櫻坂46 渡邉理佐、センター曲「無言の宇宙」で醸す絶妙な温度感 クールな表情の奥にある“心の温かさ”
櫻坂46の3rdシングル『流れ弾』が今月13日に発売される。本作は今までにも増して楽曲に力が入っているとの声が上がっているが、そのなかでも特に渡邉理佐のセンター曲「無言の宇宙」が名曲だと話題になっている。先駆けて公開された表題曲や「Dead end」の力強く攻撃的なテイストとは打って変わって、ゆったりとした穏やかな空気の漂うこの一曲。MVの監督を務めたSpikey Johnは、これまで日本のラップシーンの映像作品を数多く手掛け、最近ではシンガーソングライターの藤井風のMVを撮ったことで大きな注目を集めた新進気鋭の映像作家だ。
メンバーたちが思い詰めている様子から始まるこのMV。いつもなら賑わっているはずの夜の繁華街も静寂に包まれ、何か言いたそうに灯りだけがついている。いわゆる“冷たい都会”のような描写ではなく、しんと静まった、けれども今にも動き出しそうな気配のある夜の街並みといった印象だ。星空のように輝くピアノや繊細なギターのタッチは夏の夜の澄んだ空気を彷彿とさせ、聴いているだけでも気分が透き通っていく。とりわけ和風の衣装で踊るダンスシーンは、表情が自然体で柔らかく、袖を掴む振りなど、動きにもごく日本的な美しさを感じ取れる。口を動かさずに相手を見つめるようにして踊るシーンが多いのも相まって、メンバーたちの奥ゆかしい魅力が浮き立っている。
そして、そこに今作センターの渡邉の醸すクールなオーラが絶妙にフィットしているのだ。今まで代理センターという形でなら何度も同グループのセンターを務めてきた渡邉だが、オリジナルとしてのセンターは初。カップリング曲とはいえ、MVが制作される楽曲のセンターに抜擢されたことには、一期生として並々ならぬ思いがあるのではないかと想像する。しかし彼女は、「プレッシャーというよりは純粋に楽曲を楽しんで作っていけるような感覚でした。あまり気負いすぎずに制作できたんじゃないかなって思います」とインタビューでコメントしている(※1)。そうした力みのないフラットな意識がゆるやかなパフォーマンスにつながり、今作の温度感を決定付けたように思う。