なる路線になりました」(仙田)