eill、ライブハウスツアーで縮めたファンとの距離 等身大の姿で心に届けたメッセージ
全国9カ所で開催されたeillのライブハウスツアー『eill “Solo Trip -9-” LIVE TOUR 2022』。ファイナルの東京公演が、11月20日に渋谷WWW Xにて行われた。
今回のツアーは、訪れてくれたファンとの距離を縮めることがコンセプトだったそう。そんなコンセプトをなぞるように、会場にはまるでeillの部屋を再現したような仕掛けが至るところに見られた。入口の近くにはeillの写真が飾られ、ステージには絨毯が敷かれている。椅子やマイクスタンドにはツアーグッズのタオルやTシャツが掛けられており、脇にはツアーで各地を廻った際に集めたというアイテムが並んでいたのも面白い。開演時刻を迎えると「いらっしゃい！eillのお家へ！」という影ナレーションが飛び出し、ライブは和やかなムードで幕を開けた。
1曲目は、〈はじまりは／圧倒的素敵なもの〉という歌詞からもスタートに相応しい「MAKUAKE」。ダンサンブルな曲調で観客を一気に魅了した後は、「palette」と「プレロマンス」を爽やかに歌い上げる。なお、今回のステージはeillにサポートメンバー2人を加えた3名という、普段よりも小規模な編成で行われていたのも特徴。そんなシンプルな編成だからこそ、改めてeillの歌唱力の高さがうかがえた。例えば、「((FULLMOON))」では妖艶な歌声でムーディーな雰囲気をつくりだし、「Perfect love」では吐息交じりの歌声で切ない曲の世界観を表現する。曲によってさまざまな表情を見せる彼女の歌声が、よりストレートに心に響いてくるようだった。
前半パートを終えたところで、ライブは「リクエストコーナー」へ。観客が一斉に聴きたい曲を叫び、その中からステージ上にいるeillたちが聞こえたものを演奏するという企画だ。とはいえ、満員のWWW Xではなかなか聞き取るのが難しかったようで、1曲目の「special girl」を受けた後は挙手制でのリクエストにチェンジ。2曲目に選ばれた「HAPPY BIRTHDAY 2 ME」では、オリジナル音源のベースラインを模して観客が手を叩くという特別な演出も加えられた。その後もリクエストは続き、「hikari」、「HARU」、「FUTURE WAVE」を披露。演奏前は「キーが分からない！」「歌詞なんだっけ……」などと嘆きつつも、いざ始めるとバッチリ決めてくるeillのパフォーマンスには、ファンの気持ちに精一杯応えようとする思いやりも感じられる。この日だけという特別感に加えて、今回のライブが観客とともに作り上げているものなのだと強く感じられた時間だった。
リクエストコーナーを終えてスタートした後半戦は、アコースティックアレンジの「20」でスタート。観客と近い距離で会話をした後だからか、前半より心なしかeillもリラックスして歌っているように見える。そんな柔らかな空気感に応えるように、曲中では自然と観客によるクラップも沸き起こっていた。
