KREVA、『908 FESTIVAL』ならではのユニークな試み ラップありコントありの“緩急自在なステージ”はどう生まれたのか?

『908 FESTIVAL』のユニークな試み

三浦大知に絶対の信頼を置く理由

ーー三浦大知さんについても改めて聞かせてください。三浦大知さんとKREVAさんは活動全般においてすごく深い関係になってると思いますが、特に『908 FESTIVAL』という場所において欠くことのできないピースになったのは、どういう理由だったんでしょうか?

KREVA:最初はもちろん「三浦大知を世に広めたい」みたいな気持ちもあったんですけど、今はもうその必要もなくて。一番の理由は、今言ったみたいなエンターテインメントを一緒にできる関係ということですね。「これをやったら面白くない?」って言った時に、大ちゃんしかできないちょうどいい感じでやってくれる。コントに対して、がっついてくるでもないし、恥ずかしそうにやるでもないし、完全にやり切ってるんだけどちゃんと三浦大知としてそこにいてくれることができる人だから、ものすごく貴重なんですよね。過去の『908 FESTIVAL』のコントだったら、牛乳瓶の底みたいなメガネをかけたつんつるてんの学生みたいなキャラを投げると、こっちの想像以上にやってくれるし。最終的にめちゃくちゃ歌が上手くて、めちゃくちゃ踊りが上手いから、それが全部オチになっちゃうパワーがある。細かく話し合ってるわけじゃないけど、一個のエンターテインメントを作るビジョンが似てるのか、とにかく安心していろんなことを任せられるところがデカいですね。

ーー三浦大知さんの才能がそういうところにあると気づいたきっかけって、何だったんですか?

KREVA:一緒にやった何回目かのライブの時に、急にそういうことができる三浦大知がいるっていうことに気づいたんですよ。まだ『908 FESTIVAL』じゃなくて『意味深』(2009年)っていうライブをやってた当時だったかもしれないけど、ライブでハケていく時に、ふざけながら帰っていく大ちゃんを見て、「イケる」って気づきましたね。

ーー『908 FESTIVAL』のメインはKREVAさん自身のライブではあるんですが、ワンマンの時と感覚の違いもあるんじゃないかと思います。

KREVA:全然違いますね。自分がメインだという気持ちよりも、『908 FESTIVAL』という一個の大きなショーを作ってる感覚があるから。もちろん大変さはありますよ。でも、それが一つに繋がった時に出てくる満足感は、一人で全部を引き受けてじっくりたっぷりやるライブでは味わえないものがあります。

ーー今おっしゃった「一つの大きなショーを作り上げる」という形で『908 FESTIVAL』をやろうと思ったのは最初からだったんですか?

KREVA:最初からではないですね。最初は「フェスやろうよ」って思いつきで言ってたら、本当になっちゃったみたいな感じだったので、いわゆるフェスのパロディみたいな感じもあったと思います。転換用の「Next Artist is KREVA!」みたいな映像をわざと作ったりして、そういう面白さでやったんだけど、だんだん一個のショーを作り上げていくような形になっていきました。やっぱり自分が「ライミング講座」をやり始めたのが、コントらしいコントになっていった分岐点でもあると思います。「エデュテインメント」っていうのも、ヒップホップに教えてもらった言葉で。KRS-Oneが提唱しているんですけど、エンターテインメントしながらエデュケーションするということで、それが好きなんだなって心底思うんです。教える時は本気で教える。それをみんなでやったら面白いんじゃないかと思ったのがきっかけだったんじゃないかと。

ーー振り返れば、最初に「ライミング講座」をやった時は「韻を踏むっていうのはこういうことなんだ」みたいな基本的なことを教えていましたからね。その頃と比べると、今の日本の若いリスナーのラップに対するリテラシーは上がったんじゃないかなと。

KREVA:そう思います。ラップ全体の広まりもデカいと思うし、言わないと面白みが伝わらないということも、みんなちょっとずつ分かってきた。そこじゃないですかね。

これからの『908 FESTIVAL』に向けた意欲

ーー『908 FESTIVAL』はKREBand(白根佳尚(Dr)、柿崎洋一郎(Key)、大神田智彦(Ba)、熊井吾郎(MPC / DJ)、近田潔人(Gt)、SONOMI(Cho / Key))がハウスバンドとして演奏していますよね。そこへの信頼感も大きいと思いますが、そのあたりはどうでしょうか。

KREVA:自分がバンドのメンバーになって、最初からちゃんとコントロールしてるっていうのがデカいと思います。バンドの誰かがアレンジして、それに乗っかるんじゃなくて、最初から「こうしてくれ」と言ってやってるというか。

ーーKREVAさん自身がバンドをコントロールできるようになったというのは、どういうポイントが大きかったんでしょうか。

KREVA:いろんな人とやるようになって、どういうことができて、どういうことができないかとか、「こういうプレイがいいプレイなんだ」というジャッジができるようになってきたのがあって。あとは単純な話、楽譜を読めるようになってきたとか、こういう風に自分で書いて伝えればやってくれるんだとか、そういうことができるようになってきたというのがデカいと思います。

ーーそれを経て楽器の演奏だけじゃなく、例えば「このタイミングでコントから曲に入る」みたいな間合いの空気感も共有している感じがします。

KREVA:入り方のタイミングとかは、よくキャッチしてくれると思いますね。リハでも、そこの練習や準備は丁寧にやってます。藤井さんとか大ちゃんがいない状態でも、きっかけのセリフのどのあたりから演奏を走らせるとか、そういう細かいところまで練習して。あとは大ちゃんにも「こういう流れになったらこうしよう」というのを伝えるとすごく上手にやってくれるので。

ーー久保田利伸さん、KREVAさん、三浦大知さんと並ぶと、世代はそれぞれ違っていますが、すごく象徴的な3人という感じもします。ジャンルやシーンも違うけれど、どこか同じ感覚を持っているような気もして。それってどういうものだと思いますか?

KREVA:やっぱり、1人で前に立ってマイクを持ってる人たち、スタンドマイクで歌ってる人じゃなくて、マイクを持って動いて歌ってる人たちなんだと思います。それで言うと、さらに一回り上の世代のマーチン(鈴木雅之)さんが一緒にいた時もありましたからね。マーチンさんも一緒にエンターテインできる人なんですよ。面白いし、チャーミングな人だし、いろんなことをやってくれる。葉加瀬太郎さんも畑が全然違うけど、一個の舞台を面白くするためだったら何でもやる人で。そういうタイプの音楽のスキルがある人がいてくれるとすごく楽しいですね。

ーーでは最後に、この先の『908 FESTIVAL』に向けて、どんな展望がありますか?

KREVA:今はもっといろんな音楽を聴かないといけないなと思ってますね。もっと若い世代で、同じようにお互いのことを良いと思えて、一緒にステージを作れるような人がいたら面白いなと思います。そういうのを見つけていこうとしないと、どんどん自分の好きな狭い世界だけでやることになっちゃう。もちろんそれでも楽しいだろうけど、新しい人ともやってみたいですね。そこと上手くシンクロしていければ、さらに『908 FESTIVAL』も広がっていくと思うから、無理せず視野を広げていきたいなと思います。

■配信情報
『908 FESTIVAL 2022』日本武道館
出演:KREVA 三浦大知 久保田利伸
藤井隆 / 椿鬼奴 / 後藤輝基(フットボールアワー) from SLENDERIE RECORD
配信メディア:PIA LIVE STREAM
配信日時:11月11日(金)開場 20:58 / 開演 21:08
配信期間:11月11日(金)21:08〜11月14日(月)9:08
チケット代:5,908円(tax in)
チケット販売期間:〜11月14日(月)6:08
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KREVA 公式HP

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