森七菜、思い出が詰まった1stアルバム完成 リスペクトするアーティスト陣とのコラボで実現した音楽への思い

森七菜、1stアルバムの手応えを語る

 森七菜から1stアルバム 『アルバム』が届けられた。デビュー曲「カエルノウタ」(作詞:岩井俊二/作曲:小林武史)、「スマイル」(ホフディランのカバー)、「深海」(作詞作曲:Ayase)、「背伸び」(作詞:新海誠)、最新シングル曲「bye-bye myself」(作詞作曲:森山直太朗)などの既発曲に加え、絵本作家の荒井良二、シンガーソングライターのコレサワ、オカモトコウキ(OKAMOTO’S)、 kiki vivi lily、福岡晃子、佐藤千亜妃などが参加した新曲も充実。アーティスト・森七菜の魅力とポテンシャルが存分に発揮された作品に仕上がっている。9月下旬には、大分と東京で初のワンマンライブの開催も決定。アルバムの制作プロセス、ライブへの思いなどについて、彼女自身の言葉で語ってもらった。(森朋之)

2年半での経験が、歌の表現や声にも出ているんじゃないかな

ーーシンガーとしてデビューして約2年半。ついに1stアルバムがリリースされました。森さんにとっても感慨深いものがあるのでは?

森七菜:そうですね。アルバムを作れるって聞いたときは、「え、いいんですか?」って驚いちゃったんですよ。「そんな夢を見ていいのかな?」という感じで(笑)。いい作品になったと思いますし、すごくうれしいですね。

ーー『アルバム』というタイトルは森さん自身が考案したそうですね。

森七菜:はい。スタッフの方から「タイトル、何かいいのある?」と聞かれて提案しました。いろんな曲が入っているし、それぞれに思い出があって、写真のアルバムみたいだなと思ったので。みなさんにも、いろんな思い出を思い起こしながら聴いてほしいです。

ーーアーティストとしての起点となったデビュー曲「カエルノウタ」のレコーディングのことは覚えてますか?

森七菜:はい。小林武史さんのスタジオに呼んでいただいて。「少年みたいな声、ガラスみたいな声だね」と言ってもらえてすごくうれしかったですね。それまでの活動と畑が違いすぎて、最初は「こんな感じで歌いたい」というのもなかったし、だからこそ自由に歌えたんじゃないかなと思います。まさか自分が歌うことになるとは思ってなかったんですよ。岩井俊二さん、小林武史さんに「やってみたら?」と言ってもらって、「こんなにすごい方々が言ってくれたんだから、やってみよう」と。

森七菜 カエルノウタ Music Video

ーー2年半前の歌声、いま聴いてみるとどう感じますか?

森七菜:若いなって思います(笑)。「大差ないよ」と思われるかもしれないけど、18歳からの2年半の間にいろいろな経験もできたし、それが歌の表現や声にも出ているんじゃないかなって。

ーーでは、ここまで音楽活動を続けてきて「よかったな」と思うことは?

森七菜:以前よりも音楽の楽しさがわかってきた気がします。今回アルバムを作っていくなかで、一つひとつの曲の制作や曲順を考えて、「こうやって出来上がるんだな」と実感して。アルバムならではの楽しみ方があるんだなって初めて気づいたんです。最近、あいみょんさんが新しいアルバム(『瞳へ落ちるよレコード』)をリリースされましたけど、一枚を通して聴いて、「どんなことを考えて作ったのかな」とか、いろんなことを考えて。アルバムの良さを感じられるようになったのも、音楽をやっていて良かったことの一つです。

歌詞を解釈して表現するのは“お芝居に近い”

ーーアルバムの新曲についても聞かせてください。まずはコレサワさんの提供曲「君の彼女」。〈君がくれた優しい愛が似合う女の子になれているかしら〉など、愛らしく、切ない気持ちを描いたラブソングです。

森七菜:曲を作っていただく前に、コレサワさんと二人で1時間くらいお話しさせてもらったんです。恋バナというか、恋愛観や価値観についていろいろ話をして、そのときのイメージで曲を作っていただいて。(歌詞にあるような)甘い言葉はお話ししていないと思うんですけど(笑)、コレサワさんが私から受けた印象をもとに、こんなにもかわいらしくて、愛らしいキャラクターを与えてくださったんだなって。森山直太朗さんも私をイメージして曲(「bye-bye myself」)を作ってくださったんですけど、こんなにも見え方が違うんだなと思いました。私にとっても面白くて、不思議な体験でしたね。

ーー「君の彼女」のレコーディングのときは、どんな感情で歌っていたんですか?

森七菜:この曲で描かれているような恋愛感情は誰もが持っていると思うし、歌うときはそういう想いを意識した気がします。私自身もすごく琴線に触れたし、自分の気持ちで歌えたんじゃないかなと。もともとコレサワさんの「たばこ」や「あたしを彼女にしたいなら」が好きで、真似して歌ってたんです(笑)。「君の彼女」のレコーディングではコレサワさんにディレクションしていただいたので、“コレサワ色のある森七菜”を感じてもらえたらうれしいですね。

ーーすごく有意義なコラボレーションですね。

森七菜:本当にありがたかったし、私も面白かったです。「今だからできることをやりたい」という気持ちもあって、こういう恋する気持ち全開の歌は、この年齢だから歌えるのかなと。

ーーそして「ロバとギターときみとぼく」は作詞を絵本作家の荒井良二さん、作曲・編曲は気鋭のシンガーソングライター 澤田空海理さんが担当。カントリー調の心地いいポップチューンですね。

森七菜:もともと荒井さんの絵本が大好きだったんです。子供の頃を思い出したり、今読んでも「深いなあ」と感じるところがたくさんあって、「いつかお仕事をご一緒させていただきたいな」と思っていたんです。アルバムの制作に入ったときに、「スマイル」みたいに子供たちにも届けられる曲がほしいなと思って、荒井さんに歌詞を書いていただけたらなと。

ーー〈今 ぼくの絵は歌うよ/ことばにならない 色のよう〉もそうですが、素敵なフレーズがたくさん込められた歌詞ですよね。

森七菜:素敵すぎてビックリしました。「絵本の続きのような歌詞を書いていただけますか」とお願いしたんですが、荒井さんにしか書けない歌詞だし、ファンの一人としても、すごくうれしくて。作曲をお願いした澤田さんの楽曲も以前から聴かせてもらっていたんですよ。私が思い描いていた世界観を表現してくれて、歌っていて楽しかったです。子供たちと一緒に遊べるような歌だなって思うし、こういう楽曲を発信できることが幸せですね。

ーー「愛のしるし」のカバーも印象的でした。作詞・作曲はスピッツの草野マサムネさん、PUFFYのシングルとして1998年にリリースされて大ヒットを記録した曲ですね。

森七菜:「愛のしるし」も以前からすごく好きだったんです。聴いてると強くてかっこいい気分にも、かわいらしい気分にもなれて、不思議な力がある曲だなって。「カバーをもう1曲入れたいね」という話になったときに、「私が歌うことで、今の子供たちがこの曲を知るきっかけになったらいいな」と思って、カバーさせてもらうことになりました。

森七菜 愛のしるし Music Video

ーーアレンジはOKAOMTO’Sのオカモトコウキさんです。

森七菜:コウキさんを推薦してくれたのはスタッフの方なんですけど、私のなかで膨らんでいた期待をはるかに上回る最高のアレンジをしていただきました。正統派ロックというか、すごく堂々としたサウンドで、この曲の良さが引き出されていて。間奏のギターソロもカッコいいし、感激ですね。レコーディングもロックな気分で歌えたし、楽しかったです。

ーーすごくナチュラルに歌ってますよね。カラオケなどで歌ってました?

森七菜:はい(笑)。カラオケに私のバージョンの「愛のしるし」が入ったら感慨深すぎますね。

ーースピッツも好きなんですか?

森七菜:好きです。草野さんは天才だなって思うし、私たちの世代にもすごく人気がありますね。

ーーkiki vivi lilyさんが手がけた「Lovlog」は、ラップのテイストを取り入れたナンバー。

森七菜:ポエトリーラップの曲をアルバムに入れたくて。以前から聴いていて、いちばん聴きなじみがあるkiki vivi lilyさんにお願いしました。すごく親近感がある歌詞だと思うし、メロディもオシャレでエモーショナル。日常を彩ってくれる曲になりました。

ーー好きな人と一緒にラーメンを食べながら、〈それでも今夜は知らない誰かの腕に帰るんでしょう〉と思う女性を描いていて。

森七菜:私自身はそういう経験はないですけど、誰かに対して痛いくらいの感情を抱くことはあると思うし、抽象的だけど強い気持ちを乗せて歌いました。恋に恋したり、自分に酔うのも悪くないというか、そういう自分を許せるような曲だなって。歌うのは難しかったですけど、ポエトリーラップはちょっとセリフみたいなところがあって。親しみを感じながらレコーディングしました。

ーーそうやって歌詞を解釈して表現するのも、音楽活動の醍醐味では?

森七菜:そうですね。そこはお芝居に近いかもしれないです。台本を読んで、自分が演じる人物を理解して。歌詞にはそこまで詳しく書かれていないので、自分に寄せている部分もあります。

ーーしかも“自分発信”で制作できるのもいいですよね。

森七菜:特に今回のアルバムは好きなようにやらせていただきました。すごく楽しかったですね。

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