BEYOOOOONDS『BEYOOOOO2NDS』レビュー 強力な楽曲が目白押し、アルバムに一貫する“素敵な過剰”

さらに個性豊かなユニット用新曲3曲

 アルバムDisc2は、グループ内3ユニットの、過去シングルで発表済みの楽曲と今回のアルバム用新曲を各2曲、計6曲収録。

 CHICA#TETSUの楽曲はこれまでも電車というテーマが続いていたが、今回の新曲も同様に「待ち合わせはJR梅田駅で」。関西に梅田駅という駅名は路線ごとにいくつかあるのだが、JRの梅田駅だけは存在しない。そのことを逆手に取ったこの曲名が発表された際、SNSでバズを生み、ニュース記事にもなったのは記憶に新しいところだ。シンセベースが8ビートを刻みギターが伸びやかなフレーズを奏でる、これまでのCHICA#TETSU楽曲からさらに輪をかけてポップな仕上がりになっている。

 降ってくる雨が森林に染み込み、川や海に流れ、海水が蒸発して雲になりまた雨が降る。こうした自然のサイクルがユニット名になっているのが雨ノ森 川海だが、その由来自体を歌詞テーマとしているのが新曲「循環」。ユニットにとって大切な1曲となりそうだ。

 SeasoningSの新曲「Get Back!ビニール傘の大冒険」は、擬人化したビニール傘の視点から描かれる、1曲の中で曲調が目まぐるしく変化する英国ポップスサウンドで、ミュージカル的とも言える。これもまたSeasoningSらしさにあふれた楽曲だ。グループ曲とはまた異なる、ユニットならではの方向性を持つ楽曲がアルバム全体をさらに豊かにさせている。

アルバムに一貫する“素敵な過剰”

BEYOOOOONDS『英雄~笑って!ショパン先輩~』Promotion Edit
BEYOOOOONDS『こんなハズジャナカッター!』

 既発表曲も、フレデリック・ショパンの「英雄ポロネーズ」や「ノクターン」のメロディを引用するというクラシカル・クロスオーバー的手法が話題を集めた「英雄~笑って!ショパン先輩~」や、BEYOOOOONDSというグループの個性それ自体をテーマとしたメタ的な歌詞の「こんなハズジャナカッター!」など、強力な楽曲が目白押し。

 アルバムを通して一聴したときの筆者の率直な感想は、「サウンド様式が多彩」「文脈が多い」「濃い」、さらに誤解を恐れずに言えば「疲れる」とも感じた。ただしそれは心地よい疲れでもある。これは前作1stアルバムの時から一貫している、BEYOOOOONDSというグループの素敵な過剰であり、現在の充実ぶりのなによりの顕現でもある。

 “メンバーの卒業と加入を繰り返しながら進化していくアイドルグループ”とはモーニング娘。の基本コンセプトだが、気づいてみればそれ以外のアンジュルム、Juice=Juice、つばきファクトリーといったハロプロ所属グループはいずれもこの卒業/加入システムを結果的には取り入れている。そんな中で、未だメンバーチェンジがなくデビュー時の12人のまま活動を続けているのがBEYOOOOONDSであり、そのことがこのアルバムの強度の理由のひとつなのかもしれない。

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