ポップしなないで、メジャーデビュー決定で意気揚々と新章へ “セカイ系バンド”が踏み出した次なるステージ

ポしな、ワンマン『アコガレ』レポ

 いよいよライブも終盤戦へ突入。かわむらは、ポップしなないでは“僕と君 vs 世界”という構図を描く“セカイ系”を標榜して活動し続けてきたことを振り返った。時には、そうした路線を継続することに迷い、葛藤することもあったというが、それでも自分と自分の大切な人のために音楽を作りたいという思いを新たに発見したという。そして、そのタイミングでアニメ『農民関連のスキルばっか上げてたら何故か強くなった。』のタイアップ曲として制作したのが、この日ライブ初披露となった新曲「ローリンソウル・ハッピーデイズ」だ。歌詞の中に織り込まれた〈僕〉と〈君〉の物語が、音源で聴いた時よりも深く響いてきた。2人とサポートメンバーの気迫が込められたパワフルな演奏も凄まじく、この日一番のハイライトとも言えるパフォーマンスになっていた。

 カントリーの跳ねるリズムが心地よい「初夏それから」を経て、かめがいは今日のライブを振り返りながら、「あなたの心に少しは触れられたのではないかと思っていますし、そうであったらと願っています」と語った。満員のフロアと向き合いながら、それでも一人ひとりの観客と目を合わせるように語るかめがいの姿は、彼女のポップミュージシャンとしての誠実なスタンスを表していたと思う。本編ラストに披露された「夢見る熱帯夜」における彼女の超ロングトーンがもたらす深い余韻が、いつまでも消えることはなかった。

 アンコールを受けて再びステージに登場したかめがいは、「みんなの目を見てお伝えしたいことがありまして」と前置きした上で、これまでポップしなないでが歩んできた歴史について振り返った。その神妙な語り口にフロアの緊張感が高まる中、「私たち、ポップしなないでは……、2023年2月22日をもちまして……、日本コロムビアよりメジャーデビューいたします!」と、とびきりハッピーな報せを高らかに叫び届けた。この日一番大きな拍手がフロアから巻き起こる中、かわむらは「メジャーデビューしても本質は何も変わらない」「これからも、皆さんと一緒に進んでいければいいなと思います」と語った。

 アンコール1曲目は、「言うとおり、神さま」。サビにおけるステージとフロアの一体感、2人の演奏のテンションが凄まじかった。続けて、ミラーボールの光に彩られたシックなダンスチューン「丑三キャットウォーク」へ。まるで全ての力を出し切るような渾身の歌と演奏を届けた後、かわむらの「メジャーデビューという節目なので、大事な曲を最後にやって終わろうかなと」という言葉と共にダブルアンコールへ突入。この日のライブは、初期から大切に磨き続けてきた代表曲「エレ樫」で、美しい大団円を迎えた。

 事前に、かめがいがTwitterで告知していたように、たしかに今回の初のCLUB QUATTROワンマン公演は、2人にとって、そして2人を応援し続けてきたファンにとって、特別な一夜となった。そしてこれから2人は、メジャーデビューを一つのきっかけとして、より広い世界へと飛び出し、その先には今よりも多くの新しいリスナーとの出会いが待っているだろう。ここから始まるポップしなないでの新章を、これからもしっかりと追いかけていきたい。

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