ポップしなないで、メジャーデビュー決定で意気揚々と新章へ “セカイ系バンド”が踏み出した次なるステージ

ポしな、ワンマン『アコガレ』レポ

 10月23日、ポップしなないでのワンマンライブ『アコガレ』が渋谷CLUB QUATTROで開催された。その数日前の17日に、かめがいあやこ(Key/Vo)はTwitterで「ワンマンなんですが、少し無理しても会いに来て欲しいな、なんて思ってます。そういえば昔見たことあるな、とか、最近知ったけど悪くないな、とか、ライブって行ったことなかったな、とか。そんな人たちにも届いて、会いに来てくれたらなーなんて、思ってます。特別な夜になるので。」と投稿していた。多くのファンは、この日に必ず何かが起きることを確信していたはずで、実際に本記事の後半で後述するように、2人とファンにとって特別な一夜となった。

 オープニングナンバーは、今年の夏にリリースされた新曲の一つ「UFOを呼ぶダンス」だ。クールなAメロと、ポップに弾けるサビのコントラストが鮮やかで、ピンク色、黄色、緑色の照明演出と相まって、楽曲が持つカラフルな世界観が会場全体に広がっていく。ギターとベースを迎えた4人編成によるパワフルなバンドサウンドも痛快だ。続けて披露された「どうすんの?」におけるモダンなサウンドによる上質な響きも素晴らしかった。

 かめがいの「自由に、自分らしく楽しんでお過ごしください」という簡単な挨拶を経て、今年の6月〜7月にかけて『みんなのうた』(NHK総合)で放送された新たな代表曲「月の踊り子」が披露される。リアルとファンタジーを往来するような楽曲の世界が、サビにおけるかめがいの伸びやかな歌声と共に会場を所狭しと広がっていく。そして、かめがいの「本日お集まりのゾンビの皆さま、間もなく電車が参ります。地獄、地獄快速……」というアナウンスに導かれて「地獄快速」へ。気怠さを纏ったAメロとそれを吹き飛ばすポップなサビのメロディが痛快で、その勢いのままに突入した「支離滅裂に愛し愛されようじゃないか」における、ラップのように次々と言葉が畳み掛けられていく展開も圧巻だった。観客からの手拍子を受けて、徐々に力強さを増していくかわむら(Dr/Cho)のドラミングにもグッときた。

 この日初めてのMCパートでは、眼鏡を変えた話(かめがい)や、堅パンが堅すぎて牛乳に浸しながら食べていたら3時間かかった話(かわむら)が届けられる。まるで、気心の知れた友人と過ごしているような時間が流れる中、かわむらは満員のフロアを見渡しながら、「1回目のMCはこんな感じかな」「嬉しいですよ、こんな話をしてしまうくらいね」と本音を漏らした。アットホームな空気感の中に、2人が、この日集まったファンに抱く深い感謝の想いがじんわりと伝わってきた。

 ここで2人編成に移行して、「Creation」と「魔法使いのマキちゃん」を披露。ボーカルとキーボード、ドラムのみのミニマムな編成とは思えないほどの言葉の情報量と、万華鏡のように次々と移り変わる楽曲展開は凄まじく、2人が長年にわたり磨き上げてきた唯一無二のバンドアンサンブルの奥行きを堪能できる時間が続いていく。また、かめがいが、ストーリーテラーのように歌い届けた「SG」では、その楽曲の物語に引き込まれた。

 一つ前のMCパートでは軽快なやり取りを見せた2人だったが、2度目のMCパートで、かわむらは、自分たちにとってCLUB QUATTROで行うワンマンライブがいかに特別なものであるかを熱く語った。そして、この日を満員の観客と迎えられたことの喜びと感謝を丁寧に伝えた。その真摯な言葉に応えるようにして、フロアから大きな拍手が鳴り渡る。

 「私たちは、CLUB QUATTROに、皆さんを救いに来たんですよ!」というかめがいの叫びと共に幕を開けた「救われ升」。フロアからの手拍子を受けて彼女のポエトリーリーディングのような歌がどんどん熱を帯びていき、サビではたくさんの観客の手が挙がっていく。また、不穏で怪しげなエレクトロサウンドと打ち込みのリズムトラックを交えた「Sunset」も素晴らしく、そのディープな楽曲世界に思わず息を呑んだ。

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