Suspended 4thの核にあるバンドのロマン 1stアルバムで手に入れた“エンタメ”を引き受ける強さ

「やっぱり俺らはエンターテイナーなんだなって」(Washiyama)

一一今日はいろんな意外な名前が出てきて面白い(笑)。あとDeep Purple「Burn」のカバーもびっくりしました。この有名曲を「うわっ、格好いい!」って心から思ったのはたぶん初めてです。

Sawada:「Burn」はもう、我々が一番楽しんでやらせてもらいました。

Washiyama:あれはまさにDennisにゆかりのある曲。

Dennis:そう。最初に憧れたドラマーが、Deep Purpleのドラマー(イアン・ペイス)で。もう癖とかチューニングまで再現してます。研究しつくした、現状での結果ですね。

Washiyama:だから現代の録音方法で録った本物のドラム、みたいな感じだと思いますよ。ドラムに関しては。でも棹(=弦楽器)はできるだけ本家に寄せないで、自分の色を出す方向で。

Sawada:そこがアレンジの面白さになってると思う。もちろん原曲へのリスペクトもあるんですけど、あえて外したプレイを3人はしてるから。

Washiyama:俺、リッチー・ブラックモア寄りじゃなくてリッチー・コッツェン寄りなんですよ。リッチー・コッツェンがやってた「Burn」の感じ。で、Sawadaさんはカッティング入れちゃったりして。

Sawada:そうそう。これ録る当日、僕、<PIZZA OF DEATH>っぽく録りたいなと思っちゃって。パンクっぽい感じ。だからバッキングはパンクギタリストで、リードギターはハードロッカー。で、ベーシストは……。

Fukuda:ビリー・シーン(笑)。

Sawada:エクストリーム・ベーシストみたいなね(笑)。

Washiyama:でも、このアルバムの本質、「Burn」に全部詰まってる感じがしますね。やりたいこと、できるだけ曲げてないし。

一一そのうえで、みんなが知っているわかりやすさ、ものすごいスピードで全部持っていく強さもある。マニア視点にとどまらない爆発力。

Washiyama:サスフォーに求めるものが何なのかって、みんなわかってきたんでしょうね。それはライブをやってても感じるし。今、ステージでの立ち位置が変わったんですよ。俺が真ん中で。立ち位置くらいで別に違いはないかなと思ってたんですけど、意外に俺は真ん中にいることを求められてるんだって気づいたし。その感覚がこの音源にもあると思う。求められてるところに、ちゃんと行こうとしてる。

一一エンタメを引き受ける強さと言いますか。

Washiyama:うん。それができない人って、たぶん数学者とか研究者みたいなポジションだと思うんです。でもこのバンドは、ちゃんとエンターテインメントを追求したい。それがバンドの総意なんだなっていうのは伝わると思います。

一一それって、結局はバンドのロマンだと思うんですよね。歌詞にもあるけど「この音ひとつで世界が変わる」みたいなイメージを描けるかどうか。

Washiyama:確かに。そういうバンドって最近いないじゃないですか。それこそ〈ギャラクシー〉とか言えるバンドがいない(笑)。その突き抜け具合、飛び抜け感って、たぶん今ニーズとしてあるんだろうなって。

一一ニーズ、ありますかね? 冷静に言ってしまうと世界的にロックはあまり流行ってないわけで。

Washiyama:というより、「もっと流行ってるものがあるだけ」っていうイメージですね。ロックが流行ってないっていうよりかは、もっと他に大きな流行があって、その中にロックが実は好きな人はいると思ってる。まだまだ無数にいるんだろうなって、その希望を持ってないとやれないじゃないですか(笑)。

一一確かに。〈ギャラクシー〉とは言えない。

Washiyama:俺は聴きたいけどね。本気でやっべぇバンド。それこそSawadaが好きなTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか。楽曲自体に研究者的な要素はないんだけど、勢いはめちゃくちゃあって。その勢いの部分、俺らにも出せないのかなって最近よく考えるようになったんです。“バンドドリーム”じゃないですけど、この音を鳴らせば勝ちみたいな。それを前にすると、再生回数とかお金とか全部どうでもよくなっちゃうような。そういうバンドには憧れる。

一一Washiyamaさんが描くロマンは、全員に共通してるんですか?

Sawada:100%共通してはないと思う。ただ、光の三原色みたいな感じで交わる部分はあって、その核だけで繋がってるようなイメージ。

Dennis:でも、再生回数とかどうでもいいっていうのは僕もそうで。百年後の人類が「百年前はインターネットってものを使っていたらしい。Spotifyっていうサービスがあったらしいよ」みたいな感じで、自分たちの音源をたまたま聴いたとして。「もうみんな忘れ去ってるアーティストだけど、なんかいい気がする」って思えるような作品づくりをしたいなと思うようになりましたね。

一一耐久性というか、タイムレスな感じ。

Dennis:うん。それについて最近よく考えてる。忘れ去られたものでも、たまたま聴いた時にいいなって思うものと、思わないものの違い。それって聴き手の感性とか、時代の空気とは違うところで何か共通点があるんだと思うし。自分もそういうものを作れる人間でありたいなって思いますね。

一一実際、ロックバンドが世の中を変えることは可能だと思います?

Washiyama:いや、無理だと思います。

一一はははは! 即答!

Washiyama:世の中は変わらないけど、でもその場に来たお客さんの気持ちは変わるかもしれないですよね。それが世の中に影響を及ぼすかどうかはその人次第なんで、俺にはわかんないです。

一一でも、一人ひとりの何かを変えることはできる。

Washiyama:そうっすね。ライブに来てもらって、それこそ仕事の疲れが吹っ飛んだって思ってもらえるだけでも嬉しいし。その音で何かの余力が生まれたり原動力が生まれるんだったら、鳴らす意味は絶対あると思います。

Dennis:あと、ミュージシャンをやってること自体が「世の中から少し外れても別に生きていけるよ?」っていうことを提示してるのかもしれないし。

Sawada:そうだね。冷静に考えるとよくわからない集団だもんね。人を集めて、よくわからない機械をスピーカーに繋いで、でっかい音出して。それを見たお客さんが、なぜだか右腕だか左腕を上げたりしているっていう(笑)。

Dennis:でも、それを見ててなんか楽しい気分になる、それだけが残る。それが続いていけばよりよい人生になるかもしれないですよね。

一一拳が上がる瞬間の高揚感って、本当に大事ですからね。

Sawada:スポーツ観戦とかもそうですよね。

一一そう。実は何でもいいのかもしれない。でも、その瞬間をこの4人はロックバンドに求めているんだなって。

Washiyama:俺らがやれる表現に嗅覚がちゃんと向くようになった。だから、すごくいい方向に向かってるんだと思う。尖ってるバンドが尖りっぱなしで消えていくことは多いけど、やっぱり俺らはエンターテイナーなんだなって。根っからのそういうバンドも、今あんまりいないじゃないですか。誰もやってないんで、俺らがやってやろうかなって感じですね。

Suspended 4th『TRAVEL THE GALAXY』

■リリース情報
1stフルアルバム『TRAVEL THE GALAXY』
2022年7月20日(水)リリース
形態:通常盤/2枚組(インスト盤付)
2disc:¥3,850(incl. tax)
1disc:¥2,750(incl. tax)

<DISC1>※通常盤はDISC1のみ収録
『TRAVEL THE GALAXY』(DISC名)
1.トラベル・ザ・ギャラクシー
2.BIGHEAD(Rev.2)
3.ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン
4.Shaky
5.Venetzia
6.Betty
7.KARMA
8.HEY DUDE
9.Burn
10.ANYONE
11.オーバーフロウ(Rev.2)
12.ストラトキャスター・シーサイド ’22
13.Tell Them
14.INVERSION(Rev.2)

<DISC2>※DISC2はCD限定
『Parallel The Galaxy』(DISC名)
1.INVERSION(Instrumental)
2.Tell Them(Instrumental)
3.ストラトキャスター・シーサイド ’22(Instrumental)
4.オーバーフロウ(Instrumental)
5.ANYONE(Instrumental)
6.Burn(Instrumental)
7.HEY DUDE(Instrumental)
8.KARMA(Instrumental)
9.Betty(Instrumental)
10.Venetzia(Instrumental)
11.Shaky(Instrumental)
12.ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン(Instrumental)
13.BIGHEAD(Instrumental)
14.トラベル・ザ・ギャラクシー(Instrumental)

■関連リンク
公式サイト

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