MACO、ライブという居場所で音楽を届ける喜び　ありのまま力強く歌い切った『Acoustic & Pop』ツアーファイナル

　3年ぶりのアルバム『We Promised.』を4月6日にリリースし、『MACO We Promised. Tour 2022 〜Acoustic & Pop〜』と題したツアーを行ったMACO。5月29日、そのファイナルとなる公演が東京・日経ホールで開催された。前半はゆったりとしたアコースティックな雰囲気で、後半はポップに弾けるという二部構成。MACOを多角的に、そして存分に味わえるプレゼンテーションだった。久しぶりのツアーということもあり、歓声を上げられないことに観客よりむしろ本人のほうが慣れない様子。でも、だからこそ余計にライブができているという事実が嬉しかったと見え、積もり積もった思いがあふれ出る場面も。それ以上でも以下でもなく、ただ歌うためにステージにいるという無垢な佇まいに、MACOの音楽への愛と敬意を感じることができた。

　蒼い光が浮かぶステージに、サポートメンバーに続いて静かに現れたMACO。花をあしらったふんわりとしたワンピース姿がとてもキュートだ。椅子にちょこんと腰かけて、ピアノとギターに誘われるようにほぼアカペラで歌い出したのは、ニューアルバムの1曲目「Promised.」。想像以上に力強い歌声だ。地声のみならずファルセットにも生命力が宿っている。耳を傾けるうちに自然とMACOが紡ぐ世界に引きこまれていった。

　アコースティックギターのボディカウントで「恋蛍」へ。まるで蛍が飛び交うようにオレンジの光がステージを彩る。ドラムの深いスネアの音を軸にしたアンサンブルが歌に寄り添い、MACOの体温をじんわりと届けてくれた。それに続いたのは、〈桃色の風に包まれ〉という歌詞が、まさにライトで再現された「運命」。優しくて、切ない、一途な一連の恋の歌で、観客の頬もほんのり色づいていたのではないだろうか。まず3曲を終え、MACOは少しホッとした様子で胸に手を当てた。

　第一声は「シンガーソングライターのMACOです。今日は集まってくれてありがとう！」という元気な挨拶、そして、「緊張したー！」という素の告白だった。観客が声を出せないライブは勝手が違うようで、少し戸惑い気味の様子。でも、「楽しむ準備はできてますか？」という呼びかけに盛大な拍手が返ってくると、「そうそうそう」と笑顔に。次に歌う「存在」を紹介しながら、「みんなだから、MACOだから、今日会えたと思う」と語ったMACOは、ハッと観客がうなずく気持ちを声にできないと気づき、「拍手〜！」「声の代わりに拍手で伝えよう」と先導役を買って出た。思わずあちこちからクスクス笑いが起こり、MACOの緊張もだいぶほぐれたようで、「ライブは自由。心の中で歌ってね。みんなの目を見て、音楽を通して気持ちを伝えていきたいです」と、「存在」「桜の木の下」を清々しい表情で響かせた。

　「イヤリング落ちちゃった。これもライブ」と言って拾ってつける間も、「拍手〜」とギャグ風におねだり。出会いと別れをテーマにした3年ぶり5枚目のアルバムを、「めっちゃいいアルバムじゃない？」とおどけた表情で問いかけつつ、まさにそのテーマとなっている「春一番」を軽快に披露した。「さぁいくぞ」と言うかのごとくドラムが響いて「恋人同士」が始まると、MACOも元気に客席を煽っていつしか総立ちに。ワイパーや「タン、タタン」の手拍子で一気にハッピーモード全開になると、その勢いを借りてサポートメンバー紹介。腕によりをかけたメンバーのソロ回しを楽しむMACOの姿に、観客の心のドアはさらに解き放たれていった。

　「ライブ楽しいね。水飲む！」と一息ついたあと、改めて「久々のライブでみんな戸惑ったりしてません？」と問いかけるMACO。「私も同じだよ」を内包したそんな言葉が、今は何より沁みる。そして「切ないんだけど軽快に、脳内の記憶を呼び覚ます曲を送ります」と「7月7日の今夜」を披露。ゆったりと跳ねるリズムに身を委ね、夜空を見上げるように歌うその姿につられて、観客も心地よさそうに揺れ始めた。ノスタルジックな鍵盤ハーモニカの音色で、みんなそれぞれの「あの頃」を思い出したのではないだろうか。

　追憶のイメージを引き継いだのは、ドラマチックな「アマオト」だった。〈ありのままを 愛して〉という歌詞が切々と心に届く。その〈愛して〉を、最後の最後あえてブランクにしたのは「心の中で歌って」のサインだったはず。そんなMACOの想いに応えた“無音の歌声”によって、この曲はさらに印象深いものとなった。一部はしっとりと「再恋愛」で締め括られる。