コロナ時代に誕生した謎の覆面バンド Crab 蟹 Clubとは何者? 環境に左右されない新時代の柔軟な音楽作り

Crab 蟹 Clubとは何者?

 突如音楽シーンに現れ、ストリーミングやソーシャルメディアのみで活動を続ける謎のバンド、Crab 蟹 Club。ストーリー性のある楽曲を、まっすぐなギターロックとエモーショナルなボーカルで歌い上げる、新生アーティストだ。12月7日の2ndEP『蒐集家』のリリースを前に、ヴェールに包まれた実態に迫るべく、ギターボーカルのKumoHanaを中心にインタビュー。場所や形式に囚われない、新時代の柔軟な音楽づくりが見えてきた。(満島エリオ)

Crab 蟹 Clubとは何者?

ファフロツキーズ - Crab 蟹 Club【Music Video】

ーーバンド名にも、顔部分が蟹になったアーティスト写真にもインパクトがありますね。なぜバンド名を「Crab 蟹 Club」としたんでしょう?

KumoHana:アー写、不気味ですよね(笑)。バンド名に深い意味はなくて、生き物の名前が英語と日本語で並んだら面白いよねと。「エレファント象」とか何個か候補が出たんですけど、その中で「Crab 蟹 Club」が一番おさまりがよかったんですかね。真ん中の蟹を漢字にして海外受けを狙うぜ!みたいな感じだったと思います。でも、名前で覚えてもらえることが多くて、いい名前だなあと。

ーー一発で頭に入ってくる、いいバンド名だと思います。KumoHanaさんが最初に音楽に触れたきっかけはなんだったのでしょうか?

KumoHana:中学校の時にRADWIMPSに出会って、『絶体絶命』というアルバムに衝撃を受けてました。同時期にボーカロイドの曲も聴くようになって、ボカロPのトーマさんとかじんさん、wowakaさんの曲をよく聴いていました。それまでは全く音楽を聴いてこなかったので、こんなかっこいい音楽がこの世にあるんだってびっくりしました。

ーーCrab 蟹 Clubではギターも弾かれていますが、楽器に触れたのはいつごろでしょうか?

KumoHana:中学の時も吹奏楽部で管楽器をやっていたんですが、高校で軽音部に入ってギターボーカルを始めました。RADWIMPSを聴くようになってから、カラオケに行くようになって、それが楽しくて。僕は地声がすごく低いので、高い声を出そうと思って歌っているうちに歌うのが好きになりましたね。

ーーCrab 蟹 Clubは大学時代に組まれたバンドだそうですね。

KumoHana:大学でも軽音楽部に入って、3年までずっとコピーバンドをしていました。そこで出会ったメンバーと卒業制作的な感じで曲を作ろうと始めたのがCrab 蟹 Clubで、がっつりオリジナル曲を作り始めたのが2020年ごろ。これが予想以上に面白くて、いまも続けてるっていう状態です。

ーー曲を作ろうとしたのは、伝えたいことがあったからなのでしょうか。

KumoHana:それよりも、物語を作りたいというウェイトが大きいです。自分が想像した物語を世に出すときに、音楽という形で出すのがしっくりくるなと。

ーー物語が先というのは意外です。マンガや映画など、もともと物語がお好きだったのでしょうか?

KumoHana:中学の時に音楽と同時にマンガとかアニメにもはまりました。世の中にはこんなにたくさんの物語があって、こんなに色んな形で触れられるんだ、と衝撃を受けましたし、何より楽しかったんです。それで、どんな形でも良いからいつか自分でも物語を作ってみたいな、と思っていました。その方法が音楽だとは想像もしていませんでしたが……。

 自分の思い出や日常の不安について書いた曲もありますが、物語を描く曲と自分が思っていることを表現する曲は完全に分けて書いています。作品ごとに完結している感じです。例えば「ファフロツキーズ」はバチバチに自分の言いたいことを入れ込んでいて、逆に「アット・ザ・電脳シティ」は、自分ではなく主人公が暴れて頑張ってくれているイメージです。

ーー「ファフロツキーズ」は、皮肉や怒りのこもった楽曲に感じたのですが、KumoHanaさんの言いたいことが詰まっていると聞いて納得しました。

KumoHana:この曲を後から聞いて「怒りすぎやろ自分」と思ったんですけど(笑)。今って、音楽だけじゃなくてSNSもツールも発達して、昔より創作のハードルが下がっていると思うんです。その環境自体はいいと思うんですが、それを履き違えて安易に「自分はクリエイターだ!」って鼻にかけている人が多いことに違和感を覚えていて。作り手の想いが見えてこないというか、流行りに乗った作品を作って、手っ取り早くチヤホヤされたいんかなあ、みたいな印象を受けることもよくあって。恵まれた環境だからこそ、自分の生み出したものが世に出るっていうことに責任を持ってほしいなと。

ーーその中に〈実は俺もさ〉という1フレーズが入っているのもエッジが利いていますよね。

KumoHana:実際、自分も同じ思考なんですよ。作ったものを評価してもらって、チヤホヤされたい。だからこそ、そういうふうになっちゃいけないという自戒を込めたような曲でもあります。

ーーボカロも大好きとのことですが、ボカロや打ち込みではなく、バンドで音楽を作ることへのこだわりはありますか?

KumoHana:これは完全にタイミングかなと思います。高校の時は、ボカロはもちろんのこと、米津玄師さんのようなネット系アーティストの音楽にのめり込んでいたので、この時点で曲を作り始めていたら、打ち込みで一人で作ってみたりしていたかもしれません。でも、大学でオルタナバンドやインディーズバンド等をたくさんコピーしているうちに、バンド大好き人間になりました。曲を作り始めたのも大学で3年間コピーバンドをやってからなので、バンドサウンドにはこだわりがあります。だから、好きなのはインターネットにルーツを持つ音楽で、作る作品もそっち寄りなんですけど、作り方のルーツはバンドですね。

ーー歌詞やサウンドに影響しているアーティストを挙げるとすると?

KumoHana:サウンドに関しては、展開を詰め込みがちなところはボカロPのトーマさんにすごく影響を受けていますね。音作りやコードワークに関しては、ハヌマーン等のオルタナバンドにルーツがあると思います。歌詞のルーツはあんまりわかんないですけど、ありきたりなことでも遠回しに言う癖があって、これは独自のものなのかなと思います。

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