10-FEET、太陽が丘に刻んだ25周年の集大成 全33曲のセットリストで網羅した“ロックシーンを切り拓いてきた軌跡”
セットリストのレア曲決めのファンリクエストで1位を獲得した「OVERCOME」から中盤へ。病気や争いなど、立ち塞がる困難を簡単に解決することはできないけれど、それを糧にして一歩でも前に進むことはできるはずーーそんな10-FEETのマインドの核になっているような曲で、コロナ禍を経て人気が再燃しているようだ。さらに「ライオン」「nil?」「goes on」などへと続き、パンキッシュかつミクスチャーなサウンドに、いかに歌心あるメロディとメッセージを乗せていくかという過渡期の挑戦から生まれた楽曲たちが、中盤の流れを牽引していく。
後半に行くにつれて大きなポイントとなったのは、このライブで初披露された新曲「第ゼロ感」。映画『THE FIRST SLAM DUNK』のエンディング主題歌だ。ダンスロック的なグルーヴを秘めつつ、ギターの感触はかなりラウド。巨大なスケールで観客を踊らせるアンセムという点では、まさにこのワンマンに打ってつけの新曲で、ライブ序盤を支えてきたミクスチャーな側面と、中盤を支えたメロディアスな側面が、極点で交差して生まれたような斬新な楽曲とも言える。しかも、ライブハウスを主戦場にする10-FEETが、アニバーサリーの節目に『SLAM DUNK』というポピュラリティの高い作品とタッグを組んで生まれた楽曲が、純度の高いミクスチャーソングになったというのも面白い。それはすなわち、『SLAM DUNK』と10-FEETのスタンスが根底で共鳴し合っているからなのだろう。「ハローフィクサー」がそうだったように、地鳴りのように太陽が丘に響いた「第ゼロ感」は、今後のライブでも肝になっていきそうだ。
ライブはいよいよ終盤へ。ここまで、バンドの音楽性の変遷を辿るように展開してきたセットリストだったが、ラスト10曲はそのままフェスに持っていけそうな、必殺の代表曲メドレーが炸裂していく。「RIVER」「アンテナラスト」「蜃気楼」「シエラのように」「VIBES BY VIBES」「その向こうへ」「ヒトリセカイ」など問答無用の名曲たちが、孤独や寂しさ、無力さや絶望を抱える人に対して、肩に手を添えて「お前は一人じゃないで」と語りかけながら、優しく響く。
TAKUMAはこの日も「幸せになりたいな」とMCで話した。それはシンプルながら、とても難しいことなのかもしれない。だが、幸せになれる自信がなくなった時、あるいは幸せ自体が何なのかわからなくなった時、いつだって10-FEETのライブは、聴き手の心に小さな光を灯してくれる。それは解決策ではないし、苦しみを消し去る方法でもないけれど、時には逃げ出したり、隠れたりしながらも1日ずつ昨日の自分を超えていければ、いつか辛いことを笑って話せる日が来るはずだという、切実で愚直な想いそのものである。だからこそ、いつだって10-FEETのライブには、大袈裟でも何でもない生きる希望を感じるのだ。毎日いろんな情報が雪崩れ込み、いろんな感情が押し寄せてくるけど、「またこんな一夜を過ごしたい」という気持ちだけは素直に信じることができたこの日。その喜びが「CHERRY BLOSSOM」でたくさんのタオルとともに宙に舞い上がって、ライブは大団円を迎えた。10-FEETと2万人の観客が、ここに至るまでの25年間を肯定することができた、素敵な瞬間だ。
最後に、10-FEETというバンドを象徴する、この日唯一のロングMC(というよりコント)を振り返りたい。「goes on」まで演奏し終えたところで、実は「OVERCOME」の歌詞を間違えてしまったというTAKUMAが、神妙に「もう1回やり直したい」と自己申告。その場でNAOKI、KOUICHIとジャンケンして勝てばやり直せることになったのだが、見事にTAKUMAが2連敗を喫した。それでも諦めきれないTAKUMAが「だったら別の曲をやるのでどうや!」と言って、観客からも意見を募った結果、予定にない「Freedom」をサプライズ披露するという一連の流れがあった。
終演後、TAKUMAと話したら「本気で『OVERCOME』をやり直そうと思って提案した」そうだが、結成25周年を迎えても、いまだに3人で一緒にいると何が起こるかわからないようだ。そんな自由な空気感を、素直に楽しみながらライブしているのがとても10-FEETらしかったし、それは『京都大作戦』でよく発生する“無茶振り”を見ていても感じること。音楽的な自由度はもちろん、そうしたライブを楽しむ少年のような純粋さこそ10-FEETのチャームであり、多くのバンドマンから信頼を寄せられ続けている理由だろう。NAOKIが「10-FEETだけで、この景色を作れると思っていなかった」とMCで話していたが、このライブが成功したのは偶然でも何でもなく、10-FEETが25年間音楽と向き合ってきた姿勢がとにかくまっすぐで誠実なものだったから、ということに尽きるのだ。
来年、10-FEETは新たなツアーに乗り出し、またこの場所で『京都大作戦』も開催される。10-FEETと太陽が丘、そして3人の音楽を信じるたくさんのロックファンが紡ぐストーリーは、25周年の“その向こうへ”と続いていく。
■セットリスト
01. DO YOU LIKE...?
02. 4REST
03. STONE COLD BREAK
04. LITTLE MORE THAN BEFORE
05. super stomper
06. hammer ska
07. JUNGLES
08. チャイニーズ・ヒーロー
09. GOODBYE TO ROMANCE
10. CHOICE
11. アオ
12. aRIVAL
13. OVERCOME
14. ライオン
15. nil?
16. back to the sunset
17. goes on with 大阪籠球会
18. Freedom
19. ハローフィクサー
20. 2%
21. 風
22. SHOES
23. 第ゼロ感
24. 求め合う日々
25. RIVER
26. アンテナラスト
27. 蜃気楼
28. quiet
29. シエラのように
30. VIBES BY VIBES
31. その向こうへ
32. ヒトリセカイ
33. CHERRY BLOSSOM
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