ノラ・ジョーンズ、20年を経て新鮮に響くデビューアルバム ジャズに縛られない、シンガーソングライターとしての姿
本当に年月が経つのは早い。ノラ・ジョーンズのデビューアルバム『ノラ・ジョーンズ』がリリース20周年を迎えたということで、本編の最新リマスターに加え完全未発表のデモ音源やレアトラックを収めた3枚組の『ノラ・ジョーンズ【スーパー・デラックス・エディション】』が発売された。
つい先日のことのような気もするが、彼女のデビューは鮮烈だった。名門ジャズレーベル<ブルーノート>が大推薦で送り出す、当時弱冠22歳の女性シンガー、しかも父親はThe Beatlesファンなら誰もが知っているインドのシタール奏者ラヴィ・シャンカールというのだから聴く前から大きな期待が膨らんだ。
アメリカでは2002年2月26日、日本でも同年4月11日に発売された『ノラ・ジョーンズ』は、たちまち全米チャート1位、グラミー賞では最優秀アルバムや最優秀新人賞をはじめ各賞を独占する大ヒットを記録。本作は日本でも同様に幅広い音楽ファンに聴かれた。
最初は<ブルーノート>からの新人なのでジャズシンガーと紹介され、大型CD店でもジャズコーナーに置かれたわけだが、実際に『ノラ・ジョーンズ』を聴いてみると、もっと自由な幅広い音楽性を持った人だというのがよくわかる。カントリーミュージックのレジェンド、ハンク・ウィリアムスや革新的な女性シンガー、ニーナ・シモン、そしてジャズのスタンダードとしても知られる「スターダスト」をはじめ多くの名曲で知られるホーギー・カーマイケルなどのナンバーが、自作曲やバックを務めたメンバーたちの作品と混ざり合い、風通しのよい空気感が漂うアルバムとなっていたのだ。
ニューヨークに生まれテキサスで育った彼女は、幼い頃から母親のレコードコレクションでビリー・ホリデイなど多くの音楽を聴くと同時にピアノも弾くようになり、10代の頃にはすでにジャズ音楽誌の賞を受賞するなど才能を発揮し始める。活動が本格化するのは大学生の頃に訪れ、居つくことになったニューヨークにてジェシー・ハリス(Gt)、リー・アレキサンダー(Ba)、ダン・リーザー(Dr)らとバンドを結成してから。バンド活動をしていたところで<ブルーノート>の目にとまりデビューする。
ロバータ・フラックなどを手掛けた名プロデューサー、アリフ・マーディンがプロデュースしたアルバム『ノラ・ジョーンズ』は前記のように大ヒット。ノラも一躍有名人となったのだが、今あらためてこのアルバム聴いても、当時耳にしたそのフレッシュで風通しのよい感覚に少しも変わりはない。
いや、それどころか“ジャズ”というカテゴリーや先入観が薄れた現在の方が、素直にその魅力にアクセスできる人が多いはずだ。それは何よりも自由度の高い選曲に表れていて、過去のレジェンド、名曲と自作曲などが等価で並び、さらにバックのメンバーもオーソドックスなジャズプレイヤーからビル・フリゼールのようなジャンルを超越するアーティストも加わり、新世代ならではの空間を作り上げるのに成功している。