新生ロックユニット Benlou、様々な世代やルーツが混ざりあう新しい音楽性 豪華アーティストも集結した渾身のデビュー曲

Benlou、名刺代わりの渾身のデビュー曲

 7月20日、仙田和輝と山本幹宗による新たなロックユニット・Benlouの始動がアナウンスされた。8月3日にはデビュー曲となる「Ripple Mark」をリリースし、公式Twitterに投稿されている様子を見ると、現在も新たな楽曲のレコーディングを進めているようだ。

 Benlouのボーカル/ソングライティングを務める仙田和輝は、アオノオトシゴというバンドのボーカル/キーボードとして2018年から活動を続けており、オーディション「RO JACK for COUNTDOWN JAPAN 20/21」で優勝。インディーズバンド音楽配信プラットフォームのリスニングチャートでも上位にランクインするなど、早くから多くの支持を集めてきた注目のアーティストだ。そんな仙田の新たな音楽プロジェクトのパートナーは、かつてThe Cigavettesのギタリストとして名を馳せ、くるり、銀杏BOYZ、BOOM BOOM SATELLITES、エレファントカシマシ、never young beachといった若手からベテランまで錚々たるロックバンドのサポートギタリストとして活躍を続け、昨年からは俳優 永嶋柊吾とのユニット・sunsiteのメンバーとしても活動中の山本幹宗(ギター/アレンジメント/プロデューサー)である。

 若手注目株の一人である仙田と、当初はThe Cigavettesとして注目を集め、今や様々なミュージシャンから愛されるプレイヤーとなった山本の組み合わせは、それ自体が非常に興味深い。だが、彼らの出自を遡っていくと、その好奇心はさらに深まっていくだろう。

 仙田が所属していたアオノオトシゴは、自らを「ポストノスタルジックバンド」と名乗る通り、どこまでも透き通るような、それでいてどこか懐かしさを感じさせるエバーグリーンなサウンドが特徴的なバンドだ。それはまさに、仙田を含む多くのメンバーがその影響を公言しているスピッツを彷彿とさせる。だが、それが単なる模倣となっていないのは、感情の柔らかな部分を直接刺激してくるような仙田の繊細かつ力強い歌声、そして自身のルーツでもある山下達郎などの80~90年代のJ-POPやAORからの影響を色濃く感じさせるノスタルジックなキーボードの音色によるところが大きいのではないだろうか。

 一方で、山本のルーツはThe Cigavettesに象徴される通り、The BeatlesやThe Beach Boysといった1960年代から現代のロックまでを幅広く参照した、様々な時代の「ロックンロール」にある。その手腕はまさに、くるりや銀杏BOYZ、エレファントカシマシといった日本のロックを代表する存在から求められるものであるわけだが、一方で仙田の音楽性との相性となるとなかなかに未知数なのではないだろうか。

Benlou – Introductory video of Benlou

 だが、実際に「Ripple Mark」を聴いてみると、いかにこの二人の音楽性が見事に融合し、魅力的な音楽が生まれているかに驚かされることだろう。作詞・作曲を仙田、編曲を山本が手掛けた本楽曲は、レイドバックなムードに満ちた、まさに夏の夜の景色をそのまま形にしたかのような仕上がりで、一度聴くだけでそのあまりに心地よい手触りに魅了される。イントロでキーボードが鳴らすコードのリッチな音色や印象的なドラムの入りなどからも分かる通り、楽曲のコアにあるのは、仙田のルーツにある80年代の日本の歌謡曲やAORだろう。アオノオトシゴのようなエバーグリーンな雰囲気は控え目であり、むしろどこか大人びたような印象すら感じさせるほどだ。バンドとプロジェクトの違いが色濃く表れていると言える。

Benlou – Ripple Mark [Official Video]

 そのように書くと、いわゆる「シティポップ」のようなサウンドを連想する方も少なくないかもしれない。実際、奇妙な言い方ではあるが、この楽曲は確実にそのポテンシャルを持っている。だが聴けば聴くほどに、この曲が安易にその方向に甘んじるのではなく、今までにないユニークな質感を持っていることが分かるはずだ。それは、山本が構築したバンドサウンド、特にギターの音色による影響が大きいだろう。時には軽快に刻み、時には堂々とした伸びやかな音色を響かせるギターサウンドは楽曲に力強いメリハリを与えており、歌詞で歌われるような「君」と過ごす浜辺での時間が単なる幻想ではなく、今、この瞬間のリアルな出来事であることを強調する。随所でアクセントとなっている、緩やかに、そして朗らかに階段を上っていくようなフレーズはまるでこの曲の主人公の感じている幸福感を分かち合い、しっかりと確かめ、共に歩んでいくかのようだ。それは、どこか靄がかったような幻想感に満ちた、現代における「シティポップ」的なサウンドとは一線を画すものであり、仙田が描いた「このまま永久に続けば良いのに」と願うような景色を、山本の鳴らすロックサウンドによってリアルな祝祭へと引き上げているのである。

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