Mrs. GREEN APPLE、活動休止を経て自由になった音楽との向き合い方 フェーズ2開幕で実感しているバンドの核

ミセス、自由な音楽との向き合い方

「外側が突き抜けると同時に、憂いの部分も強くなっている」

ーー「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」についても聞かせてください。ABEMAの恋愛リアリティ番組『今日、好きになりました。』の主題歌なので、いわゆる恋のときめきを表現する曲を作る選択もあり得ただろうに、そういうアウトプットには至らなかったんだなと思いました。

大森:最初はミディアムテンポでメロウな胸キュンソングをオーダーされたんですよ。でも“嫌だ!”って。

ーーどうして嫌だと思ったんですか?

大森:恋というものはすごく瑞々しいけど、誰かを好きになって愛したいと思うようになると、同時に、自分のことを一から見つめ直さなきゃいけなくなるじゃないですか。そこで理想の自分と現実の自分にずれを感じて劣等感を抱くこともあるし、瑞々しさとは対極の感情も生まれてくると思う。そういったものと向き合っている人たちに向けて曲を書こうと思った時に、好きだ好きだと言うだけではきっと届かないと思ったし、このタイミングで片っぽだけを書くことはしてはいけないと感覚的に思ったんですよね。それだったら、猛スピードで進んでいくリアルな恋愛、焦りを歌いたいと思いました。その結果、BPM213という高速な曲になって。

若井:しかも最初はもっと速かったんですよ。途中でちょっと落とそうかという話になって。

大森:そうそう。メロウな曲を書くという選択肢は初めから僕の中になかったですね。それはたぶん、休止期間中にいろいろなことがあったとか、ファンを待たせてしまったとか、全て僕のわがままから始まったことだったとか、全部ひっくるめてだけど、“自分たちの核となる表現をしたい”という気持ちを殺すことは、今すべきではないと強く思ったからで。

Mrs. GREEN APPLE「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」~ 今日好き Special ver. ~

ーーそういうモードというか、一つの物事に付随する光と影のうち、光だけを歌うことで体裁を整えたりはしませんよ、というのがフェーズ2だという話になってくるんでしょうか?

大森:それはまだ分からない。でも、嘘をついちゃいけないという気持ちがより強くなっているんですよね。「髪色も派手になったし、変わっちゃったね」じゃなくて、外側の印象が突き抜けると同時に、僕らが大事にしている憂いの部分ももっと強くなっていくんだよ、ということだと思います。

ーー『ENSEMBLE』ツアーでは、悲しみや苦しみも曝け出したアルバムだから、外側を華やかにしなければエンターテインメントとして成立しなかったと言っていましたよね。あの頃とはまた違う感覚ですか?

大森:そうですね。あのアルバムとツアーにおいては、「They are」という曲の存在が大きかったんですよ。ああいう悲しい曲に至った時に“外側を華やかにしなきゃ”と思った結果、辿り着いたエンターテインメントだったので。だからある意味、偶然の産物ですよね。だけど今は、“しなきゃいけない”ではなく“するべき”だという意思を持ってやっていて。

ーーするべきだ、というのは?

大森:コアなことを歌い続けると化学反応がなくなっていくし、一人よがりになっていくんですよ。だけどそういう音楽は絶対面白くないし、メジャーフィールドでやる意味もないし、そもそも僕らは大衆に向けてポピュラーミュージックを鳴らす覚悟を持って曲を作っているので、より間口を広くしようと。当時悶々としていてできなかったことや、技術やイメージが追いつかずにできなかったことを、これからはより自由に具現化していきたいです。

ーーフェーズ1や活動休止期間中に“自分たちの音楽のコアに気づいてくれる人もちゃんといるんだ”と感じられたからこそ、外見が華やかでも本質はきっと届くだろうと思えたし、内にも外にも思いきり振り切れるようになったという側面もありますか?

大森:今そう言われて腑に落ちたかもしれません。僕らって第一印象とそれ以降の印象が結構異なるバンドだと思うんですよ。爽やかで元気なバンドだと思っている人と「いや、この歌詞は爽やかじゃないよ」という人が混在しているし、その差をなるべくフラットにすることが活動においてすごく大事。だけど結局は、より多くの人に聴いてもらえれば、より多くの人に伝わるんじゃないかという想いから、“じゃあより多くの人に届けるために何をしよう?”ということをやっているんだと思いますね。

ーー今後の活動についてはいかがでしょう?

大森:フェーズ1の時は常に目標を掲げ続けていたんですけど、今は流れに身を委ねているような感覚だし、螺旋階段のように初期衝動に近いところに戻ってきているんですよね。“ドームライブやってみたいなあ”とかは思いますけど、そういう話をあんまりしなくなったよね。

藤澤:そうだね。

大森:今はとにかくいい曲を作って会いに行きたい。ありがたいことに7月8日(『Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”』)は来たくても来れない方がたくさんいるので、そういう人たちにもちゃんと「ただいま」と言える機会をいっぱい作りたいです。

ーー約2年ぶりのライブですね。

若井:緊張してます……。

大森:だけど楽しみだよね。

若井:うん、楽しみ。

藤澤:心から「ただいま」と言いたいし、「おかえり」と言ってもらえるようなライブにしたいなと思っています。休止中に好きになってくれたという人の声もたくさん届いているので、待ってくれていた人はもちろん、最近ミセスを知ってくれた人たちにも早くライブを届けたいですね。

大森:どのタイミングからミセスを好きになった人にとっても面白いライブになると思いますよ。「ミセス変わったな」と思う人がいるのは百も承知なんですけど、変わったところ、変わっていないところ、変われないところが明確に分かるライブになりそうなので、いろいろな人に観てほしいです。

Mrs. GREEN APPLE『Unity』

■リリース情報
Mrs. GREEN APPLE『Unity』
2022年7月8日(金)リリース
・完全生産限定盤(CD+DVD+GOODS)
BOX仕様/¥6,600(税込)
・限定盤(CD+DVD)
2折デジパック仕様/¥2,530(税込)
・通常盤(CD only)
¥1,980(税込)
<収録曲>
1. ニュー・マイ・ノーマル
2. ダンスホール(フジテレビ系全国28局ネット『めざまし8』テーマ曲)
3. ブルーアンビエンス(feat. asmi)(ABEMA『今日、好きになりました。』主題歌)
4. 君を知らない
5. 延々(ゲームアプリ『炎炎ノ消防隊 炎舞ノ章』テーマソング)
6. Part of me

■ライブ情報
2022年7月8日(金)
神奈川・ぴあアリーナMM
開場17:30 / 開演19:00
チケット料金(前売・税込):全席指定¥9,200

公式ホームページ

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる