ano、元・相対性理論 真部脩一とのタッグの必然性 『チェンソーマン』EDテーマ「ちゅ、多様性。」で見せた痛快なポップセンス

 anoのメジャー3rdデジタルシングル「ちゅ、多様性。」には卒倒するかと思った。なぜなら、予備知識なしで聴いて、かつての相対性理論を連想していたら、元・相対性理論の真部脩一が書いた楽曲だったからだ。

 アニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系)のエンディング・テーマは、毎週アーティストと楽曲が変わるのだが、2022年11月23日に放送された第7話でエンディング・テーマを担当していたのはano、つまり「あのちゃん」だ。

 そのanoによる「ちゅ、多様性。」は、相対性理論の「LOVEずっきゅん」を彷彿とさせるキャッチーさ、「チャイナアドバイス」をイメージさせる世界観。特に後者は、10年以上を経て、今もなおTikTokで広がり続けているミームのような楽曲だ。それゆえに今も耳にすることがあり、安易に「ちゅ、多様性。」に相対性理論を連想していたら、本当に真部の作品だったというわけだ。

 作詞はあのと真部によるもので、作曲は真部、編曲はTAKU INOUE。TAKU INOUEは、anoの2020年の1stデジタルシングル「デリート」から関わっている。

 「ちゅ、多様性。」は、真部によるメロディに中毒性があることは疑いようがない。サビだけではなく、AメロやBメロまで強度が高いのだ。さらにバンド演奏のラウドさが、楽曲とボーカルのキュートさを浮き上がらせている。この点は「LOVEずっきゅん」と同じ構造だ。

 そして、anoのボーカルが言うまでもなく魅力的。舌足らずのようでいて、音程は正しく、情感を絶妙にコントロールさせてみせ、サビで一気に疾走感を増していく。ボーカリストとしてのanoは過小評価されすぎだと感じるほどだ。

 あのと真部の共作による歌詞は、〈我愛你〉〈Oh, I need you〉〈お生憎様〉と、冒頭からオ音の頭韻を踏んでおり、歌詞の随所でこうした韻が踏まれている。

 極めつけは、〈Get on chu!〉という歌詞が「ゲロチュー」と歌われている点だろう。anoらしい強烈なインパクトのフックだ。そもそも『チェンソーマン』第7話のタイトルは「キスの味」。主人公のデンジは、酔った先輩の姫野にキスをされて恍惚としたのも束の間、そのまま吐瀉物を口に流しこまれてしまう。そしてエンディングでは「ちゅ、多様性。」が流れ、「ゲロチュー」と歌われるわけだ。なお、エンディングムービーでは姫野がデンジに流しこむ吐瀉物が虹色になっていた。

『チェンソーマン』第7話ノンクレジットエンディング / CHAINSAW MAN #7 Ending│ano 「ちゅ、多様性。」

 「ちゅ、多様性。」のジャケットにも注目すべきだろう。anoが火花を吹くチェンソーを振り回しているのだから。そして、anoが着ているのはチャイナ服。まさに「チャイナアドバイス」の世界だ。

ano「ちゅ、多様性。」Music Video

 anoが今回、楽曲もアートワークもポップに振り切ったのには驚いた。10月にリリースされたanoのメジャー2ndデジタルシングル「普変」は、クリープハイプの尾崎世界観が作詞作曲したもので、「普通」になじめない「変」とされる側を描いたロックナンバーだった。ギターにクリープハイプの小川幸慈、ベースにNUMBER GIRLの中尾憲太郎を迎えた豪華布陣でもあった。

ano「普変」MUSIC VIDEO

 それに対して「ちゅ、多様性。」は、ともすれば「アイドルっぽい」と言われかねないだろう。ただ、今回anoと真部のコラボレーションが実現してふと思いだしたのは、2017年に開催された『スカムパーク』というイベントのことだった。そのイベントには戸川純 with Vampilliaが出演しており、戸川はVampilliaのメンバーである真部をかっこいいとしきりにほめていたのだ。

 今や連日のようにテレビで見る「あのちゃん」だが、往年の戸川のように大衆性と音楽性の両方を獲得するのではないか。そんな期待が高まるのがanoの「ちゅ、多様性。」なのだ。

ano「ちゅ、多様性。」

■リリース情報
ano「ちゅ、多様性。」
配信:TF.lnk.to/ano_ChuTayousei

Official Web ( https://ano-official.com/ )
Twitter @aNo2mass ( https://twitter.com/ano2mass?lang=ja )
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TikTok @anovamos ( https://www.tiktok.com/@anovamos?lang=ja-JP )

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