加山雄三、最後のホールコンサートで「幸せだなぁ」 支えてくれた人々へ歌と言葉で届けた感謝の思い

加山雄三、ラストコンサートを観て

 最後のホールコンサートということで、ファンはもちろんのこと、身近な人への感謝も伝えられた。その一人が、妻 松本めぐみ。「どうしても歌いたい曲がある」と、結婚式の日に作ったという「September 4th」を妻に贈った。1970年9月4日にロサンゼルスで挙式した加山。教会のチャペルにあったオルガンで、その場で作ったというエピソードも明かし、「お母ちゃんに心を込めて歌いたい。よくぞ毎日の苦しみと悲しみを一緒に乗り越えてくれた。感謝、感謝」とコメント。まるでディズニー音楽のような、温かくファンタジー感あふれるナンバーで、加山は「ワルツの曲は作ったこともないのに、ワルツの曲ができた。ワルツには愛がある。音楽を親友にできて本当に良かった」と振り返る。サビの〈二人の十字架に永遠の愛〉という歌詞で、胸で十字を切る姿が印象に残った。

 また、作詞家・岩谷時子との出会いにも触れ、「この人と出会わなければ生まれなかった曲がある」と、「恋は紅いバラ」を熱唱。衝撃を受けたと話す岩谷の歌詞は、シンプルな言葉の中に、不器用で照れ屋だが胸の奥に情熱の炎をたぎらせる青年像が浮かび上がり、それはまさしく若い頃の加山のイメージと重なった。

 アンコールでは、「お嫁においで」、『24時間テレビ』のテーマ曲「サライ」、そして「君といつまでも」といった代表曲を次々と歌い、「君といつまでも」の名セリフになぞらえ「幸せだなぁ」と鼻の横をかきながら、今の思いを伝えた。

「本当にたくさんの幸せをありがとうございました。皆さんの応援があったから、最後まで歌いきることができました」

 最後に、〈生きているこの手でしあわせつかもうよ 生きているこの手でしあわせ渡そうよ〉と歌詞の一部をメッセージとし、「愛する時は今」を力強く歌い上げ、立ち上がって手を広げ、渾身のロングトーンを響かせた。

 ちなみにライブの冒頭では、加山が「ラララ~」で歌った未発表音源が公開されるという、ファンにはうれしい演出もあった。本編のMCでも、「ある日、戸棚を開けたら大量のオープンリールテープが落ちてきた。まるで聴いてくれと言わんばかり。いやあ残ってて本当にうれしい。そのうち歌詞を付けて、レコードにするから楽しみにしていてください」とコメント。ステージでの姿はこれで見納めとなったが、音楽活動から引退するわけではない。音楽家としての、さらなる活躍に期待が膨らんだ。

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