RADWIMPS、不条理に抗うアティテュード ドラマ『石子と羽男』主題歌で伝える“声を上げる大切さ”
7月15日から放送が始まったドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる。今作は、パラリーガル(弁護士の業務をサポートする専門アシスタント)の石田硝子(通称:石子/有村架純)と弁護士の羽根岡佳男(通称:羽男/中村倫也)がコンビを組み、この現代社会において誰にでも起こり得る珍トラブルに挑むリーガルエンターテインメントである。『アンナチュラル』『MIU404』『最愛』をはじめとした大ヒットドラマの数々を手掛けてきたプロデューサー 新井順子×演出家 塚原あゆ子のコンビによって送り出される新作であり、この座組みとキャストが発表された時から注目を集めていた。
第1話では、カフェでスマホを充電していたら窃盗罪で訴えられたケースが取り上げられており、その意外な(しかし、実際に起きた)トラブルを取り上げたエピソードを観て、法律に対する考え方がアップデートされた視聴者は少なくないと思う。また、単に当事者間のトラブルを解決に導くだけではなく、その裏側にある社会の構造的な問題に切り込んでいく展開は痛快で、温かなヒューマンドラマとしての味わいも堪能することができる。
そして、ドラマ『石子と羽男』に、演出や脚本、俳優の演技とは別のパースから光を当てて物語に奥行きを与えているのが、主題歌として起用されているRADWIMPSの新曲「人間ごっこ」である。
「人間ごっこ」という曲名を見た時に、同じく“人間”というワードがタイトルに用いられているRADWIMPSの楽曲「棒人間」を想起した人も少なくないだろう。2016年に発表された「棒人間」は、その翌年に放送されたドラマ『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系)の主題歌に起用。人間そっくりな容姿の“怪物”が胸の内に秘める孤独や悲哀に優しく寄り添いながら、「人間とは何か?」と鋭く問いかける楽曲であった。
今回の「人間ごっこ」で歌われるテーマも、その問いかけの延長線上にあるように思う。ただ、『フランケンシュタインの恋』がファンタジー要素の強い作品であったのに対して、『石子と羽男』は、私たちが生きる現代社会の様相をリアルに映し出した作品である。それゆえに、主題歌として制作された「人間ごっこ」は、「棒人間」とは異なる角度から“人間らしさ”を描く楽曲となっている。
野田洋次郎(Vo/Gt)は、今回の楽曲制作について、「現実に今日本で起きている裁判などの話を聞き、それを頭で反芻する中で歌詞の断片を紡いでいきました」とコメントしている(※1)。実際に同曲の歌詞に耳を傾けてみると、“声”が一つのキーワードになっていることが分かる。
〈この手すり抜ける 数え切れない 未来を/眺め続けることを 「生きる」と呼ぶの?〉
〈届かぬ声をいくつおし殺せば 僕の/身体突き破り 全世界中にはじけ飛ぶのだろう〉
野田は“声”というキーワードに『石子と羽男』の物語の本質を見出しており、実際に1話においては、「声を上げること」の重要性が語られていた。石子の「なぜ、声を上げないんですか?」「人間関係を円滑にするためにあるルール、それが法律なんです。そのルールに則り、声を上げる行為は情けなくもないし、少しも間違っていません」という台詞は、1話における重要なハイライトシーン。そしておそらくこのメッセージは、今作の通奏低音として、これから毎週にわたって伝えられ続けていくのだろう。