原由子、31年ぶりオリジナルアルバムへの期待 桑田佳祐全面バックアップによる“代理・サザンオールスターズ”感じる充実作に

 グスタフ・クリムトの絵画の題名を冠した『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』の制作は、2021年7月にスタート。レコーディングには桑田のほか、斎藤誠(Gt)、曽我淳一(Key)、山本拓夫(Sax)、河村“カースケ”智康(Dr)、角田俊介(Ba)など、サザンオールスターズ、桑田のソロを支えるミュージシャンが集結した。6月25日放送のラジオ番組『桑田佳祐のやさしい夜遊び』で、アルバムの収録から2曲が初オンエア。放送中から大きな反響を集めた。

 まずは「スローハンドに抱かれて(Oh Love!!)」(作詞・桑田佳祐/作曲・原由子)。オープニングは、華やかでサックスのリフ。グループサウンズ、昭和歌謡を想起させるバンドサウンド、しなやかなメロディラインが印象的なポップチューンだ。凄腕ミュージシャンによるライブ感に溢れた演奏、瑞々しさと切なさを放つ原由子の歌声がなんとも気持ちいい。サーフロック的な匂いをふりまく音像を含め、湘南サウンドの最新バージョンと言っていいだろう。

 歌詞のモチーフはもちろん、エリック・クラプトン。“スロウハンド”と呼ばれる彼の音楽遍歴、恋愛遍歴を交えたストーリーを描いた歌詞には、桑田独特のユーモアと哀愁が滲む。セクシーな表現もちりばめられているが、それを爽やかなポップスに導いているのはもちろん、原由子のピュアなボーカリゼーションだ。

 もう1曲は「ヤバいね愛てえ奴は」(作詞・作曲/桑田佳祐)。アコギの響き、〈誰もいない部屋/僕だけが住む世界〉というフレーズで幕を開け、重厚な弦楽器が加わった瞬間、楽曲の世界観が大きく広がっていく。70年代のフォークロック、サイケデリック、プログレの要素を取り入れたアレンジ、そして、クラシカルな雰囲気と歌謡の親しみやすさを同時に感じさせる旋律が響き合う、滋味深い楽曲だ。歌詞で描かれているのは、人を愛することの痛み、切なさ、素晴らしさ。軸になっているのはもちろん、普遍的なテーマに大らかな生命力を与える原のボーカルだ。

 ラジオリスナーからの「今回のレコーディングをはじめられたきっかけ、その頃の原さんの様子などをお聞きできたらうれしいです」というメールに対して桑田は、「“おそるおそる”はじめたんじゃないですかね。(桑田から)“アルバム作ってみたら?”って」とコメント。さらに「原坊もね、65歳なんですけど、“みなさんにお聞かせしたい”という衝動のようなものがあるんだと思います。すごく新鮮な気持ちで向き合って、けっこう努力してやってまいりましたので、ぜひ聴いてやってほしいと思います」と言葉を重ねた。

 アルバム『婦人の肖像(Portrait of a Lady)』には、「スローハンドに抱かれて(Oh Love!!)」「ヤバいね愛てえ奴は」を含む10曲が収録される。本作に対して原は「コロナ禍でのレコーディング、また世界情勢も変わり不安が多くなる中で、改めて幼少期より様々な音楽に触れ励まされてきた事、今なお音楽活動を続けていられる事の有難さを実感しました」「次の世代にも音楽の素晴らしさが伝わりますように、そして自由に音楽を聴ける平和な世の中が続く事を願いながら、このアルバムをお届けします」とコメント。桑田がラジオの放送で語った「(原由子の新作は)代理・サザンオールスターズのニューアルバムだと思っていただいきたい」という言葉からも、本作の充実ぶりを確信してもらえるはず。

 原由子の31年ぶりのオリジナルアルバム、そして、ソロ活動35周年を迎える桑田佳祐。2022年後半、精力的に活動を続ける二人をはじめ、サザンオールスターズから目が離せそうにない。

■『SKGs(Sustainable Kuwata Keisuke’s Goals)〜ソロ活動35年!!“音楽人”桑田佳祐の持続可能な目標〜』
特設サイト https://special.southernallstars.jp/kuwata2022/

■原由子 オリジナルアルバム『婦人の肖像 (Portrait of a Lady)』
特設サイト:https://special.southernallstars.jp/hara2022/

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