中島美嘉、「Wish」で描いたアニメ『ベルセルク』と原作者 三浦建太郎への想い ストーリーと重なる切実なバラードに
30年以上に渡って連載され、マンガ発行部数5,500万部以上の実績を誇る日本のダークファンタジーの金字塔『ベルセルク』。その物語のはじまりである「黄金時代」を描いた映画三部作のメモリアル・エディションとして、10月よりTVシリーズ『ベルセルク 黄金時代篇MEMORIAL EDITION』(TOKYO MXほか)の放送が開始されている。そのエンディングテーマ「Wish」を手がけたのが中島美嘉だ。
中島は2001年に「STARS」でデビュー。デビューシングルにしてオリコン初登場3位、60万枚を超えるヒットという鮮烈な登場となった。儚さと、強く訴えかけるような独特の質感のある歌声で、デビュー時から楽曲の世界観を確立してきた中島。その歌声は特にバラードとの相性がよく、「WILL」、「愛してる」、「雪の華」などの名作を世に放ち続けてきた。そんな中島美嘉が、今回のアニメのために詞を書き下ろしたのが「Wish」だ。
今回アニメ化された『ベルセルク』の「黄金時代」と呼ばれるエピソードは、大剣を手に一人孤独に生きてきた戦士・ガッツと、傭兵団「鷹の団」団長・グリフィスの出会いから物語が始まる。一匹狼だったガッツに「お前が欲しい」と決闘を持ちかけ、勝負を制して鷹の団に引き入れたグリフィス。最初はグリフィスに反発していたが、圧倒的なカリスマ性を持ち、夢に邁進するグリフィスをかげがえのないものに感じ始めるガッツ。2人はやがて、互いが唯一無二の存在になっていく。そこに、グリフィスに心酔し、ガッツに敵対心を向ける女千人長・キャスカや、躍進していく鷹の団の状況を交えて物語は進んでいく。
誰しも、誰かに憧れたことが一度や二度あるだろう。だが憧れというものは、長く持ち続けていると、あるいはその想いが強すぎると、往々にして変容していくものだ。ただ憧れて、見つめていられればよかったはずが、その人に並び立ちたい、自分のものにしたい、あるいはその人のものになりたい――という風に、より欲深いものへと変わっていく。いち傭兵団だった鷹の団が功名を立てて成りあがる中で、ガッツのグリフィスへの感情も変化を見せ始める。
「Wish」は、そんな絡み合った感情の果てに訪れる決別と、それでも断ち切れない相手に対する切実な想いが描かれたバラードだ。ネタバレになってしまうので詳しく触れるのは避けるが、先の展開を知る人がこの曲を聴けば、〈まだ続くと思ってた道で/手を繋いでたはずなのに/突然はぐれてしまったその影を/探し続けてる〉という歌詞にグリフィスの想いを、〈最初に誰が傷付けたの?/最後に誰か温めたの?/あなたが1人で感じたその全てを/わかり合えたなら〉というフレーズにはキャスカの影を見るかもしれない。
そしてこの詞は、中島美嘉が原作ストーリーのみならず、原作者・三浦建太郎やファンへの気持ちも汲み取りながら書いたものだという。2021年5月の三浦建太郎の急逝は、『ベルセルク』を長きに渡り愛し、続きを待望してきた日本のみならず世界のファンに衝撃を与えた。この曲は、作中のキャラクターの感情に加え、唐突な悲しみに包まれたファンの想いを代弁しているようでもある。〈何もかも残したまま何処に行ってしまったの?〉〈もう2度と本当にありがとうも言えないの?〉というフレーズには特に気持ちを重ねる読者も多いのではないだろうか。