『SPY×FAMILY』『ダンス・ダンス・ダンスール』……さらなるヒット拡大が期待される、話題のアニメと主題歌

　3月から4月にかけて始まっている今年春の新アニメ。今クールも多くの注目作が名を連ねている。日本のアニメには世界規模で人気の作品も多数あるが、作品を通じて、それを彩る主題歌も広い知名度を得ることがある。今回は、今期の話題作の中でも、世界に注目される可能性を秘めたアニメやその主題歌を取り上げたい。

　『少年ジャンプ+』最大のヒット作で海外からも支持を集め、アニメの制作決定の知らせから期待が高まっていたのが『SPY×FAMILY』（テレビ東京ほか）だ。物語の舞台は冷戦中の架空の世界。敏腕スパイで“黄昏”のコードネームを持つロイド・フォージャーが任務の一環で家族を作ることになり、超能力者の娘 アーニャ・フォージャーと殺し屋の妻 ヨル・フォージャーとともに、互いに素性を隠して生活しながら任務に挑むホームコメディとなっている。スリリングなアクションシーンや、多くのハプニングに見舞われる家族、その3人が紡ぐときに温かい家族劇とのギャップなどが見どころで、ストーリーの緊張感を和らげるアーニャをはじめとしたユーモア溢れるキャラクター含め、多くの魅力が詰まった作品だ。

　そんな作品の主題歌を務めるのは、Official髭男dismと星野源。現代のJ-POP界を代表する布陣である。オープニングのOfficial髭男dism「ミックスナッツ」は、イントロからサイレンを思わせる音と迫力のあるピアノで、ハプニング感と颯爽としたアクションを想像させリスナーの心を掴む。スムーズにAメロに展開し、〈袋に詰められたナッツのような世間では〉とキャッチーな歌詞が続く。導入だけでリスナーを虜にする本曲は、アーニャの好物であるピーナッツ／ナッツにかけた歌詞や、ブラスが華やかなアップテンポでダンサブルなサウンド、Bメロの細かな譜割りから成るリズミックな歌い口など、次から次へ気持ちよさが連鎖する。〈テーブルを囲み手を合わすその時さえ　ありのままでは居られないまま〉というサビ直前の歌詞は、まさに互いの素性を明かさないまま家族として生活するキャラクターたちそのもの。サウンドや展開、歌詞、どこをとっても魅力溢れる楽曲は、まさに作品の魅力を詰め込んだ主題歌だ。『東京リベンジャーズ』（テレビ東京系）のオープニング主題歌「Cry Baby」も話題となったOfficial髭男dismが、アニメ作品と織り成す豊かな手腕をさらに強調させた。

　エンディングテーマは星野源「喜劇」。ドラムとシンセによる穏やかなネオソウルのトラックに、星野の語るような自然体の歌声が乗る楽曲。〈争い合って　壊れかかった　このお茶目な星で〉をはじめとする歌詞は、諦めと喜びをフラットに紡ぎ、家族として共に過ごすフォージャー家を温かく描いているようにも感じる。これまでも家族や愛を様々な形で描いてきた星野が、疑似家族、素性を隠すなど作品の要素と絡み合うことで、さらに表現の幅を拡張させたようだ。

　『アオアシ』（NHK Eテレ）もこの4月よりアニメがスタート。サッカーを題材とした名作は数多くあるが、『アオアシ』は現在のサッカー漫画の代表格となる作品だ。海外サッカー専門誌『footballista』ともコラボしており、漫画ファンのみならず、サッカー界からも注目を集めている。

　弱小サッカー部の圧倒的エース、青井葦人が世界を目指す監督に出会い、夢への第一歩を踏み出す『アオアシ』。同作のオープニングを担当するのは[Alexandros]で、情熱滾る川上洋平（Vo/Gt）のボーカルと、ヒリヒリとしたギターサウンドからなるロックチューン「無心拍数」は、思わぬチャンスに燃え上がる葦人の熱意を描いたかのよう。サビに向けて一旦落ち着くBメロでも、不規則なスネアやタムが抑えきれない衝動を物語る。サビでの歌声のレンジの広さも聴きどころで、シンガロングも含めてライブでの新たなキラーチューンになることだろう。

　エンディングテーマはRin音「Blue Diary」。「snow jam」でバイラルヒットを生んだRin音による楽曲は、青春の一時を淡く切り取るようなラップと、サビでの優しくメロディアスな旋律が組み合わさった、ポップスとヒップホップの融合が感じられるナンバーだ。アニメで描かれる青春を軸にその熱さと儚さを切り取った2曲は、作品とともにサッカーファンからも人気を得るはずだ。