連載「lit!」第9回:The 1975、King Gnu、ジャック・ホワイト……今年、夏フェスを賑わす要注目の新作ロック
マカロニえんぴつ『たましいの居場所』
タイアップ曲でもある「たましいの居場所」と「星が泳ぐ」は、多くのリスナーの期待に真正面から応えるような“マカロニえんぴつの王道”ナンバーであり、すでに今年の音楽シーンを鮮やかに彩るヒットソングとして数々のチャートを席巻している。そこに2つの新曲を加えた今回のEPを聴いて強く感じたのは、彼らのロックバンドとしての矜持である。4人のメンバーがそれぞれの技巧を無邪気にぶつけ合った「街中華★超愛」は、ロックバンドとして最大限に音楽を楽しもうとする遊び心に溢れている。また、メンバー全員で手がけた歌詞を4人で歌い繋いでいく「僕らは夢の中」は、まさにこれからも変わらずにロックバンドとして歩み続けていく所信表明だ。輝かしい確信をもって歌われる〈ロックバンドは最高だ〉という衒いのない言葉に、強く胸を打たれる。結成10年を迎えてもなお、いつまでもフレッシュな心意気をもってロックバンドの青春を謳歌し続ける彼らは、これからもさらなる快進撃を見せつけてくれるはずだ。
Beabadoobee『Beatopia』
Z世代のシンガーソングライター・Beabadoobeeから、2年ぶりのニューアルバムが届けられた。前作『Fake It Flowers』は、90年代のオルタナティブロック/グランジからの強い影響を感じさせる作風だったが、今作では、シューゲイザーやサイケデリックロックをはじめとした様々な音楽性を広く取り入れており、何にも縛られたくないという力強い意志、そして軽やかな自由さを感じさせる。The 1975のマシュー・ヒーリー&ジョージ・ダニエルやPinkPantheressといったミュージシャンとのコラボレーションも、そうした音楽性の拡張のきっかけとなっているのだろう。そして、多彩な音楽性をミックスしながらも、今作はあくまでもポップな輝きを纏っており、何より、前作に比べて格段にカラフルなテイストとなっている。今作は、2020年代のポップ観を鮮やかにアップデートする1枚になるだろう。また、1枚のアルバムを通して描き出したいビジョン(=子供の頃から夢想していた自分だけの世界『Beatopia』)が明確にあり、彼女の表現者としての進化と可能性を感じさせる作品となっている。彼女が音源を通して描いたドリーミーな景色が、ライブを通していったいどのような広がりを見せるのか。『SUMMER SONIC』のステージへの期待が高まる。