BEYOOOOONDS『BEYOOOOO2NDS』レビュー 強力な楽曲が目白押し、アルバムに一貫する“素敵な過剰”
BEYOOOOONDSの新作アルバム『BEYOOOOO2NDS』がリリースされた。前作『BEYOOOOOND1St』から2年10カ月ぶりとなる2ndアルバムだ。
曲中に寸劇パートを取り入れるなど、独自の楽曲センスが持ち味のBEYOOOOONDS。メンバーは12人だが、3つのユニットを内包しているというグループ構成も特徴。前作アルバム同様、本作もかなりのボリュームを伴った充実かつ野心的な内容となっている。
寸劇トラックが付随したグループ本体の新曲3曲
アルバムは2枚組となっており、グループ本体の楽曲を集めたDisc1「BEYO盤」は18曲(そのうち寸劇のみのトラックが5つ)、ユニットの楽曲のみを集めたDisc2「UNIT盤」は6曲を収録。初回生産限定盤にはMV等を収録したBlu-rayが付属される。
なので純粋な楽曲数は合計19曲。そのうち、すでにシングル等でリリース済みの曲は10曲、今年春のコンサートで披露済みのライブ先行曲は3曲。今回のアルバム用新曲は6曲で、内3曲はグループ本体、もう3曲はユニット用の曲だ。
まず気になるのが、グループ本体のアルバム用新曲の3つ。前述の寸劇のみの5トラックは、これら3曲に付随したものとなっている。
「Hey!ビヨンダ」は、ポストディスコ風サウンドの上をトークボックスやラップが駆け巡る極めてファンキーな1曲。SiriやAlexaといったAIアシスタント文化を歌詞テーマとしており、曲名にもなっている“ビヨンダ”は架空のそれ。楽曲の前後に配された寸劇トラックが、ストーリーに奥行きを与えている。
「Never Never Know~コメ派とパン派のラブウォーズ~」も、曲前後にInterlude寸劇が用意されている。前作アルバム収録曲「きのこたけのこ大戦記」では“きのこの山”派と“たけのこの里”派のバトルが展開されたが、今回は朝食にご飯なのかパンなのかを争っているのが面白い。争いとはいっても曲調は、比較的さわやかなAOR風サウンドになっている。
国会での答弁を模した寸劇「迷走委員会」に続いて再生される3つ目の新曲「GOGO大臣」は、歌詞中にも“自己責任”というワードが出てくるなど、なかなかアクチュアルな内容ではあるのだが、サウンドはベースラインが印象的な軽快なものであり、その錯綜感が癖になる1曲だ。また、サビ終わりのセクシーな吐息風のワンフレーズが耳に残るが、これは過去ハロプロ楽曲で一時多用されていた常套句とでも言うべきもので、つんく♂が作詞作曲したセクシー路線の楽曲でよく聞かれたものだった。一例を挙げると、カントリー娘。に石川梨華(モーニング娘。)の2002年のシングル曲「色っぽい女~SEXY BABY~」などいくつかの曲で採用されている表現だ。そこにハロプロ四半世紀の歴史へのオマージュの一端を感じる。
ライブ先行披露の初音源化新曲3曲
ライブにて先行披露済みで、今回待望の音源化となった楽曲は3曲。初回盤付属Blu-rayにMVが収録されるなど、本アルバムのリードトラック的な立ち位置なのが「虎視タンタ・ターン」。前山田健一作曲、ダンス☆マン編曲によるファンキーディスコチューンだ。登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」などで有名なakaneによる振り付けもチェックポイントだ。
今年4月に開催されたBEYOOOOONDS初の日本武道館単独公演では、物販にてカスタネットが販売されたのが話題を呼んでいた。そしてライブ中に観客がカスタネットを音楽ゲームさながらに叩いてくれることを前提とした楽曲が「涙のカスタネット」。コロナ禍において観客の発声が制限されている状況を逆手に取ったとも言える1曲だ。アルバム中では、やはりコロナ禍で変容した日々の生活をテーマとし、〈一緒に作ろう new normal〉というフレーズもある「Now Now Ningen」が1曲前に配置されているのも興味深い。
その武道館コンサートや、春のホールツアーでのセットリストで最後に歌われていたのが「オンリーロンリー」。〈また遊ぼうね〉というフレーズが胸に迫る感動的なミディアムバラードで、アルバムDisc1でも最後に位置している。作詞・作曲・編曲は星部ショウで、別グループの楽曲ではあるが、アンジュルム「君だけじゃないさ...friends」などとも通底した歌詞ポリシーを感じさせるところがある。