ずっと真夜中でいいのに。「残機」が彩る『チェンソーマン』の熾烈なストーリー ACAね流に表現された“デンジの苦悩と幸せ”

ずとまよが彩る『チェンソーマン』のストーリー

 10月11日、大きな注目と期待を受ける形で、アニメ『チェンソーマン』(テレビ東京系)の放送が始まった。今作を手掛けるのは、これまで『呪術廻戦』などの作品を通して世界中の視聴者を魅了し続けてきたMAPPA。エンドロールのラストに「制作・製作  MAPPA」というクレジットが映し出されていることが示しているように、今作はMAPPAが全てのリスクを背負う単独出資の形で企画がスタートしている。「何としてもMAPPAが映像化したいと、心の底から願っていました。 『チェンソーマン』の映像化を待ち侘びた世界中のファンの皆様に、スタジオの威信をかけて最高のアニメーションをお届けしたいと思います」(※1)というアニメ公式サイトに掲載されているスタジオのコメントにも、今回のアニメ化への並々ならぬ覚悟が滲んでいる。実際に第1話の放送後には、その卓越したアニメ表現のクオリティがSNSで大きな話題となった。

 また、合わせて大きな注目を集めているのが、今作を彩る複数の楽曲たちだ。米津玄師がオープニング主題歌「KICK BACK」、マキシマム ザ ホルモンが挿入歌「刃渡り2億センチ」、そして計12組のアーティストが週替わりでエンディングテーマを担当する、という型破りな座組みが実現している。新進気鋭の漫画家・藤本タツキの代表作である原作『チェンソーマン』は、2018年の連載開始当初から各界隈のクリエイターたちの熱狂的な支持を得ており、音楽業界においても『チェンソーマン』とのコラボレーションを切望しているアーティストは非常に多い。アニメ公式サイトには、今作に楽曲提供する全アーティストのコメントが掲載されていて、そうした熱い言葉たちからは、今回のコラボに懸ける気合いの大きさが伝わってくる。

 そして、第1話のエンディングテーマに起用されたVaundyの「CHAINSAW BLOOD」に続く形で、18日に放送された第2話においてエンドロールを彩ったのが、ずっと真夜中でいいのに。(以下、ずとまよ)の新曲「残機」であった。イントロから容赦なく炸裂する攻撃的なベースラインを耳にして、すぐにずとまよの新曲であることに気づいた人も多かっただろう。同曲のクレジットは「作詞・作曲:ACAね/編曲:100回嘔吐&ZTMY」となっており、ずとまよの鉄壁の布陣により生み出された楽曲である。これまでの楽曲の中でも比較的BPMの高いナンバーで、ネジがぶっ飛んだような痛快な展開に痺れる。また、まるで暴発するように無軌道に加速していく後半の展開も圧巻で、こうした曲調は、尋常ではないテンションで加速し続ける『チェンソーマン』の物語と見事にマッチしている。

『チェンソーマン』第2話ノンクレジットエンディング / CHAINSAW MAN #2 Ending│ずっと真夜中でいいのに。 「残機」

 注目すべきは、いかにして「残機」が『チェンソーマン』の世界を彩っているか、である。まず、タイトルにもなっている「残機」というワードについて。各サビに〈残機わかんなくて〉というフレーズがあり、これは何度倒れても起き上がる不死身のチェンソーマンの悲痛な宿命を表している。なお、同曲のラストには〈暴れるのは疲れる  でも侮れない/傷にはセッションで絶頂で健康で/きもちいな〉という一節があり、これもまた、正義も大義もないまま、終わりなき戦いに身を投じていく主人公・デンジの、もはや正気ではいられない本心を映し出しているのだろう。〈セッション〉というミュージシャン的な言葉選びも絶妙で、チェンソーマンによる熾烈な戦いにおけるスリリングさ、予測不能さが、先述した痛快な曲調と相まってヒシヒシと伝わってくる。

 また、サビ後半における〈平凡な生活  ゆめみたけど/先手必勝が  気持ちいいな〉というフレーズ、そしてラストのサビ前の〈ただ穏やかでいたい/誰にも迷惑かけたくはないと思うが/戦わないと  撫でてもらえない/単純明快でした〉というフレーズも目を引く。やはり、普通の生活を渇望する姿こそが、デンジの本質であり、この物語の根底には、戦い続けることでしか自分の存在意義を示すことができないデンジの悲痛さが流れている。そして、そうした切実さや悲痛さを豪快に吹き飛ばすような『チェンソーマン』のバトルシーンは観る者に大きなカタルシスをもたらす。繰り返しにはなるが、だからこそ今回の曲も、破天荒なバトルを繰り広げる『チェンソーマン』とシンクロするように、まるでリミッターが外れてしまったようなぶっ飛んだ曲調になっているのだろう。

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