安斉かれん、パラレルワールドで表現した“3人のかれん” 斬新な演出で観客を驚かせた初ワンマンライブレポ

安斉かれん、初ワンマンライブレポート

 安斉かれんがデビュー日である5月1日、初のワンマンライブ『ちゃんと世界線』を開催した。本公演は、オンラインライブとして開催されたが、ライブ会場である神奈川・KT Zepp Yokohamaには事前抽選で選ばれたファンが来場。本ライブは、3つの世界線(パラレルワールド)に生きる“3人のかれん”が登場し、それぞれの世界が溶けあうように混ざりあっていく、というトリックが仕掛けられた斬新な演出で観客たちを楽しませた。

安斉かれん
安斉かれん

 黒地に細かいシルバーのドットが光るセットアップ、ブロンドのロングヘアにティンセルをつけた華やかなファッションで登場したかれん。ライブの開幕は、デビュー曲「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」だった。ナイーブな心の内を吐露しながらも前を向いて歩きだすこの曲を、バックバンドを従えて存分に歌い上げる。続く「FAKE NEWS REVOLUTION」はどこか気だるげな歌い出しから始まり、歌詞を通して社会への皮肉や不満をぶちまけていくにつれ歌声は力強さが増していき、サビでは感情を爆発させる。カメラを射抜くように向けられる真っすぐな眼差しや髪を振り乱しながら歌う姿から、早くも目が離せなくなる。疾走感溢れる「18の東京」ではライブならではの勢いと高揚感溢れるステージを届け、バラード曲「誰かの来世の夢でもいい」ではマイクスタンドの前に立ち、等身大の歌詞が描く切ない思いを伝えた。

 ここまでノンストップで繰り広げられたステージは、一旦MCでクールダウン。来場者と配信で見ているファンへ感謝の言葉を述べたあと、「見ての通りド緊張しているので、あたたかく見守ってくれればいいなと思います」と少しはにかんだ笑顔を見せた。“私の青春の曲”という紹介から始まったのは、「僕らは強くなれる。」。京都橘高校吹奏楽部とMVで共演したこの作品は、元吹奏楽部のかれんにとって思い出の一曲だという。自身が高校生の時に書いたという歌詞には、聴く者にそっと手を差し伸べるような優しさと希望を感じさせる言葉が詰まっており、〈破いたページの分だけ 僕らは強くなれる〉とあたたかい笑顔を見せながら歌っていた。

 m-floの名曲「come again」をリバイバルした「come again feat. CAELAN from INTERSECTION」では、黄色い部屋の中でヘッドフォンをつける“そちら側”のかれんの映像が差し込まれ、このライブの仕掛けが少しずつ明かされていく。自身で作詞・作曲・サウンドプロデュースに携わった「GAL-TRAP」はこれまでのかれんのイメージとは異なる、自然体かつしっとりとしたHIPHOPソング。高いヒールを履いて武装した身体を少し休めるように、黒いチェアに腰を掛けて歌う姿からは、彼女の繊細な素顔が垣間見えた気がした。浮遊感のある電子音とギターの音色から始まった「現実カメラ」(Charli XCXとの合作)では、今度は街の中を歩く“こちら側”のかれんの姿が映し出され、また別の世界線が顔をのぞかせる。

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