櫻坂46、渡邉理佐卒業コンサートはグループのターニングポイントに　ライブの“見せ方”から感じた変化

　だからこそ、本編ラストナンバーに選ばれた「僕のジレンマ」からは胸を締め付けられるような切なさが伝わってきた。曲中、メンバー一人ひとりと絡んでいく振り付けや、クライマックスで渡邉に抱きつく1期生と、それを後ろから優しく見守る2期生の構図は感動的な光景だが、22日公演は渡邉本人のみならず多くのメンバーが瞳に涙を潤ませていたのだから、観ているこちらもこの曲の主人公の気持ちを疑似体験しているような感覚に陥ってしまう。欅坂46時代を含めても、彼女たちのライブでこんな感情になったのは初めての経験だった。

　アンコールでは渡邉のスピーチや、上村莉菜や齋藤冬優花、尾関梨香、小林由依といった盟友たちからのメッセージもあり、改めて絆の強さを実感させられる場面が多々あった。そんな大切な仲間たちと過ごした7年間の集大成として、渡邉はアンコールではユニット“青空とMARRY”での楽曲を、菅井と2人で歌唱。5人でスタートしたこのユニットも、気づけば2人だけになってしまい寂しさを覚えずにはいられないが、それでもユニットの持ち曲をすべて披露してくれたのは、欅坂46時代から応援するファンにはうれしいプレゼントだったことだろう。そして、グループの絆や仲の良さが伝わる「太陽は見上げる人を選ばない」「危なっかしい計画」でライブを終えるところにも、渡邉のグループ愛が見てとれる。特に、コロナ禍にグループに加わった新2期生は、欅坂46時代にこれらの楽曲をオーディエンスの前で披露することが叶わなかっただけに、この2曲は卒業を前にした渡邉が後輩たちに残したプレゼントでもあったのかもしれない。

　時と場合によってこんなセットリストを組むこともできるという心強さと、渡邉理佐という偉大な存在の卒業を機に迎えた後輩の急成長、そして欅坂46楽曲の解禁など、特筆すべきポイントが多かった『渡邉理佐 卒業コンサート』。序盤にも書いたように、この2日間の経験は櫻坂46の今後のライブに様々な影響を与えることだろう。もちろん、欅坂46楽曲に頼らなくても十分に戦えることは昨年のライブ活動を通して証明してきたし、個人的には毎回欅坂46の楽曲を入れる必要はないとも思っている。むしろそれ以上に、そろそろ櫻坂46としての1stアルバム制作が急務ではないだろうか。4枚目のシングル『五月雨よ』でグループとしての音楽的多様性がさらに広がったからこそ、その決定打としてアルバムにてさらなる幅広さを見せることで、グループの個性の確立にもつながるはずだ。2022年後半以降の課題として、ここに記しておく。

　櫻坂46という大切な存在から離れて独り立ちする渡邉が、ここからどんな女性に成長していくのかも今から楽しみだし、櫻坂46がこの先どんな進化を遂げるのかも楽しみでならない。キャプテンの菅井は「理佐が残してくれたものを大切にして、より高みを目指していきます」と力強く宣言したが、その眼差しはすでに“その先”を見つめているようにも感じられたのだから。

※1：https://realsound.jp/2021/12/post-923620.html 
※2：『日経エンタテインメント！』2022年6月号 P.115

■セットリスト
『櫻坂46 渡邉理佐 卒業コンサート』
2022年5月22日（日）国立代々木競技場第一体育館
プレイリスト：https://sakurazaka46.lnk.to/20220522
00. Overture
01. 無言の宇宙
02. Nobody's fault
03. 最終の地下鉄に乗って
04. それが愛なのね
05. 流れ弾
06. 二人セゾン
07. 僕たちの戦争
08. 青空が違う
09. 制服と太陽
10. 世界には愛しかない
11. ブルームーンキス
12. 偶然の答え
13. なぜ　恋をして来なかったんだろう？
14. 五月雨よ
15. 思ったよりも寂しくない
16. Buddies
17. 僕のジレンマ
＜アンコール＞
18. 青空とMARRYメドレー（割れたスマホ〜波打ち際を走らないか？〜ここにない足跡〜青空が違う）
19. 太陽は見上げる人を選ばない
20. 危なっかしい計画