SNARE COVER、力強さと繊細さを兼ね備える天性の歌声 2年半ぶりの東京公演で響かせた未知の音楽

SNARE COVER、2年半ぶりの東京公演

 ONE OK ROCKのカバー曲「Heartache」を挟み、ここで自身がボーカルとして参加したTVアニメ『メイドインアビス』のサウンドトラック「Hanezeve Caradhina」と、同作品の劇場版のエンディングテーマ「reBirth」をセルフカバーした「Birth」の2曲をミックスしたスペシャルバージョンを披露する。Cha,Cha,Fu,Fu,Ha,Ha……と、どこの国の言葉でもない、まるで動物の鳴き声のような、楽器の音のような、生活音のような不思議な声をいくつも重ね合わせ、唯一無二のメロディを作り上げていく。新たな楽曲が生まれる瞬間に立ち会っているような感覚だ。そこに神々しい歌声と大音量のシンセサイザーが重なり、壮大なサウンドを響かせる。その未知の音楽に圧倒された観客たちは、頭一つ動かさずに食い入るようにステージを見つめていた。SNARE COVERはこの曲を演奏する前に「いまは情報量が多すぎる時代だけど、僕は自分から溢れ出るものを探して追求したい」と宣言していたが、まさにこのパフォーマンスは彼以外できないだろう。

 深い世界へ飲み込まれた会場へ爽やかな風を届けたのは、タレント・井手上漠の人生をテーマに制作した、この日初披露の「私らしく、僕らしく」。「音をたくさん紡いでいきます」と前置きした通り、ギターのボディを叩き、その音をループさせながら様々な音色が重なっていく。井手上漠の暮らす島根県海士町の大自然を想起させる壮大なサウンドに弾むようなリズムが加わり、ティーン特有の瑞々しさが感じられる。序盤は緊張を口にしていたSNARE COVERだったが、すでに存分にライブを楽しんでいるようで、演奏中にステージから客席へ笑顔を向ける場面もあった。

 リラックスした雰囲気をまた一変させたのは、「戦火のシンガー」。戦争に関する曲をずっと歌ってきたというSNARE COVERは、「戦争が身近なものになりつつある今、この歌が必要とされたらいいな」と語り、静かにギターを弾き始める。〈もしもあなたの街に爆弾が落ちたら僕は何をするだろう〉 〈銃声を歓声に変えられる力が僕の歌声にあるだろうか〉と、一人の大人として、一人のアーティストとして、溢れる思いを歌にのせた。

 本編ラストに演奏したのは、美しいバラードソング「大人-Otona-」。誰かの明日をそっと応援するような優しい歌詞と穏やかな歌声が心地よい空間に溶けていき、観客たちの心に染みわたる。そしてアンコールでは、長年彼が祈りを込めて歌い続けてきた「聖なるみんな」を披露。どこまでも遠く響きわたるような歌声と癒しのメロディで、たっぷりと余韻を残したままステージを後にした。

 アンコールも含め全9曲、約1時間とは思えないほどの充実したライブを届けたSNARE COVER。彼の豊かな音楽は、東京の観客たちの心を突き刺し、揺さぶり、そして癒してくれたことだろう。

■ライブ情報
東京、大阪、札幌での公演が決定。
詳細は後日発表される。

■関連リンク
公式サイト https://snarecoverofficial.ryzm.jp/
公式Twitter https://twitter.com/snare_saitou
YouTubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCNss8G4vVksc_11HkO9WzeA

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