「私には歌があったんだ」伊藤蘭、41年ぶり歌手活動再開の経緯 キャンディーズ楽曲披露を後押ししたファンの熱量

伊藤蘭、41年ぶり歌手活動再開の経緯

ステージに立ったときに感じたホーム感

伊藤蘭(写真=池村隆司)
――なるほど。また歌をやると決めたとき、キャンディーズの往年のファンの方々はもちろん、喜んでくれた方は多かったんじゃないですか。

伊藤:すごく喜んでくださった方が多かったことに、私自身がビックリしました(笑)。半信半疑なところはあったんですよね。このタイミングで私が歌をやることに対して、キャンディーズのファンだった方々はどう思うんだろうと。そういう不安はありました。

――ただ、実際はたくさんの人が喜んでくれたというか、それこそ最初の音源となったアルバム『My Bouquet』を聴いて個人的に驚いたのは、伊藤さんの歌声が、相変わらず可憐で素敵だったことで。

伊藤:ありがとうございます(笑)。

――「懐かしい」とか「あの頃と変わらない」みたいな感覚とは、ちょっと違うんですけど、伊藤さんの歌声は、時空を超えたところにある歌声だなと思って。例えば、このタイミングでブルースとかを歌ってもいいわけじゃないですか。でも、やっぱり伊藤さんが歌うのは、キラキラしたポップスだった。そこがすごくいいなと思いました。

伊藤:そう言っていただけると嬉しいです。年齢的なことを考えて「どういう歌を歌ったらいいんだろう?」ということはちょっと考えましたよね。ただ、自分の嗜好としてもやっぱりポップスが好きで。聴いてくださるみなさんに、楽しんでもらえるような歌……夢があってロマンがあって、ちょっとだけ哀愁がある。やっぱり私はそういう歌が好きだし、そういう曲を歌いたいなと思ったんです。

――実際、ソロでの活動を続けていく中で手応えを感じる部分はありましたか。

伊藤:そうですね。ずっと芝居の仕事を中心にやっていたんですけど、そもそも芝居の仕事を始めたとき、私なりのアウェイ感みたいなものがあって。芝居の仕事をもう何十年もやっているのに、いまだにどこかそういう感じがあるんです。だけど、今回また歌をやり始めて、ステージに立ったとき「あ、ホームだな」と感じることができて。もちろん、初めは恐る恐るだったんですけど、そういう感じを客席にいるファンの方たちから伝えてもらったというのかな。その雰囲気にすごく後押ししてもらいました。

――いい話ですね。

伊藤:ふふふ。ただ、さっきも言ったように、すぐにコロナ禍になってしまったので……何とかコンサートをやることはできたとしても、お客さんは声が出せない状況ではあるので。

――それこそ、キャンディーズのコンサートは、「ファンの声援あってこそ」みたいなところがありましたもんね。

伊藤:そうなんですよ。ことキャンディーズの楽曲は、コンサートにおいてはファンの声援も込みで、ひとつの作品になるところがあって。「コール」を楽しみにきてくれた方も、多分たくさんいらっしゃったと思うんですけど、今はそれも叶わないですし。その一方で、少し助かっている人もいるのかもしれない。今の時期はいつも以上に落ち着いて観ることができますからね。

――声の出せないコンサートは、それはそれでグッとくる瞬間がときどきあるように個人的には思っていて。

伊藤:そうですね。声に乗らない分、その思いみたいなものが、熱気になって伝わってくるというか。ふとした瞬間に、すごく濃密な空気で会場が満たされたりしますよね。特に、去年の9月にやった日比谷野音での公演は、そういうものをすごく感じました。

“キャンディーズの曲を歌ってもいいのかもしれない”と思えた瞬間

伊藤蘭(写真=池村隆司)
――野音と言えば、キャンディーズが解散を宣言した場所でもあって。最初のソロコンサートから、キャンディーズの曲も何曲か歌われていましたけど、2020年のツアーからは、ツアーのタイトルにも「キャンディーズ」の名前がつくようになりました。コンサートを続けていく中で、何か心境の変化があったのですか?

伊藤:もう解散して、いなくなってしまったグループだし、最初はいろんなことを考えましたよね。ただ、楽曲は今も残っていて、みなさんが今も好きでいらっしゃる。それを私がひとりで歌って、本当の意味でみなさんに喜んでもらえるんだろうかと。だけど、最初のコンサートでキャンディーズの曲を歌ったときに、みなさんの心の中にあるキャンディーズの残像や、キャンディーズに対する強い思いみたいなものと、ステージにいる私ひとりの歌が合わさって、その場所ができあがっているような感じがあって。

――まさに、コンサートならではというか。

伊藤:そう。3人で歌っていたものを、私がひとりで歌うとかではなく、みなさんの気持ちも合わせて、そこに何かが生まれている。それはそれで、すごくいい空間だったし、だったらもっとキャンディーズの曲を歌ってもいいのかもしれないと思ったんです。それで、だんだん歌う曲が増えていって……最初のコンサートでは6曲だったのに、それがどんどん増えていって、去年の野音ではすごい数の曲を歌ってしまって(笑)。

――全部で何曲歌ったんですか?

伊藤:全体で27曲で、そのうちキャンディーズは15曲だったかな(笑)。

――すごい(笑)。サブスクリプションサービスの時代になって、以前よりもキャンディーズの楽曲にアクセスしやすくなったところもありますよね。キャンディーズは洋楽的なことにチャレンジしたり、当時のアイドルグループとしては珍しく、活動の中心をコンサートに移したり、今思うといろいろ画期的なグループでしたよね。

伊藤蘭(写真=池村隆司)

伊藤:そうですね。一緒にやっていたスタッフたちが多分洋楽指向だったんですよね。私たちの好みもそうでしたし。当時の歌謡曲とはまた違う、日本のポップスになっていったのかなと思いますけど。

――ある意味、その後のポップスの先駆け、さらには今日のライブアイドルの先駆け的なところもあったのかなと。

伊藤:吉田拓郎さんの曲をいち早く取り入れたりとか、ちょっとした変化球を混ぜてみたり、「年下の男の子」(作詞:千家和也/作曲:穂口雄右)にしても、実は当時の歌謡曲とはまた違った色合いの楽曲でしたし、音楽的に幅広くトライしていたところがあって。多分、「こうじゃなきゃいけない」みたいなことが、キャンディーズにはなかったんだと思います。だから、アルバムの曲でいろいろと好きなことをやって遊ぶことができたし、コンサートでも洋楽カバーを積極的にやったりもしていましたね。

――8月下旬からは、またいろいろとコンサートの予定が詰まっていて。今度は全国ツアー、しかもライブハウスツアーです。

伊藤:元気なうちは、まだまだいろいろやっていきたいです。まだ会場で声は出せないと思いますが、気持ちでは一体感を感じられるようなコンサートにしていきたいと思っていて。コンサートって、二度と帰らない瞬間じゃないですか。その瞬間を逃さずに、ちゃんと交流していきたい。みなさんと気持ちが行き交うようなコンサートにしたいですね。

■ツアー情報
『伊藤 蘭コンサート・ツアー2022 〜Touch this moment & surely Candies!〜』

<出演>
伊藤 蘭
バンド:佐藤 準(音楽監督・Keyboards) / 是永巧一(Guitar) / 笹井BJ克彦(Bass) / そうる透(Drums) / 竹野昌邦(Sax) / 渡部沙智子(Chorus) / 高柳千野(Chorus)
※都合によりバンドメンバーが変更になる場合あり。9月2日、3日大阪公演ではChorus・渡部沙智子に代わり、鈴木佐江子が出演予定。

オフィシャルサイト:https://www.diskgarage.com/feature/ito-ran/

●横浜公演
2022年8月20日(土)KT Zepp Yokohama 開場17:00/開演18:00  SOLD OUT!
●名古屋公演
2022年8月27日(土)Zepp Nagoya 開場16:45/開演17:30 SOLD OUT!
●大阪公演
2022年9月2日(金)Zepp Namba 開場18:15/開演19:00
2022年9月3日(土)Zepp Namba 開場13:45/開演14:30
●仙台公演
2022年9月10日(土)仙台PIT 開場17:00/開演17:30
●札幌公演
2022年9月17日(土)Zepp Sapporo 開場17:00/開演17:30
●東京公演
2022年10月2日(日)Zepp DiverCity(TOKYO) 開場16:30/開演17:30 SOLD OUT!
●福岡公演
2022年10月9日(日)Zepp Fukuoka 開場16:45/開演17:30
●東京追加公演
2022年11月19日(土)TOKYO DOME CITY HALL 開場16:15/開演17:00

<チケット>
指定席9,900円
U-25シート(25才以下対象)6,600円(当日要身分証)
※全て税込
※未就学児入場不可
※U-25シートは25才以下対象の席となり、一般発売からの販売。公演当日「お名前・生年月日が確認できる身分証」を1名ずつ提示。

●8月20日(土)横浜公演〜10月9日(日)福岡公演…各プレイガイドにて発売中
●11月19日(土)東京追加公演…一般発売9月3日(土)
●プレイガイド
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/ran/
ローソンチケット:https://l-tike.com/itoran
e+(イープラス):https://eplus.jp/ran-ito/

サイン入り色紙プレゼント

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<締切:9月2日(金)>

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