みんなが聴いた平成ヒット曲 第1回:H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」
〈何とか自分で自分を守れ〉の歌詞が示したこと
小室は、書籍『カリスマの言葉シリーズ #011 時代をつかみとる思考』(2016年/セブン&アイ出版)のなかで「僕が書いたのは、『なんとか自分を守って生きている』『でもなにかを起こしたい』というような、みんなが普遍的に持っているリアルな気持ちだった。僕は“たかが音楽”でできることは、小さくても大変なことで頑張っている人たちを応援することだと考えていた」と語っている。
曲制作中の1月17日には阪神淡路大震災が発生し、家屋、そして高速道路まで倒れた。さらにリリース直後の3月20日には地下鉄サリン事件が起きた。日本における建造物や公共機関などの安全神話が崩壊した。〈何とか自分で自分を守れ〉、この一節は当時だからこそ強く訴えかけるものがあった。また、これからもっと大変な状況がやってくるかもしれないことを示唆しているようにも感じられた。
前述したように、小室には「どんな時代でも、誰の心境にも寄り添うような一曲にしよう」との意図があった。その言葉通り、同曲はリリースから27年が経過しながらも常に「現在性」を持って聴くことができる。事実、私たちはここまで自然災害、疫病、争いなど何度も厳しい状況に直面・目撃してきた。
小室がこの曲で伝えたかったのは〈自分で動き出さなきゃ何も起こらない夜に何かを叫んで自分を壊せ!〉ということ。ただ無理をして何かを叫ぶ必要はない。その叫びはなんだって良くて、気張る必要もない。曲のなかに出てくるように「温泉でも行く」「仲間と肩を並べて飲む」くらい、力の抜けた行動で良いのだ。「WOW WAR TONIGHT」は、たったそれだけでも日々の過ごし方が変わるかもしれないことを教えてくれている。
※1:オリコン週間シングルランキング 1995年6月4日付(発表は5月31日)